2013 Fiscal Year Research-status Report
抽象絵画の構造理解のための感性心理的認知過程の計測と分析
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24531093
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
新井 義史 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10142762)
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Keywords | 抽象絵画 / 感性 / Gestalt心理学 / 視線測定 |
Research Abstract |
本年度は研究2年度として視線測定装置を用いた計測およびその分析を中心に、次のように行った。(1)仮説をもとにした使用図版の作成、(2)視線測定、(3)分析および報告書作成、(4)抽象絵画の構造理解のための諸視点のまとめ、(5)それに関するテキスト案の作成。 (1)仮説をもとにした使用図版の作成では、当初は心理測定にふさわしい簡易図形を作成し、それらを用いて検査を試みた。しかし、単純図形では微妙な視線移動の観測が難しかった。したがって実際の「絵画作品」の中から具象を含めた諸タイプの図版を使用することにし絵画図版10点を選定した。(2)視線測定では、10名の学生および2名の教員による測定を行った。(3)分析および報告書作成では、測定により得られた数値をもとに、視線移動状況を「線」により表し、さらに視線の「滞留度」を円グラフにてビジュアル化した。同時に収集したプロトコルとの相関を分析し、大学紀要に発表した。 (4)抽象絵画の構造理解のための諸視点のまとめに関しては、諸研究者の文献をもとに視覚心理的側面から、以下のような整理をおこなった。①見えるから感じるまでの流れ、およびそこにおける情動と感情。②感情の4段階と抽象絵画の位置。③造形性の基本にあるホメオスタシス。④均衡状態=水平・垂直・中心。⑤基礎平面・外部要素と内部要素・視覚的力動性。⑥ゲシュタルトの視点からの絵画理解。 従来これらは、脳科学・視覚心理学・芸術心理学・構成学・抽象絵画論など、それぞれの分野において研究されてきた。今回の研究は、抽象絵画の観察活動を通じて、人間の視知覚系の活動を「情動=感情」の側面から、捉えなおすことにつながるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単純図形では微妙な視線移動の観測が難しかった。また視線測定とプロトコルの同時収集が困難であることが判明した。よってそれに代わりうる図版選定および質問法などへの手法変更を検討せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
作品観察時の視線移動測定の際の発語の同時収集は予想外に困難であった。そのため方法を変え、視線移動測定後にプロトコルのみを質問法により聞き取った。その結果からは、被験者の経験の差による語彙量の相違および作品の見方の相違とを確認することができた。 最終年度は、研究2年目にまとめた内容をテキストに起こし、それを用いて学生の被験者に解説し制作演習を行う。その制作物を分析し、抽象表現への理解度の変化を確認したい。 なお、研究2年目には簡易脳波計を購入し試行した。抽象作品の観察時の脳波測定の事例はこれまでほとんどおこなわれていない。脳波計測がデリケートな条件整備が必要であることから、試行作業が停滞している。しかしながら、構造理解の心理的側面の測定には有効な検査であると考えている。 これらの成果を総合的にまとめ報告書を作成する。併せてホームページを通じて一般に公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
視線測定に際しては、無償協力による実験希望申出者があり、多くの被験者への謝礼が不要になった。また、旅費に関しては、別の出張の際に本計画内の調査も併せて行う機会があり、出張回数が減ったため。 人件費は、最終年度での研究のまとめ作業に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)