2012 Fiscal Year Research-status Report
アジア・アフリカにおける民営初等教育の比較研究ー質の高い初等教育保障の視点からー
Project/Area Number |
24531058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
渋谷 英章 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50183398)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 私立学校 / 初等教育 / 教育の質 / 義務無償教育 / インド |
Research Abstract |
Iインドにおける民営初等教育、初等教育分野のPPP、初等教育の質保証に関するケース・スタディ (1)2002年の憲法修正以降の「2009年無償義務教育についての児童の権利法(連邦法)」の制定の背景と諸規程の内容を確認し、とくに私立初等学校に与える影響(質的教育環境整備基準の設定と学校設置登録の強化など)について確認した。 (2)ラジャスタン州ジャイプルにおいて、現地の教育研究者、私立学校協会代表、各私立学校の理事長、校長等に対し、私立初等学校が提供する教育の質に関する訪問インタビュー調査を行った。それにより、①ジャイプルに所在する私立初等学校の多様性(小規模の家族的経営の学校からチェーン展開する学校までの学校規模、および個人経営、宗教団体、財団、株式会社などの運営形態等)、②各校の教育理念・目的と教育の質との関係(創立者の哲学、保護者のニーズへの対応、市場原理等)、③各校の準拠する各種カリキュラム、④修了資格試験の学業成績と教育の質の関係、⑤教育に質における課外活動の意義、⑥教員の質と教員研修、⑦経済成長のなかでの、私立初等学校の提供する教育サービスに対する保護者の意識・ニーズの変化等、教育の質に対する多様な取り組みと実状について検証した。また、次年度以降バンガロール(インド)、南アフリカ、タンザニア、ケニアで実施する予定の調査の具体的計画とその分析の枠組を明確化することができた。 II 国際教育機関における研究動向の検討 たとえば、世界銀行によるlow-cost private schoolに対する人頭補助金にかかわる追跡評価のケース・スタディ等があり、low-cost private schoolは、特に貧困層の教育において、公立学校よりもより効率的にニーズを把握し、あらゆる面でより高い成果を挙げており、現在ではEFA達成のための一つの選択肢として考えられていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジャイプルにおけるフィールド調査により、私立初等学校における教育の質に関する、多面的な視点からの言説と実態を検証し、それらのデータをもとに理論的な分析を行うことができた。そして調査実施後、その結果にもとづいて現地の教育学研究者等と意見交換を行い、本研究・調査の意義と成果について積極的な評価を得ている。これにより今後の研究遂行の具体的方向性が妥当であることが確認できた。 ただし、国際機関等における研究動向については、まだデータ収集・分析が十分ではなく、次年度現地フィールド調査と並行して精力的に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールド調査に関しては、当初の計画通りに、ジャイプルでの調査の成果の上に、バンガロール(インド)、南アフリカ、タンザニア、ケニアで実施する予定である。ただし、各地における調査期間が短いことから、調査対象国のアジア・アフリカ大学間対話のメンバー(大学研究者に事前に十分な連絡をとり、一部の調査をこれら研究協力者に委託する。そして、現地の研究協力者とのディスカッションの機会を十分にとり、共同研究の体制をとり、研究を推進する予定である。 また、国際機関等の研究動向に関しては、資料・データ収集に十分に取り組み、早期に全体的な構図を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の通り、今年度十分ではなかった国際機関の研究動向に関しては、資料、文献等の購入に相当額を予定している。 また、共同研究としての体制を確実にするため、現地の研究協力者に対する専門的知識の提供等の協力謝金を十分に確保するととともに、資料・データの収集整理について研究補助のアルバイト謝金を支出する。 さらに、南アフリカ調査は、当初は連携研究者による単独の調査を予定していたが、連携研究者の所属大学がアジア・アフリカ大学間ネットワークのメンバーではないため、同ネットワークのメンバーである研究代表者とともに2名で実施することとした。そのための追加の旅費の確保が必要になっている。
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