2012 Fiscal Year Research-status Report
「スキル」の育成を中心にした社会科「環境シティズンシップ」教育の革新
Project/Area Number |
24531118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
水山 光春 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80303923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 功太郎 宮崎大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00270265)
荻原 彰 三重大学, 教育学部, 教授 (70378280)
樋口 とみ子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80402981)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換(オーストラリア,連合王国) / シティズンシップ教育 / 環境教育 / スキル |
Research Abstract |
本研究の目的は,環境(について,を通して,のための)シティズンシップ教育における授業構成や授業方法の解明が不十分であり,学校現場の実践者の期待に十分に応えられていない現状を改善するために,シティズンシップ教育の本質的要素である「スキル」の育成を中心に,特に社会科での展開を視野に入れた教材の開発・実施・評価を行うことにある。そのために本年度は,①理論研究,②理論研究を発展させた海外調査を行うとともに,③授業モデルの素案について検討した。 ①に関しては,「スキル」概念の背後にある「リテラシー」「コンピテンシー」概念についての整理を行い,キーコンピテンシーの一部が切り離されて独立に測定・評価されうることを目ざすものとしてリテラシー概念をとらえるとともに,コンピテンシー概念の持つ教育学的な危うさについて検討した。 ②については,オーストラリアにおける環境シティズンシップ教育の具体的な展開を,Education Service Australia(ESA),E. Tudball教授(Monash大学),World Vision Australia等の訪問によって確認した。訪問調査によって明らかになったことは,オーストラリアにおいてはすでに環境教育とシティズンシップ教育は一体化していること,及びその実施においてシラバスベースのカリキュラムとアウトカムベースのカリキュラムがせめぎ合っていることであった。 ③については,スキルの育成を中核としたシティズンシップの構造モデルとシティズンシップ育成をめざす授業原理,及びそのうちの「社会形成」を目ざす授業の基本的学習過程を仮説的に示すとともに,政治的リテラシーに着目した「しっかりした強いシティズンシップ」と,多様性に着目した「しなやかで優しいシティズンシップ」の両者を組み込んだシティズンシップスキル育成を目ざす学習プロセスを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終研究目的を達成するために,初年(平成24年)度は,次のような研究計画を立てていた。①理論研究に関して,シティズンシップ教育,環境教育,教育学それぞれの立場からの今日求められているスキルやリテラシー,コンピテンシー概念の整理と交流を行う。特に学力論においては欧州評議会の『民主主義的シティズンシップの教育(EDC)報告書』(2000)やOECDの『コンピテンシーの定義と選択プロジェクト(DeSeCo)報告書』(2000)等に見られるスキルやリテラシー,コンピテンシー論を整理するとともに,それらの理論の背景についての理解を深める。②開発研究に関して,合同研究会においてスキル育成を中心とした授業のイメージを原理研究チームと授業研究チームで共有し,シティズンシップ教育研究班はそれを承けた授業構成のあり方を検討する。 それに対して本年度は,研究実績の概要に記したように,①理論研究については,「スキル」概念の背後にある「リテラシー」「コンピテンシー」概念についての整理を行うとともに,海外調査をオーストラリアにおいて実施し,「シティズンシップ教育」と「環境教育」が持続可能性をキーワードに深く結びついていることが確認できた。②開発研究については,スキルの育成を中核としたシティズンシップの構造モデルとシティズンシップ育成をめざす授業原理,及びそのうちの「社会形成」を目ざす授業の基本的学習過程を仮説的に示すことができた。 以上,研究は,海外共同研究者の事情で,海外調査地が当初予定していた連合王国からオーストラリアに変更(連合王国での調査は第三年次に実施することに変更)になったこと,理論研究チームと授業研究チームとの連携がやや不十分であったことを除いて,概ね予定通り進行している。よって(2)「おおむね順調に進展している」と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年次(平成25年度)には,理論研究においては,幅広い領域を持つシティズンシップの範囲を「環境」に絞るとともに,環境に関して求められるシティズンシップを,「環境について(about),環境を通して(through)環境のために(for)」の3つの視点から整理する。 また授業実践研究においては,英国新ナショナルカリキュラム・シティズンシップにおける「8段階の到達目標」を参考に,思考の成長・発達,および小・中・高の発達段階を踏まえた環境シティズンシップ・スキル育成のためのフレームワークを作成し,授業モデル作成のための基礎作業をおえる。さらに25~26年度にかけて,小・中・高それぞれにおける授業モデルを作成し,実践・評価する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(研究第2年次:平成25年度)には,次のような研究費使用計画を立てている。1)環境シティズンシップ教育の実施状況調査をアメリカ合衆国において実施する(30万円×2人:7泊8日),2)オーストラリアより研究者を1人招聘し,研究会をもつ(50万円×1人:3泊4日),3)国内研究会交通費20万円,4)図書費20万円 以上の計画遂行のために,研究代表者・分担者に次のように配分する。水山光春(60万円+次年度繰り越し分81110円), 吉村功太郎(30万円),荻原彰(30万円)樋口とみ子(20万円)
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