2012 Fiscal Year Research-status Report
幼保一体化に向けた協働的・統合的保育モデルの検討:海外事例の分析と日本への示唆
Project/Area Number |
24531029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University of Arts |
Principal Investigator |
星 三和子 名古屋芸術大学, 人間発達学部, 教授 (30231004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 美穂 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (40554639)
上垣内 伸子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (90185984)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イタリア / 幼保一体化 / 統合的保育 / 事例研究 |
Research Abstract |
1.本研究の目的は、日本が幼保一体化の保育を進めていく上で、既に0歳から6歳までの教育とケアの統合的な保育を自治体として実践している海外の事例を検討し、日本の保育に生かす方策を検討することである。 2.そのため、本年度は以下の研究を行った。(1)文献研究:国として統合的な保育を行っている北欧諸国に関する文献研究。イタリア、ピストイア市の保育と子育て支援制度についての文献研究。(2)データの収集:ピストイア市の実地調査を行った。調査の内容は、①市の保育制度と実際の保育および子育ち・子育て支援についての聞き取り調査②保育園と幼児学校の協働による統合的な保育実践の観察と聞き取り③子育ち支援諸施設間の連携と協働に関する観察と聞き取りおよび評価に関する聞き取り。以上の調査は、当該年度の計画に添って行われた。即ち、保育園(1か所)、幼児学校(2か所)の各年齢クラスの継時的な観察とビデオ撮影および担当教員達への聞き取り、児童館等子育ち施設の観察・撮影と聞き取り、市役所の担当責任者への聞き取りを行った。但し、市の保育の発展に最も貢献した元責任者への聞き取りは本人の事情により来年度に持越しとなった。一方、来年度予定分の一部の資料が収集できた。(3)イタリア国立認知研究所でイタリアの統合的な保育についての資料を得た。 3.記録の整理:①観察記録に関し、各クラス間、各施設間の比較検討のなかで、一貫性・共通点・相違点を拾い出し、どのような点で統合ができているかを整理した。②聞き取り録音からイタリア語から日本語への翻訳と起こし記録を作成した。発言から、思想、環境設定、実践、保育者間の連携、他施設との連携、研修における統合の部分を抜き出した。 4.分析結果:施設全体としての統一テーマやシンボルの存在、クラス活動の流れの共通性、機関間の連携、共通の研修など、統合の上での重要な要素を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の調査内容はほぼ予定通りに行われ、必要なデータを得ることができた。データから、統合的な保育・教育の実践は次のことが寄与していると分析された。 ①制度的には保育士と幼児学校教諭の資格の障壁撤廃、共通の研修、学校・保育所間の職員配置の流動性の実現。②保育園(0-3歳)と幼児学校(3-6歳)の連携については、一貫した教育目標、教材についての考え方の共通性、職員間の情報伝達の仕方の工夫。③保育所、幼児学校内での連携については、学年間の活動・教材の統一性、職員間の協働。④市全体としては、乳幼児に関わる諸施設の連携によって、市全体で子育ち支援を行っていること。またこれらの乳幼児施設が幼児学校と保育所の橋渡し施設となっていること。 以上の分析結果は、当初の目的である統合的な保育・教育の諸要因を明らかにするのに大いに役立つものであった。また次年度に、さらにこれを整理補足する上での視点を提供するものであった。 また、当初の計画に加えて、統合的な保育を行っているスウェーデン、フィンランド、デンマークの北欧諸国の文献研究によって、教育省中心での統合と社会福祉省中心の統合の相違を明らかにでき、国レベルの統合の問題の検討も加えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度のピストイア市の調査は充実した結果を得たが、いくつかの点でさらに補足すべきこと、新たな視点が以下のように明らかになった。①ピストイア市の統合的な保育に至るようになった歴史的な経過とそこでの関係者の協働の過程を知ること。新しい制度ができ実行することの鍵は関係者達が目標に向けて一致協働できる体制作りである。その過程についての資料を得る必要がある。②研修の内容についての情報と実際。③統合的な保育の考え方がどのような理論と他の実践から影響を受けたか、についての情報の収集。④24年度の実地調査では保育所調査は1か所のみだったので、さらに追加する。 このために、25年度もピストイア市の実地観察・聞き取り調査を行う。 以上、2回の調査を総合的に分析し、その結果を報告書にまとめ、26年度に行う日本の保育者への情報提供とそれに対する聞き取り調査の材料のベースにする。26年度の日本の保育者へのインタヴュー調査の計画作成および予備調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)イタリア、ピストイア市での観察と聞き取り調査およびイタリア国立認知研究所(ローマ)の研究員への聞き取り調査の費用(旅費、宿泊費、通訳代)。 (2)聞き取り調査資料の翻訳および記録起こしの費用。 (3)聞き取りおよび観察調査で得られた結果から報告書を作成する費用(印刷費、製本費)。ピストイアの実地調査結果をもとに日本の保育者たちにインタヴュー調査をすることは3年目(26年度)の計画であるが、当該年度に実りある調査が得られたので、25年度中にはその報告書を作成し、調査結果の発表の機会とするとともに、次年度の日本の保育者のインタヴュー調査の計画作成のベースとする。
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Research Products
(2 results)