2013 Fiscal Year Research-status Report
「郷土教育の現代化」をめざした郷土教育モデルの構築
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24531199
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
飯島 敏文 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80222800)
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Keywords | 郷土教育 / 地域学習 / 直接経験 |
Research Abstract |
平成24年度から継続される3年間の研究計画見通しに立って、文献研究と奈良市周辺及び長野市周辺という2つの地域の事例研究を継続した。文献研究では計画通り、郷土教育聯盟の理論と実践、及び三澤勝衛の理論と実践を対象として取り上げて考察することができた。また、事例研究の対象とした2地域は、三澤勝衛が活動していた時代の長野県における郷土教育、さらには申請者が関わりを持つ平城京界隈における地域学習の事例である。 平成25年度は学校教育実践における適用可能性を重視し、とくに歴史的内容及び地理的内容を学ぶための教材としての適切性評価を並行しておこなった。平成24年度におこなったフィールドワークと授業観察と授業構想へのアプローチを継続した一方で、その対象地区を拡大して、子どもの生活空間とは離れた他地域における郷土教材の事例と実践的事例を取り上げて考察することにより、子どもたちの郷土意識における「中核的因子」の存在を仮定し、その様態を明示的に記述することを試みた。この構造的記述は三カ年の最終報告を総括する前段階として、平成26年度前半を目途に集約する予定である。 とくに郷土教材を申請者自身のフィールドワークによって調査・記録することと同時に、郷土教材としての教育的価値を明らかにするために、関係者への聞き取り調査や児童へのアンケートによって、日常的な事物や事象に対して可能な限りリアルな教材価値を発現することができるように、さらにそれを授業実践レベルへと発展させるように構想された前年度のプランが、学校教育実践の場で有効に機能しうるかどうかの検証を行いつつ、より実現可能性と実現価値の高いプランを構築するための実験実証的な検討をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は「郷土教材」について資料の収集・整理と分析・考察、それに関わる授業実践の分析に力点を置いたが、そのこととあわせて研究目的の実現に直結する作業の準備を開始した。抽出された因子が現実に人間形成的機能を有しているか、またそれらが現実的に機能しているかどうかの検証をおこなうためである。その複数の因子の存在を仮定することで人間形成諸因子の抽出及び構造的記述にアプローチした。日常的な事物や事象を学ぶことを通して子どもの中にいかなる郷土観が形成されるのかという要因とプロセスを緻密に検証することが主たる目的であった。 研究の推移を「おおむね順調」としたことについて、本研究の有効性の検証において、申請者が想定したようなレベルの教育活動・学習活動が実現している学校が非常に少ないという現実を認識したためである。一部の教員もしくは一部の児童が地域の学習(郷土教育)を正しく理解し、有効な学習を実現しようとしても、学校もしくは学級担任の十分な理解が得られないため学習成果が共有されずに一児童もしくは一教員の個別のものにならざるをえないというケースが少なからず見受けられた。最終年度である平成26年度の研究においては、次の2つの構想を提案することとしたい。郷土教育に取り組む指導者及び学習者の条件の如何に関わらず、本研究の成果を総括しうるように留意しつつ研究を遂行する予定である。 1)教員や児童のレベルに関わらず汎用性の高いモデル 2)限られた条件下で有効性を発揮することのできるモデル
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は平成24年度及び平成25年度の研究成果に基づいてそれらの人間形成諸因子が有する「教育的機能」を明らかにするための実証的研究をおこなう年度として位置づけている。実証的研究の際には、諸事例において相互に矛盾するところや、あるいは相互に新たな類似性や関連性をもつところを検討し、収集あるいは実施した授業実践例を分析検討することによって、可能な限り適用範囲の広い「郷土教材」の要件と、一般的な「郷土教育モデル」の構築をおこない、それを研究授業の構想において検証する。最終的に、子どもが日常生活を営む生活空間としての郷土の教育的機能に着目し、郷土がいかなる人間形成諸因子を有しているのかの抽出をおこない、それら諸因子を分類した上で諸因子を媒介する結合諸因子を見いだし、それらを一体的構造として記述する。その際、諸因子の多様性及び諸因子が子どもに及ぼす影響の多様性を踏まえ、現実的に郷土が子どもに対して実現する教育的機能を明示するものとする。とくに、郷土教材の選択と呈示、学習指導構想、研究授業の実施、及び実施した研究授業の分析を通して仮説的な郷土教育モデルの実効性を検証し、その地域的要素と普遍的要素の抽出と検証をおこなう。 研究方法としては、まず昭和初期の郷土教育理論から研究の観点を得た上で、子どもの地域学習を、子どもの「郷土」における「事象・事物」の経験として把握する。それら経験に対して、子どもの意識や子どもの生活地域の郷土教材の実態調査に基づいた諸要素の抽出及び分析を行い、教材開発と学習活動プランの提案に発展させる。得られた知見を授業計画の立案から授業実践へと発展させ、授業実践の分析によってその意義を検証する。「郷土」を学ぶことに関与する要素の抽出と構造的記述は、郷土教育研究、社会科教育研究の知見、及びフィールドワークによる事例分析結果を交えて遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は平成24年度から平成26年度にかけての3カ年の研究である。消耗品費や雑費が物品費に区分されているため、当初の計画より物品費が多く計上されているが、執行額は研究計画より5円少ないのみであり、ほとんど計画通りの研究及び予算執行ができていると評価できる。次年度使用額は当初計画通りであり、研究は適切に実行されている。 当初の計画では物品費、旅費、人件費・謝金、その他の総計が800,000円である。それぞれの費目間で多少の差異は想定されるが概ね計画通りの使用を予定している。
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Research Products
(4 results)