2013 Fiscal Year Research-status Report
アジア・アフリカにおける民営初等教育の比較研究ー質の高い初等教育保障の視点からー
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24531058
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
渋谷 英章 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50183398)
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Keywords | 私立学校教育 / 初等教育 / 教育の質 / 義務無償教育 / 南アフリカ / タンザニア / ケニア / 低学費私立学校 |
Research Abstract |
1.アフリカ諸国(南アフリカ、タンザニア、ケニア)における民営初等教育の質保証に関するケース・スタディ (1)前年度のインド(ラジャスタン州)における調査結果を下敷きに、上記各国における私立学校協会(私立学校団体)、民営初等学校の理事長・校長等に対するインタビューとディスカッションを行った。質の高い初等教育の保障という国際的教育政策動向のなかで、それぞれの社会のコンテクストに応じて、民営初等学校に期待される役割と民間セクターであるからこそ可能となる取り組みの現状について確認することができた。とくに、民営初等学校は保護者や児童を「顧客」であると位置づけ。彼ら学校に対する要求への柔軟な対応、課外活動のための充実した施設設備や教員の強いアカウンタビリティ意識、そして教員一人あたりの児童数の制限など、良質は教育環境の整備・維持が特徴的である。 (2)政府の私学に対する行政的コントロールに違いがみられるが、私立学校団体が加盟校の質的水準の向上にアドバイスを行い、加盟校の教員に対する研修に取り組んでいる点は共通している。 (3)ただし、近年は学費が低廉な低所得層を対象とする私立初等学校が増加してきていることから、その「顧客」の条件や学校に対する要求・期待は多様化してきている。 2.民営初等教育の国際的動向――学費が低廉な私立学校の増加にともない、民営初等教育が低所得層にも拡大してきている動向に関する国際教育機関の政策動向と研究動向のレビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度のインドにおける民営初等教育の分析に加えて、植民地時代の英国の制度をもとに発展してきているアフリカ3か国の調査を実施し、計4か国における民営初等教育の相違点とと共通点を、近年の社会・経済・文化的展開と関連させて分析することができた。この点において、当初の研究課題の追究は順調に進行している。 なお、「教育開発に関するアジア・アフリカ大学間対話ネットワーク」において、本研究は2013年度および2014年度のネットワークの研究事業として承認された。ただし、対象国の大学のカウンターパート研究者は、国公立学校を対象とする政府の政策を研究を中心としており、必ずしも私立学校教育を専門的に研究しているわけではないため、調査実施にあたっての対象の私立学校の特定と紹介、ならびにその社会における私立学校事情についてのインサイダーとしての一般的な情報提供という程度に限られていた。さらに、研究経費上の制約もあり、各自が各国の私立学校についての研究を実施し、次年度で予定していた各自の研究成果を持ち寄るワークショップの実施は難しいと判断した。ただし、このネットワークのメンバー(大学の教育学研究者)に本研究の成果を提示し意見を聴取することで、このネットワークを活用する予定である。 また、国際的動向の分析は進捗してはいるもの、まだ十分ではないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アフリカの3か国について、本年度の調査の成果の上に、本研究の目的にしたがって訪問すべき私立校の種類等を特定し、再度訪問調査を行う予定である。なお、各国の調査に先出ち、前回の調査レポートを取りまとめ、「アジア・アフリカ大学間対話ネットワーク」のメンバーでもある各国のカウンターパートに提示することによりディスカッションを深めることを予定している。 なお、インドのケース・スタディについては、今年度バンガロールでの実施を予定していたが、調査準備の進捗状況や日程の都合から実施できなかった。また、南アフリカの私立学校D団体であるISASAのDirectorから、ケララ州(バンガロールと同じインド南部に位置し、植民地時代にはキリスト教ミッショナリ―が学校教育の普及に貢献した)での調査を勧められたことから、インドでの調査対象地域を変更・追加することも考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日程の都合上、インド・バンガロールにおける調査を実施できなかった。 アフリカ3か国を対象とする調査は予定通り実施する。それに加えて、本年度実施できなかったインドでの調査を実施する。
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Research Products
(2 results)