2012 Fiscal Year Research-status Report
高大教育接続に関する日米比較研究‐理数教育と技術者教育の教育課程の接続パターン‐
Project/Area Number |
24530983
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
深堀 聡子 国立教育政策研究所, 高等教育研究部, 総括研究官 (40361638)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 米国 / 高大教育接続 / 理数教育 / STEM / 技術者(工学)教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高校の理数教育と大学の技術者教育(工学教育)の接続に注目することをとおして、若者の高校から大学への移行を促す教育接続のあり方、教育課程の接続パターンを明らかにすることである。この目的にむけて、平成24年度には、高大教育接続において豊富な経験が蓄積されてきた米国における取り組みを整理し、いくつかの代表的なプログラムの訪問調査を行うことを計画していた。 平成24年度の研究実績として、次の4点を挙げることができる。 第一に、高大教育接続の類型について、文献調査を行った。 第二に、平成22(2010)年に米国45州で採択されたコモン・コア州スタンダード(K-12学年・初等中等教育全般にわたる共通カリキュラム)(英語リテラシーと数学)および平成24(2012)年に発表された「科学教育の枠組み」の中身の検討を行った。とくに、そこで展開されている「大学および職場へのレディネス」の概念が具体的に何を意味するのか整理することを試みた。コモン・コア州スタンダードに即した教育評価のための標準学力テストは開発されたばかりであり、ニューヨーク州をはじめとする各州において、平成25(2013)年度より初等中等教育の早期段階で試験的に実施、平成27(2015)年度より高校卒業段階で導入される予定である。米国でも大学や職業社会との接続を視野に入れたカリキュラム改革が進行中であり、この動向を踏まえて、高大教育接続のあり方をとらえる必要があることが明らかになった。 第三に、中核的な概念やパターンの理解、分析力・応用力・問題解決力に重点をおく「21世紀型の学力」を形成するカリキュラムを構築するための概念枠組「教育目標の分類学」や、新しい学力を評価するための「パフォーマンス評価」についても検討を深めた。 第四に、2013年5月に実施する現地調査の準備に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の文献・ホームページ情報の調査をとおして、米国における高大教育接続について、基礎的な理解を形成することができた。研究計画のなかで採用した「A.才能教育」「B.人材養成」「C.社会的公正」の枠組は妥当であるが、とくに近年では、B.C.を推進するアプローチとして、デュアル・エンロールメント・プログラムが注目されており、多くの州で採用されていることが明らかになった。 「大学および職場へのレディネス」をめざす初等中等教育段階のカリキュラム改革、「21世紀型の学力」形成をめざすカリキュラム構築のための枠組や教育評価の方法についても、その概要を把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.現地調査(米国) 平成25年5月に現地調査を実施する。すなわち「B.人材養成」「C.社会的公正」型の取り組みとして、ニューヨーク州およびマサチューセッツ州におけるデュアル・エンロールメント事業に注目する。また平成25年7月には、「A.才能教育」の取り組みに注目し、夏季プログラムの調査を試みるともに、専門家への聞き取り調査を検討する。 2.現地調査(日本) 平成26年度には、米国調査にもとづいて構築した高大教育接続の類型にもとづいて日本で取り組まれている実践を整理する。その際、量的研究(質問紙調査)・質的研究(事例調査)のいずれが適切であるかは、平成25年度中に判断する。 3.客観的データの整理 高大教育接続の背景を理解するマクロ情報として、大学進学率、進級率、編入率、卒業率、高大教育接続プログラムへの参加者の比率などの客観的情報の整理を行う。日本のデータとの比較を行うとともに、日米の動向をより客観的にとらえるために、第3国の統計データも加味する。第3国としては、「C.社会的公正」が教育政策のうえでとくに重視されており、データへのアクセスが可能なカナダ・オーストラリアを候補とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には2回(各10日程度)の米国における現地調査を予定している。それぞれ、50万円程度の海外旅費が必要である。国内旅費としては、高等教育学会、大学教育学会での学会発表・情報収集のために、それぞれ5~10万円程度の国内旅費が必要である。 文献調査を実施するための物品(書籍)費として50万円、情報端末機器を購入するための物品費として20万円、データの整理・分析を行うための研究補助者の謝金として35万円(8時間/日×30日間)程度を計上する。 印刷費・その他として、38万円を支出する。
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