2013 Fiscal Year Research-status Report
通常の学級への相互依存型集団随伴性の適用に関する基礎的研究
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24531228
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野呂 文行 筑波大学, 人間系, 教授 (30272149)
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Keywords | 特別支援教育 / 応用行動分析学 / 相互依存型集団随伴性 |
Research Abstract |
今年度は、公立小学校の通常学級(3年生3学級)を対象に、相互依存型集団随伴性によるクラスルームマネジメントの効果を、2つの観点で検討することを目的として実施した。第一の観点は、学級全体への集団随伴性の適用が、個別的な支援をすることなしで、学級に在籍する発達障害児童の行動変容に効果をもたらすかどうかという点である。つまり、集団随伴性の適用が、個別支援の必要な児童をスクリーニングする機能を有するかどうかを検討することであった。第二の観点は、学級全体への支援で行動変容がもたらされなかった児童に対して、行動問題の機能的アセスメントを実施することで、当該児童の行動変容が可能になるかどうかを検討することであった。 対象となった3学級には、それぞれ1名ずつ自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する児童が交流・共同学習をしていた。3名が通常学級で過ごす場面の中で、「朝の会」が始まるまでの時間が観察対象の時間とした。標的行動は、ロッカーにランドセルをしまうことと座席に着席することであった。学級間の多層ペースラインデザインにより、相互依存型集団随伴性手続きの効果を検討した。 ベースライン条件として、特別な介入をしない条件において行動観察が実施された。ベースライン条件に続いて、相互依存型集団随伴性条件が実施された。具体的には、4名で1グループを構成し、4名全員が標的行動の生起が可能であった場合に、グループ全体で強化子(例えば、担任とドッチボールができる券)を受け取るという手続きが実施された。その後、行動変容が見られない発達障害児童に対して、個別介入条件を実施した。 本研究の結果、3学級中2学級においては、相互依存型集団随伴性手続きのみで学級全体の行動変容が確認された。また行動変容が見られなかった発達障害児童1名に対しては、機能的アセスメントに基づく個別介入の結果、行動改善が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度における研究実施計画は、本研究の第二の目的である「相互依存型集団随伴性による学級規模の支援が、その学級に在籍する発達障害児童の行動変容にどのような影響を及ぼすか」に関して、検討することであった。計画通りに研究が実施され、仮説通りの結果を得ることができた。一方で、相互依存型集団随伴性による副次的効果に関する分析が十分でなかった点については課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成24・25年度に実施した研究をリプリケーションすることを目的とする。平成24年度は相互依存型集団随伴性を適用する集団の大きさが、児童間で生じる対人相互作用上の副次的効果にどのような影響を与えるかについて検討した。その結果、相互依存型集団随伴性を適用するグループサイズが小さい方が、負の副次的効果が小さいことが示された。また平成25年度は、集団随伴性を用いた学級規模介入が、学級全体の児童の行動変容および発達障害のある児童の行動変容に与える効果を検討した。その結果、学級規模介入は、学級全体の児童のみではなく、発達障害のある児童の行動変容にも効果があることが示された。また、いずれの研究においても、集団随伴性のみを適用するのではなく、個別支援を組み合わせることの効果を示していた。 平成26年度は、平成24・25年度の研究に関して、適用する学年や活動等を拡大することを目標する。特に我が国においては、教科学習に対する相互依存型集団随伴性手続きの適用について、その効果を検討した研究が存在しないことから、相互依存型集団随伴性の適用条件を教科学習にまで拡大しうるかどうかを検討することを今年度の研究の中心的な課題とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
介入対象となる学級について、同一の学校内での研究が可能となったために、当初、予定していたよりも、人件費・謝金が少なかったためである。 平成26年度は、対象学校の拡大を計画しているため、平成25年度の残額分をその予算として使用する計画である。
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