2013 Fiscal Year Research-status Report
高等教育における職業実践的プロジェクトの効果を高める問題解決型学習モデルの構築
Project/Area Number |
24530981
|
Research Institution | Seisen Jogakuin College |
Principal Investigator |
長田 尚子 清泉女学院短期大学, 国際コミュニケーション科, 准教授 (90552711)
|
Keywords | 職業教育 / 職業実践 / キャリア教育 / プロジェクト学習 / 授業デザイン / 質的分析 / 事務職 / 女性とキャリア |
Research Abstract |
本研究が対象とする授業実践では、専門科目の中に、その科目と関係のある職業的文脈を想定した活動を構成することにより、科目自体の学習成果を高めることを目指している。今年度はプロジェクト型で実施している授業に加え、講義形式の科目において職業的文脈を想定した展開を検討してきた科目についても分析対象に加えて、以下のとおり進めた。 研究代表者が5年間継続しているプロジェクト型のゼミの授業では、情報デザインの基礎に基づく広報紙制作活動という活動形式を再度明確にした上で、デザイン研究を継続してデータを収集した。この授業については今年度で5年間のデータ収集が完了したことになり、総合的な分析方法の検討にはいった。分析方法を検討した結果は日本認知科学会の全国大会において発表した。認知科学で行われてきた転移研究を実践のフィールドで応用することを念頭に、授業デザインとその評価方法を提示することができた。授業に参加した学生を含め、所属する学科の卒業生に対して継続してきたインタビューについては、質的な分析と授業改善を総合的に考察する活動を進め、EARLI2013およびWALS2013での発表の機会を得て、ポスター発表と口頭発表を行った。当該分野における専門家からのコメントを得た。また、京都大学の高等教育研究フォーラムにて、全体的な考察をまとめ、授業実践の成果を考えるために卒業生へのインタビューをどう位置付けるべきかについての方向を示した。職業教育、キャリア教育の観点で行っている研究代表者の授業を中心に対象とする実践を増やし事例としてまとめることを試み、関連の査読付き論文誌への採録を2件得た。いずれの内容においても、地域の課題に密着した授業デザイン、文脈設定、課題設定の重要性や協調的な学習方法の有用性を示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
継続的な実践については、学生によるリフレクションやレポートをデータとして蓄積している。また、それらのデータの分析を始め、学会で経過を発表できた。高等教育の授業における職業教育という観点で、本研究の位置づけや特徴を考えながら、以下の三点について十分検討し、慎重に進めるよう配慮している。第一は、本研究の発表先の学会についてである。職業実践的プロジェクトおよびそれに関連する内容を展開する授業を対象としているが、日本ではこの分野の授業デザインに関する研究が少なく、本研究ではサービスラーニングの実践的研究から多くの知見を得てきた。昨年度の計画段階において、研究経過および成果の発表先学会を、職業教育をテーマにした研究が多い学会や研究会に方向づけた。このような経緯から、EARLIおよびWALSで発表を行ったが、職業教育について有益なコメントを得ることができた。第二はインタビューやレポートといった質的データの収集と分析についてである。当初予定していた卒業生へのインタビューについては、研究期間の中では業務に充分習熟した段階の卒業生にインタビューすることは難しいことが想定され、在学中のインタビューも追加して実施し、分析を進められるようにした。第三は、対象とする授業である。今年度から、職業実践的な授業としての実践の分析の幅を広げるために、対象とする授業を増やすことを試み、より広く問題発見解決型の授業実践を検討対象にすることとした。このことから、研究代表者が実施している他の授業等も幅広く対象となり、職業実践的な授業全般の検討も可能となり、提示する知見の検討も深められた。社会の動きとしても、サービス経済が浸透してきている近年、サービスラーニングのみを中心に考えるのではなく、広い意味でのサービスビジネス、サービス業務等を対象とした授業を研究対象とする方向に微調整できたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究の終了年度となっている。今までに行った学会発表や研究発表の内容をもとに、論文をまとめて形にしていくことを活動の中心としたい。その中心として昨年認知科学会に発表した内容の発展である。本研究が対象としているプロジェクト学習に参加したのちに、学生がその内容をどのように次の課題に活かしていけるのかについて、認知科学における転移研究の発展と応用的な視点から検討を進めている。インタビューについてはここまで部分ごとに進めてきた質的な分析を総合的にまとめることを予定している。質的研究として充分なバリエーションのある豊富なデータを収集し分析していくことには、それ相応の時間的負荷がかかる。当初から予定していたグラウンディッドセオリーアプローチ、昨年からとり入れたPhenomenographyを中心に、近年さかんになっている質的分析手法に関する考察も含めて、最終的な分析方法と分析データを固めていきたい。また、その活動の中で分析の客観性を保つために適切に分析ツールを用いて、データをまとめていく予定である。研究成果の発表については、日本でも近年注目をあびている産学連携教育の国際学会での報告を予定している。ポスター発表で採択済みであり、関連の研究者との意見交換と職業教育に関する研究動向の調査をあわせておこなう。もともとこの分野はインターンシップの推進等が中心であったら、インターンシップや職業そのものについて見直しがかかり、より広い意味での産学連携教育という概念が浸透していきている。今後はこの産学連携教育の分野も視野に入れ、国内の関連学会への論文投稿を予定したい。なお、研究全体のまとめとしては、冊子あるいはウェブ等での報告を検討している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果発表用として、WEBを中心とした成果発表を予定していたが、本研究で検討してきた授業実践の内容と授業方法をまとめ、同様の実践を志向する研究者や教育者に再利用してもらえるような教育者向けの冊子をまとめたほうが有効だと考え、WEB用に予定していた予算を次年度の印刷費用としてとりまとめることとした。そのため、次年度当初に成果報告のまとめ方を印刷業者も含めて再検討しする。WEBについては、無料の外部サーバーを利用する方法なども考え、実施内容の発信ができる環境を整えたい。 研究を進めていく上で必要に応じ研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画の全体に変更はなく、前年度の研究費を含め、当初予定通りの計画を進めていく。発表先学会の選定に困難を伴い、当初予定していた国内学会、国際学会とは異なるところに発表することとなったが、研究の内容に沿った発表先を見つけることができ、その発展として次年度は産学連携教育の国際学会のシンポジウムにおいても発表を行う。旅費については当初予定の範囲で、研究をまとめるための発表を行っていく。謝金については、データ整理のアルバイトを中心に計画している。研究成果をとりまとめる年度となり、予定している会議費、印刷費を活用して、成果のまとめと発信を行う準備をすすめる。
|
Research Products
(7 results)