2013 Fiscal Year Research-status Report
大学及び学協会における産学連携に伴う組織としての利益相反に関する調査研究
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24530989
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新谷 由紀子 筑波大学, 産学リエゾン共同研究センター, 准教授 (40333281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊本 虔 筑波大学, 名誉教授 (50284229)
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Keywords | 米国の利益相反 / 組織としての利益相反 / 産学連携 / 研究倫理 / 大学 |
Research Abstract |
日本においてその実施が著しく立ち遅れている産学連携に伴う組織としての利益相反マネジメントを含め、特に、学術の世界における状況を把握するために、日本の主要な大学及び学協会を対象として利益相反マネジメントに関する実態調査を行い報告書にまとめた。この結果、特に大学においては、組織としての利益相反について十分に認識して利益相反マネジメントを実施しているところは、極めて少ない状況であることが判明した。このため、引き続き、欧米先進諸国の大学や学協会における組織としての利益相反マネジメントを含む利益相反マネジメント状況の把握を行うためのアンケート調査を実施し、併せてインターネット調査も実施した。特に産学連携が進んでいる米国の大学では、産学連携における利益相反への取り組みも先行しており、個人としての利益相反に関しても法令や各大学の規則等に関して何度も見直しが行われてきている。これらの実態を把握することは、今後の日本の組織としての利益相反マネジメントを含む利益相反マネジメントを実施していく上で有効な情報となり得る。 米国のトップクラスの大学では、PHS(米公衆衛生局)規則を中心に、大学の協会や政府等が作成している各種ガイドラインを参考にしながら利益相反ポリシーを制定している。組織としての利益相反に関しては、米国で医学分野の研究における利益相反問題に関する世論が厳しくなりつつあることが背景となって、ヒトを対象とした研究における組織としての利益相反について極めて詳細に定めている大学もある。一方で、ヒトを対象とした研究に限らない一般的な組織としての利益相反に取り組む大学も見られ、対応としては、大学自体の利益相反については、投資決定をする財務部(または外部マネージャー)と研究関係の意思決定をする幹部職員とのコミュニケーションを禁止する(=ファイアウォール)という対策などがみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施した調査研究の結果は平成25年4月には報告書(189頁)にまとめ、関係各所に配付するとともに、インターネット上で公開した。また、この研究成果の内容は読売新聞(平成25年5月20日)で詳しく取り上げられた。これらにより、関係各機関からの問い合わせを受けるなど、高い関心を集めることができた。さらに、平成25年6月20日には学会発表も行い、同年10月には学術誌に論文が掲載された。 現在は欧米における調査に取り組んでおり、3年間の研究期間で100頁を超える報告書が2冊刊行できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度の後半から取り組んでいる欧米先進諸国の大学や学協会における利益相反マネジメントに関する調査を引き続き実施する。大学における利益相反マネジメントは特に米国において、連邦法のレベル、州法のレベル、大学協会等の自主ガイドラインのレベル、各大学のレベルなど重層的な規定が存在し、複雑化している。これを数ページのアンケート調査票で把握することは困難であった。このため、インターネット調査を中心とした情報の取得に努め、詳細を明らかにしたいと考えている。 また、国内のインタビュー調査を実施することにより、現場での利益相反マネジメントの実情把握と利益相反の理念の普及を図る。
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Research Products
(5 results)