2013 Fiscal Year Research-status Report
多文化共生保育実践の多様性を統合的に理解するための枠組みの構築
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24531044
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Research Institution | Tokiwakai Junior College |
Principal Investigator |
卜田 真一郎 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (20353021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 知見 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10441122)
臼井 智美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30389811)
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Keywords | 多文化共生保育 / 文化化の状況要因 / 実践の多様性 |
Research Abstract |
本研究は、多様なエスニック・グループが置かれた状況に応じた形で行われていた多文化共生保育実践に関する研究を、新たな枠組みを提示することで相互に比較可能にし、特定のエスニック・グループへの焦点化を超えた諸実践の統合的理解のための枠組みを構築 することを目的としている。25年度は、下記の2つの研究のためのフィールド調査とデータの分析が実施された。 研究1は、保育現場の多文化化の状況の違いが多文化共生保育実践の与える影響を明らかにすることを目的としており、関西圏および関東圏にある8つの保育現場をフィールドとした保育者への聞き取り調査と多文化化の状況要因に違いがある関西県の4園におけるエピソード収集を実施した。保育者を対象とした聞き取り調査では、多文化化の状況要因が異なることにより、多文化共生保育実践がどのように異なるのかを明らかにする観点から、聞き取りを実施した。得られた聞き取りデータをM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いた分析を行い、多文化化の状況要因の相違が、保育の中での課題、保育目標、保育の中での取り組みといった保育実践の諸側面にどのような影響を与えるのかについて整理を行った。現在、論文執筆を行っている。研究2は、来日第二世代保育者のキャリア形成と実践をテーマ、来日第二世代(子ども時代に来日した日系ブラジル人・日系ペルー人)が、日本社会で暮らす中で、どのような経験を積み上げ、どのように「外国にルーツを持つ保育者としてのキャリア形成を行ってきたのか」を明らかにする事を目的としている。そのため、来日第二世代保育者3名への聞き取りを実施し、自己のルーツに関わるアイデンティティの変容に着目して分析を行い、TEM(Trajectory Equifinality Model:複線経路・等視性モデル)にて可視化した。現在、論文執筆を研究協力者と共に実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1については、25年度は聞き取り対象園を8園に増やした上で、データ収集は終了している。データ収集後のデータの分析に時間がかかり、当初予定よりやや遅れて、論文執筆に取り組んでいる状況である。また、フィールド調査によるエピソード収集ついては25年度も引き続き継続中である。 研究2については、25年度のフィールド調査の中で、多文化共生保育実践を検討するために注目すべき事象であるという認識を得たことから、調査課題として上がってきたものである。3名の来日第二世代の保育者への聞き取りを実施し、データ分析は最終段階となっている。現在、分析を概ね終了し、論文執筆の最終段階として、ライフヒストリーとしての整理と考察を行っている状況である。 尚、上記の研究1・2を活かした、多文化化の状況要因を踏まえた多文化共生保育実践のリーフレット作成は予定通りに実施の見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である2014年度は、下記の内容に取り組む予定である。 研究1として、多文化化の状況要因の相違が多文化共生保育実践に与える影響をテーマとした論文の完成と投稿を予定している。また、研究2にとして、来日第二世代の保育者のキャリア形成と保育実践のテーマとした論文の完成と投稿を予定している。 研究2に関わっては、来日第二世代保育に対する現状・課題等に関わる等かかわるシンポジウムの実施を計画している。 さらに、上記の論文及びシンポジウムの成果、これまでのフィールド調査で収集されたエピソード等をもとにして、多文化共生保育実践に関わるリーフレットを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由としては、2013年度に実施を予定していた質問紙調査の実施を見送り、聞き取り調査を優先させたことにより、予定した予算の遂行が行われなかったことと、計画していた学会でのシンポジウムが、学会による抽選の結果、実施できない事態となったことによる。 2014年度の科研費の配分については、リーフレットの作成のために物品費及び人件費の支出として25万円を予定している。また、来日第二世代に関わるシンポジウム実施に伴う交通費及び宿泊費の支出として36万円を予定している。
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