2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本の教育ADRの構築に向けたADR先行領域の研究─社会保障・医療分野を中心に
Project/Area Number |
24531001
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
松原 信継 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30593545)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 裁判外紛争解決方法 / 教育ADR / 医療ADR / 福祉ADR / 学校・教育紛争 / 児童・生徒オンブズマン / 信頼に基づく紛争解決 / 行政苦情処理制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、学校経営への親や住民の参加が制度化される一方で、学校・教師と親・市民の間のトラブルも激増している。本研究の究極的な目的は、教育当事者間の対立や紛争を、子どもの「最善の利益」を中心に敵対的ではない方法によって解決する道─“信頼に基づく紛争解決”のあり方─を具体的に提示することにあった。そのために、この点において日本で先行する医療分野および社会保障(社会福祉)分野の紛争解決の在り方、特に裁判外紛争解決方法(ADR)を対象にその実態の調査・分析を行なった。合わせて、海外における教育紛争システムの比較調査も研究の重要な柱の一つに据えた。 最終年度は、国の内外で行ったヒアリング調査および入手資料の整理・分析と、その教育領域への適用可能性の吟味に力を尽くした。その結果、医療分野、福祉分野の貴重な実践、知見とともに、両分野の課題も浮き彫りになり、“後進”の教育領域にとっては多大な収穫を得ることができた。その成果に関しては、『研究報告書』(全356頁)中の「教育への提言─医療紛争解決システムから学ぶ」および「教育への提言─福祉紛争解決システムから学ぶ」に結実している。 海外調査については、特に最終年度において、アメリカCA州の教育ARRシステム─「合意型モデル」─と、スウェーデンの児童・生徒オンブズマン制度─「査察型モデル」─との比較検討を行い、わが国に最も適した教育紛争解決制度の方向性を示唆することができた。これについては、『報告書』のうち3分の1程度の頁数を使って詳述してある。 本研究のように、紛争解決システムに関わって、教育とそれ以外の領域の比較考察を行ったものはこれまで稀であったが、こうした領域横断的な研究を通して、医療、福祉、教育等のヒューマン・サービス分野で働く専門職の意味と役割が再評価できたことは、紛争解決制度の探究に加えて、本研究の重要な成果の一つとなった。
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Research Products
(3 results)