2012 Fiscal Year Research-status Report
表現重視の読むことの学習方略が及ぼす読解力育成への影響に関する実証的・実践的研究
Project/Area Number |
24531108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小久保 美子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30413032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 一郎 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (00149767)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 読むことの指導 |
Research Abstract |
研究の初年度に当たる24年度は、「読解力」の育成に力を入れている小学校のカリキュラムと授業記録の収集を全国的規模で収集すること、及び本研究に関連する海外情報の入手の手段として、NCTEの一団体であるWhole Language Umbrellaへの学会参加を目的とした。後者については、大学業務との関係で実行することができなかったが、機関誌等を通じてアメリカにおける読むことの指導に関する情報の収集を行った。 以下、研究実績について概要を述べる。 研究代表者は、国立教育政策研究所や横浜市の研究指定を受けている横浜市立並木中央小学校の公開研究会に参加し、表現活動を重視した読むことの授業の実際に関する情報収集を行った。当該校は、①単元プラン凝縮ノート②教材分析シート③国語科学級歴の三種のノートやシートを作成しており、それらの資料から、国語科の能力を系統的に育成するための授業の方向性を明らかにすることができた。実際に参観した3年生の授業では、斎藤隆介の作品を読んで、好きな登場人物を紹介する活動を行っていたが、ホワイトボードに登場人物やキャラクターを表した言葉などを貼り付けながら、登場人物のどこがすばらしいかを明瞭な言語で発表する姿が見られた。 研究分担者が指導助言に当たった①盛岡市立月ヶ丘小学校②横浜市立白幡小学校③唐津市立笂箞木小学校は、いずれも国立教育政策研究所や当該市の研究指定を受けている学校であるが、年間を通して読書活動を推進するための国語科の授業改善や学校図書館の改善に取り組んだ結果、子どもの読書意欲が高まり、全国学力調査においても飛躍的な向上を見せたとの報告が得られた。 以上、読むことの授業改善に取り組んでいる複数校のカリキュラム収集を通して、本研究課題への実証的な手がかりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公務の関係上、授業の参与観察は公開された授業に止まり、詳細な授業記録をとることは次年度の研究活動内容となったが、授業の参与観察をさせていただく学校として、横浜市立並木中央小学校、新潟市立内野小学校、同市立巻北小学校が決定した。また、「読解力」の育成に力を入れている小学校のカリキュラムの収集と当該校の授業実践上の効果の報告を通して、本や文章を読んで好きなところを紹介したり推薦したりといった表現活動を重視した読むことの授業が読むことの能力を向上させているという全体的な実証を得ることができた。 海外の読むことの指導に関する動向を把握するために予定していたアメリカで開催される学会への参加は、校務との関係で実施することができなかったが、機関誌等を通じて、アメリカでは、読むことの指導理念として「主体的な読み手を育てること」に主眼を置いていること、そのために、脳科学や心理学、社会学的な見地から、個人内ベースによる「理解とは何か」といった原理論的な探究がなされていること、授業では、実際の本を教材として用いていること、個々人の主体的な自由読書の時間が設けられていることなどを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、授業の参与観察を行わせていただく小学校において、詳細な授業記録を収集することを主な目的とする。なお授業記録をとる方法としては、特定の子どもに目を向けたエスノグラフィーの手法によることとする。 授業記録は、学級全体の様子と対象児童の動きの双方をとることとし、得られた映像や教師及び対象児童に行ったインタビューの分析を行うことを通して、以下の3点を明らかにする。(1)教師は、どのような働きかけをして、子どもの既有の知識や技能を引き出したり新たな知識や技能を授けたりしているのかを、発問・指示・助言レベルで明らかにする。(2)教師の働きかけが実際にどのように子どもの読む活動に機能しているかを映像やインタビュー内容と照応させながら明らかにする。(3)映像やインタビューと照応させながら、子どもがどのような思考・判断をしながら本や資料を読み、表現行為に至っているのか、また、そこでは、どのような読みの知識や技能を働かせているのかを明らかにする。 当該年度における本研究に関する海外情報の手段としては、アメリカで、例年4月下旬から5月上旬に開催されるInternational Reading Assotiation(IRA)への参加する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)国内外の読むことの指導及び国語科のカリキュラムに関するに関する研究文献 (2)文具、プレゼンテーション用ソフトウェアー、DVDーRW (3)旅費等(①横浜市立並木中央小学校・・・月1回×10回、②唐津市立箞木小学・・・佐賀2日×1回、③全国大学国語教育学会・・・青森3日×1回、広島3日×1回、④IRA学会・・・アメリカ7日×1回、⑤人件費・・・データ整理補助者3人×5日、⑥その他・・・複写費、学会参加費
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