2013 Fiscal Year Research-status Report
<感覚>作用、特に<音>に注目した環境教育と文学教育の横断的研究とその実践
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24530980
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
大國 眞希 福岡女学院大学, 人文学部, 教授 (00418980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 望 (小島 望) 川口短期大学, その他部局等, 准教授 (10435240)
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Keywords | 文学における音 / 環境教育 / 文学教育 |
Research Abstract |
読書における<音>の機構については、毎月物語研究会を開催することを継続し、共同討議をおこなった。大國は文学における自然と芸術を<音>を基軸に、太宰治や山川方夫などいくつかの作品を対象として発表した。安藤は震災後に文学に響く<音>を芥川龍之介などのいくつかの作品を対象として検討し、遠藤祐氏に武者小路実篤などを作品分析していただき、当時の<音>の機構について研究を深めた。これらについては個々に論文化し、発表も行っているが、大國、安藤、小島、遠藤の四人で共同執筆も行い、「架橋としての桃源境思想ー関東大震災から現代―」として発表した。 震災と文学、およびそこに見出せる感性としては、昨年度、基礎的な作業をおこない、震災直後の雑誌の特徴をまとめたが、今年度はそれらに基づいて、そこから響く/響かない<音>について論ずべき作品群を収集した。 教材研究については、サウンドマップを読書行為に展開できる方法を考え、読書においてサウンドマップをつくるという試みを行い始めている。大國は文学教材に現れる音に注目し、それをどのように教室で展開するかを見据えながら、「自己反省としての風景と音」を発表、また、黒坂みちる氏に協力を願い、教科書における教化目標やその実践の変遷を見るための資料も網羅的に収集し、そのひとつの成果として「感性と文学」をまとめ、教育に関する論文も発表した。 環境教育については、10月に日光に於いて文学踏査の一環として、サウンドマップを実際に行ってもらうフィールドワークを開催した。その実践をふまえて、サウンドマップを利用した教育の新しい方法を提示していく準備が整った。その点について小島は「サウンドマップを用いた環境教育と文学教育の横断的研究」を口頭発表した。 これらの研究内容を知らせるためにウェブサイトも開設した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最大の目的は、文学教育と環境教育の交差を<音>を中心にして考察し、それらを横断する新しい教育活動の方法を考え、実践し、有効性をはかることにある。今年度の最大の成果は、なんといっても、サウンドマップを読書に於いて応用する方法を見出した点にある。地理学や音楽教育などに携わる方が、本研究に関心を抱いてくださったこともあり、研究は広がり、そのため内容も深まっていっている。国語科教育の面では、前述の地理学の研究者、音楽教育の研究者、高校の国語の教員、また震災に関する領域では、震災直後の詩の研究者などと組んで、研究会を行い、冊子を発行する計画も立てている。多くのかたが関心をもってくださったことにより、計画以上に進展していると言える。 本年度の研究計画として挙げていた、「大國①具体的なテキストがもたらす感覚を個別的な作品に即して究明するために、選定抽出した各作品の分析を行う。②個々の作品分析については研究会で報告、討議、検討を重ね、論文化するなどの発表に努める。③作品分析を参考にしながら、感覚受容、音楽理論に関する文献を精査し、文学における感覚に関する理論の考察を深める。」に関しては、計画以上の進展をみたと言えるだろう。 但し、小島が担当する実地調査に関しては、「①現地の生物学者や地元ボランティアスタッフの協力を得ながら、サウンドマップを用いた環境実習を現地で実施する。②地域住民によって作成されたサウンドマップと古老への聞き取りによる内容から検出された<音>の機構を探る。③ある環境での<音>を感受する機構と自然環境の変化による影響との関わりについての分析」は、計画以上の進展とは言えないかもしれないが、小島と大國の共同執筆でそれについては論文化の準備はあるので、総合的に判断して、計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はいよいよ完成年度である。研究目的にあげた「文学作品を読む際に文学言説が引き起こす<感覚>作用の機構を明らかにし、従来の研究では為し得なかった読書側の<感覚>をクローズアップすることで、読むことの内実を明らかにする。震災後の小説を分析して、災害など環境が激変する体験がもたらす文学的言説の変化とそれに感応する<感覚>の変容の様を考察する。また「音」を使った野外調査を行い、これらを比較することで、「音」とヒトが感受する方法と読書行為との類似点を明らかにする。そのうえで、環境教育と文学教育とを横断する、新たな教育活動の方法を示すこと」を達成させていきたい。 感覚作用、読書行為、国語教育の方面については、大國が2年間の研究を更に推進すると同時に、音楽からのアプローチとして絵本などとの関わりから教育方法について検討している安氏洋子氏(福岡女学院大学)、漢文から<音>に注目した研究をなさり、現在、高校で教員をする阿部正昭氏(北九州公立高校)、また震災との関わりでは、表現にし得ないもの、表現にしえない音の注目からアバンギャルド詩を論じている野本聡氏(法政大学中学高等学校)とともに研究集会を開き、冊子を刊行する計画を立てている。 また、昨年度の研究において見出された、読書行為における作品のサウンドマップ作成を実践し、その有効性についてもはかっていく。 また、実際の環境におけるサウンドマップの実施とその調査も行い、これらの研究結果と重ねたうえで、新たな教育活動の方法を示すことを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、小島望が現地調査に行かずに、サウンドマップを利用するための方法模索に費やしたため、当該年度実支出額が0円であった。そのため、大きく差額が生じてしまった。来年度は、当該年度に予定していた実施調査を行う予定である。 サウンドマップの現地調査を受けたのちに、環境教育と文学教育の交差点に関する研究会を開催し、冊子を発行する予定であったが、実地調査を実施しないままでは進展できない部分もあり、その使用額が繰り越されている。 大國が関東圏から九州へと異動があった。当初は関東圏での研究会を実施する予定であったが、九州圏の研究者、関東圏の研究者を交えて、九州で開催し、それをもとに冊子を刊行する予定である。小島が計画通りに、実地調査を行うほか、関東から九州への研究協力者の交通費などにも充てる予定である。
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[Presentation] 右大臣実朝2013
Author(s)
大國眞希
Organizer
太宰治スタティーズ
Place of Presentation
大東文化会館(東京都板橋区)
Year and Date
20131221-20131221
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[Presentation] <鳥の聲>と銀貨2013
Author(s)
大國眞希
Organizer
Session The pure DAZAI
Place of Presentation
北海道大学(北海道札幌市)
Year and Date
20131130-20131130
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