2014 Fiscal Year Research-status Report
日本の教育ADRの構築に向けたADR先行領域の研究─社会保障・医療分野を中心に
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24531001
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
松原 信継 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30593545)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教育ADR / 福祉ADR / 医療ADR / 紛争解決センター / 行政苦情処理制度 / 児童・生徒オンブズマン / 福祉オンブズマン / ADR促進法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.社会福祉分野と医療分野において、これまでヒアリングを行ってきた国内の諸機関、具体的には、①愛知県運営適正化委員会〔福祉〕、②名古屋市社会福祉協議会・福祉サービス苦情相談センター〔福祉〕、③あいち福祉オンブズマン〔福祉〕、④愛知県医療安全支援センター〔医療〕、⑤愛知県医師会苦情相談センター〔医療〕、⑥愛知県弁護士会・紛争解決センター〔医療〕の聴き取り内容と入手資料を整理することによって、福祉と医療の双方に共通する紛争解決のポイントを把握することができた。さらに、行政的なアプローチと民間によるアプローチの違い、各利点、相談的なアプローチとADR的なアプローチ、仲裁的なアプローチの違い、各利点も明確になった。これらは、教育に関わる紛争解決にも十分に応用が効くものである。 2.2回目の海外調査として、北欧2ヶ国(スウェーデン・フィンランド)を訪れ、現地の諸機関から聴き取りを行うことができた。具体的には、①国家学校監察団および児童・生徒オンブズマン、②ソレンツーナ市教育局/児童・生徒管理官、③公立小中学校(3校)の学校長からのヒアリングであった。これによって、米国のADRと北欧のオンブズマン(ombudet)の制度的・機能的違い、各利点、および、紛争(苦情)解決プロセスにおける国家・コミューン(自治体)・事業所の各権限と権限関係を把握することができた。とりわけ、ADRとオンブズマン制度の比較研究は、これまでわが国でも十分になされておらず、大きな成果であったと考える。また、北欧では、紛争解決が徹頭徹尾、「法と権利」を基盤に据えて行われているという事実も、米国のADRとの比較において貴重な研究材料を提供するものであった。なお、本調査の一部は、社会的関心の強い「いじめ」問題を通して新聞に取り上げられ、研究の一端を社会に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究協力者の都合により、第2回目の海外調査(北欧調査)の実施が時期的に大幅に遅れ、その影響で、第1回目の海外調査(米国のADRの調査)と第2回目調査(北欧のオンブズマン制度の調査)の比較分析、および、国内調査の結果との比較研究が26年度内では十分に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.2回の海外調査(米国のADRの調査と北欧のオンブズマン制度の調査)の比較分析を行い、紛争解決に関わる二つのシステムの特徴と長短を明確にする。 2.上記の分析結果と国内の調査結果との比較研究を行う。それを通して、わが国の紛争(苦情)解決システムの課題を明らかにする。 3.米国・カリフォルニア州におけるADR(メディエーション)の調査、および、北欧、特にスウェーデンにおける国家学校監察団(Statens skolinspektion)、児童・生徒オンブズマン(Barn-och elevombudet)の調査から得られた紛争(苦情)解決制度に関わる新たな知見を学会・研究会で発表する。 4.ADRおよびオンブズマン制度に関する文献研究をさらに進め、上記ヒアリング調査と対比・照合していく。 5.これまでの研究成果を「研究報告書(最終)」にまとめ、刊行する。
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Causes of Carryover |
研究協力者の都合により、第2回目の海外調査(北欧調査)の実施が時期的に大幅に遅れ、その影響で、第1回目の海外調査(米国調査)と第2回目調査の比較分析、および、国内調査の結果との比較研究が平成26年度内では十分に行えないことがわかった。それに伴って、上記の研究課題の考察とそのまとめに関わる経費が現段階で未使用となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①2回の海外調査の比較分析に関連する費用、②海外調査の分析結果を受け、国内調査との比較研究を行うための関連費用(国内調査の追加、学会・研究会等での発表費用を含む)、③「研究報告書(最終)」の刊行経費、等。
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Research Products
(3 results)