2013 Fiscal Year Research-status Report
「スキル」の育成を中心にした社会科「環境シティズンシップ」教育の革新
Project/Area Number |
24531118
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
水山 光春 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80303923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 功太郎 宮崎大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00270265)
荻原 彰 三重大学, 教育学部, 教授 (70378280)
樋口 とみ子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80402981)
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Keywords | シティズンシップ教育 / 環境教育 / スキル / 技能 / リテラシー / 国際情報交換(オーアウトラリア:連合王国) |
Research Abstract |
本研究の目的は,環境(について,を通して,のための)シティズンシップ教育(以下,「CE」と略す)における授業構成や授業方法の解明が不十分であり,学校現場の実践者の期待に十分応えられていない現状を改善するために,CEの本質的要素である「スキル」の育成に着目した教材の開発・実施・評価を行うことにある。そのために本年度は,1)理論研究を発展させた海外調査をアメリカをフィールドとして行うとともに,2)授業モデル構築のための検討を昨年度に引き続いて実施した。 1)については,「スキル」と不即不離の「リテラシー」に注目し,環境についてのリテラシーをどのように捉えればよいか,アメリカにおける「環境リテラシー」の取り組みを通して検討した。今回取り上げたのはCenter for Eco-Literacy(CEL)とLiteracy for Environmental Justice(LEJ)の2つのNPOの取り組みである。両者はいずれもカリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置いて活動している。CELは「食べられる校庭(Edible School Yard)」プロジェクトを通して食農教育を,LEJは「環境の番人(Eco Steward)」活動を通して総合的な環境教育を実践し,すでに様々な環境関連の賞も受けている。文献調査,訪問調査等を通じて明らかになったことは,アメリカでは「環境リテラシー」はすでに環境教育分野においてよく知られた概念になっており,環境保護や持続可能性,地域コミュニティの再生,住環境の改善,さらにはマイノリティや社会的弱者の権利保障,ひいては「環境正義」とまで密接に結びついていることである。 2)については,CEの分析枠組を学習の到達目標と範囲の二つを軸にして作成し,そこに最近の我が国における代表的な実践を位置づけるとともに,日本のCE実践の成果と課題を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初には次の研究計画を立てていた。 1)環境に関連して求められるシティズンシップを「環境について(about),環境を通して(through),環境のために(for)」の3つの視点から整理するとともに,英国新ナショナルカリキュラム・シティズンシップにおける「8段階の到達目標」を参考に,複眼的/メタ的/批判的な思考の成長・発達,および小・中・高の発達段階を踏まえた環境シティズンシップ・スキル育成のためのフレームワーク素案を作成する。 2)理論面での海外調査をアメリカで実施し,シティズンシップ教育に取り組むNGOの取り組みについて視察を行う。開発研究に関しては,小中高それぞれにおいてモデル授業を開発し,実践するともにモデル評価のための基礎データを収集する。 それに対して本年度は,「研究の概要」に記したように,環境に関連して求められるシティズンシップを「環境リテラシー」と仮説的に定義して,環境リテラシーの視点からアメリカにおける二つの先駆的なNPOの活動について現地調査を行った。また,環境シティズンシップ・スキル育成のためのフレームワーク素案については,昨年度の構造モデルとは違った角度から,即ちシティズンシップ教育の分析枠組を学習の到達目標と範囲の二つを軸にして作成し,そこに最近の我が国における代表的な実践を位置づけるとともに,それらの成果と課題について確認した。 以上,研究は,実践面での授業モデルの作成・試行にやや遅れがあるものの,理論研究はほぼ予定通りであり,次年度(最終年度)の研究の完成に向けて順調に進んでいるといえる。よって(2)「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年次(平成26年度)には,理論研究においては,環境リテラシーの考え方をさらに推し進め,シティズンシップ教育における特徴的な3つのストランド,すわなち「政治的リテラシー」「社会的道徳的責任」「コミュニティへの関与」と環境リテラシーや環境正義の概念との関わりについての検討を深めるとともに,初年次の教育学的なリテラシー・コンピテンシー研究の成果を組み込んだ環境シティズンシップ・スキル育成モデルを確定する。併せて英国において現地調査を行い,こられの考え方が英国におけるシティズンシップ教育や環境教育のなかにどのように組み込まれているかを明らかにする。 また授業実践研究においては,英国新ナショナルカリキュラム・シティズンシップにおける「8段階の到達目標」を参考に,思考の成長・発達,および小・中・高の発達段階を踏まえた環境シティズンシップ・スキル育成のためのフレームワークを作成し,このフレームワークに基づいたカリキュラムを完成させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査(アメリカ)を平成26年3月に3名で実施したが,なにぶん年度末(3/16~3/24)であったために2名分の会計処理が次年度に持ち越された(56万円)。また,外国人研究者(オーストラリア)招聘のための予算を計上していたが,そのための費用(38万円)は別途調達することが可能となったので,その分に残額が生じた。 実質残額である38万円については,国内会議の追加開催,および追加の海外調査に充当し,研究の質的レベルアップをはかる予定である。
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