2013 Fiscal Year Research-status Report
心理的ウェルビーイングの向上は心理生物学的ストレス反応の軽減に寄与する
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24530902
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
矢島 潤平 別府大学, 文学部, 准教授 (30342421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷 真 別府大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50425203)
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Keywords | 心理的ウェルビーイング / 主観的幸福感 / 心理生物学的ストレス反応 / フィールド-実験研究 / コルチゾール / メンタルストレステスト / アロスタシス / 主観的ストレス反応 |
Research Abstract |
本研究では,心理的ウェルビーイングと心理社会的要因,健康状態,生理指標との関連性ならびに実験室場面での心理生物学的ストレス反応を検証し,そのメカニズムを解明することを目的としている。本年度は大学生を対象に,フィールド実験研究を行い以下の知見を得ることができた。 (目的)フィールド調査にて主観的幸福感の高い個人と低い個人を抽出し,実験室でのメンタルストレステストによる心理生物学的ストレス反応を比較検証する。 (方法)対象者:大学生318名(男111名,女207名,20.6±1.6歳)に主観的幸福感尺度を実施し,カットオフポイントである4.5点以上を高得点群,4.5点未満を低得点群に分類し,参加の同意が得られた各10 名を対象とした。手続き:実験室に入室後10分間の順応期,スピーチ課題と暗算課題を施行し,30分間の回復期にて実験を終了した。心理生物学的ストレス反応:実験中心拍数を連続測定し,課題前後と回復期15分後及び直後に唾液を採取しコルチゾールを評価した。同様に主観的ストレス反応(エネルギー覚醒と緊張覚醒)も測定した。 (結果)コルチゾールと緊張覚醒では,両群とも課題期で有意に上昇し,回復期で順応期の水準まで戻る動態を示したが,低得点群に比べ高得点群は課題期と回復期で有意に低かった。心拍数も同様の動態を示したが,実験中常に高得点群が有意に低かった。エネルギー覚醒でも同様の動態を示し,低得点群に比べ高得点群は,順応期と回復期で有意に高かった。 (考察)主観的幸福感の低い個人に比べ高い個人は,急性ストレスに対する適応反応,すなわちアロスタシス反応を有していることを明らかにした。これらの反応は主観的ストレス反応とも連動しており,主観的幸福感は急性ストレス反応を軽減する要因の一つであることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に基づいて,フィールド-実験研究を実施した。主観的幸福感による心理生物学的ストレス反応の差異を明らかにすることができた。一部バイオマーカーの測定(唾液free-MHPG)が全て終わっていない所は,あるものの順調に進んでいる。研究成果の一部は日本ストレス学会やthe Fifth International AAICP Conferenceにて発表を行っている。 平成26年度以降も,本年度の研究成果を踏まえて実施予定である。なお,介入研究のパイロットスタディも本年度実施できたこともあり,当初の計画通り実施可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に従って,平成26年度以降は,心理的ウェルビーイングの向上を目的とした介入実践による効果検証を行う。 対象者のリクルーティングなど,少し困難が予想されるが,心理的ウェルビーイングを向上することによるメリット等についての心理教育を受けもらうことにより,参加することの意義を強調するよう工夫する。介入期間での、1日のふりかえりを基に設定されたセルフモニタリング学習についても携帯メールを利用して毎日実行するよう促すなどの細かい工夫を行う。また,セルフモニタリング状況についてフィードバックを行うとともに種々のアドバイスを受けることで心理的ウェルビーイングを向上させる。 評価として,同様の質問紙調査ならびにバイオマーカーの測定を介入前後及び介入終了後3ヶ月後(フォローアップ時)に実施する。この点は平成24,25年度の研究成果を反映させる。 本研究における懸念はドロップアウトである。前述したとおり,参加者へのメリットや心理的ウェルビーイングに関する情報提供を行うことで,ドロップアウト率を減らす対策を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究を実施したところ,少額余った。次年度以降に介入研究を実施するに当たり,参加者への謝金が必要なため,平成25年度での残高を充当することとした。 全額謝金・人件費に組み込み,参加者への謝金として使用する。
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