2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530916
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
遠藤 光男 琉球大学, 法文学部, 教授 (90185166)
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Keywords | ヒト検出 / 顔検出 / 顔認識 / 人物情報 |
Research Abstract |
本研究は,これまであまり研究の進展が認められなかったヒト検出過程の特性について明確にすることを目的とするものである。今回は特に,ヒト検出の重要な手がかりは何か,我々はヒトをどの程度離れた距離から検出することができるのかといった点や,ヒト検出の手がかりとして顔と身体の相対的重要性,顔の既知性や表情,魅力などがヒト検出に影響を及ぼすのかといった点について検討を試みる。初年度の2013年は,ヒト検出に関わる要因を探索的に研究するために,実験参加者に様々な自然なシーンの中からヒトを検出することを課し,その反応を計測した。そして,ヒトが近距離にいる時には顔が重要な手がかりとなるが,中遠距離の場合には身体など他の手がかりの重要性が増すことや,ヒト検出には顔以外の多様な手がかり,例えば,肌の色,髪の毛,服の形や色,体の輪郭の滑らかさ,文脈などが用いられていることが示唆された。 当該年度(2014)は,特に顔検出に利用される空間周波数成分を明らかにするために,顔を含む,または,含まない自然なシーンの刺激写真についてローパスフィルターをかけて著しくぼかした刺激から徐々に高周波成分を含む刺激を提示し,それらにヒトが含まれるかどうかの判断を実験参加者に課した。提示される刺激写真の条件には,顔の向きと明るさ(正面,横,後ろ,シルエット横,シルエット正面)と,カラー情報の有無があった。実験の結果,どの条件でも顔の検出閾は6c/fh(顔の長さを基準とした空間周波数)よりも低い空間周波数にあり,顔認識に重要とされる空間周波数成分(8-11c/fh)よりも顔検出にはより低い空間周波数成分が重要であることが,明らかとなった。さらに,ヒト検出閾が白黒よりもカラーの方が低いことや,明るい照明条件での正面顔の優位性が示され,ヒト検出の手がかりとして色情報や顔情報が重要なことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究計画は,ヒト検出に対する観察距離の効果を検討することであった。その際,Loftus & Harley(2005)の「距離=フィルタリング」仮説(distance-as-filtering hypothesis)に基づいて画像の大きさは一定に保ちながら画像内の空間周波数成分のうち一定の高周波成分をカットすることで遠距離から観察した状態と同等の刺激を作成し,ヒト検出の観察距離の閾値やヒト検出の手がかりとしての顔と身体の相対的重要性を検討する計画であった。しかしながら,刺激収集と画像処理の段階で,入手した自然なシーンの刺激写真では,「距離=フィルタリング」仮説に忠実に従った画像処理や顔と身体の相対的重要性を探るための十分な画素数を得ることが困難なことが判明した。そのため,研究計画の変更を余儀なくされ,ローパスフィルターによる画像処理によって,主に頭部を手がかりとしてヒトを検出する際に特に重要な空間周波数成分を特定することと,顔手がかりのヒト検出に対する重要性を検討することにした。 変更された計画に沿って行った実験においては,研究実績の概要欄に記述したように期待した研究成果が得られた。しかしながら,ヒト検出の閾値測定手続きに少々の不備があり,実験参加者によっては,明確に閾値を特定できない問題が生じた。この点については,来年度実験手続をリファインした上で,確固としたデータを得るために,再度検討する必要がある。 以上,研究計画を変更し,計画当初の目的の一部が達成できなかったことと,得られた研究結果の再検討が必要なため,達成状況をやや遅れていると判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,当初設定した研究計画に沿って,研究を進めていくが,まず,前述のように今年度行った実験の手続きをリファインした上で,ヒト検出に関与する空間周波数成分を確定させる。その上で,本研究の最終年度として,ヒト検出に及ぼす既知性の効果の有無(知っている人のほうが知らない人より人検出が早いのか),魅力の効果の有無(魅力的な人のほうが人検出が早いのか)等や,ヒト検出の際に,同時にどの程度既知性などの人物情報が読み取れるのかなどの検討を行う。 同時に,成果発表として,海外を含む学会発表と雑誌論文の執筆を行いながら,研究成果のまとめを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は,上述のように当初の研究計画の再検討を余儀なくされたために,成果発表の論文執筆が出来ず,英語論文校正費の予算(40,000円)が支出できなかったことと,消耗品予算の支出が抑えられたためである。 翌年度分の助成金については,記憶媒体や刺激収集費等の物品費(20,000円),成果発表旅費(海外1回,国内1回:480,000円),英語論文校正費(60,000円)の使用を予定している。
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