2012 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害学生の成長過程に応じた情報保障のあり方に関する実践的研究
Project/Area Number |
24531233
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金澤 貴之 群馬大学, 教育学部, 准教授 (50323324)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 聡子 広島大学, アクセシビリティーセンター, 特任講師 (20359665)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 障害認識 / 情報保障 / 小型表示端末 / エンパワーメント / 音声認識 / 聴覚障害 / 高等教育 / 障害学生支援 |
Research Abstract |
本研究の目的は,聴覚障害学生のエンパワーメントを促進する情報保障のあり方を提案すべく,聴覚障害学生の4年間の学生生活を通した障害認識の変化に注目し,卒業後の社会参加への移行を踏まえた種々の情報保障の使い分けを実践的に検討することである。そこで本研究初年度となる平成24年度は,主として以下の3つの実践的研究を遂行した。 1.障害認識に配慮した小型表示端末による字幕運用:群馬大学において,スマートフォンタイプの表示端末(iPhone及びiPod touch),タブレットタイプの表示端末(iPad及びiPad mini),小型PCの3パターンの表示端末を用意し,聴覚障害学生自身の主体的判断で情報保障の利用媒体が選択できるように整備した。また,情報保障の利用経験が少ない学生,自己の障害認識に関して揺れや否定的な思いを抱える学生も情報保障を利用できるよう,適宜面談を行いつつ,目立たないスマートフォンタイプを積極的に活用した。 2.音声認識による字幕提運用による英語の情報保障:復唱・修正作業を要すると考えられてきた音声認識による字幕運用が,母語話者による英語の音声については復唱を介在させずとも十分実用に耐えうる高い認識精度を維持できることを確認した。そこで,前期における4名体制での試行的運用を経て,後期からは2名による実運用に移行した。これにより,従来は困難であった英語の話し言葉による授業へのアクセスが可能となった。 3.聴覚障害学生自身による情報保障の必要性のアピール:PEPNet-Japanシンポジウム実践事例コンテストにおいて,自らの情報保障のあり方について聴覚障害学生自身がアピールする機会を設けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画は,主として(1)PEPNet-Japan連携大学を中心とした他大学の実態調査と,(2)障害認識に配慮した,小型表示端末,音声認識,手話通訳等を活用した情報保障の実践,(3)情報保障支援への学生自身の認識の変化の分析であった。 (1)については,予定していた大学を十分に訪問できなかったものの,特に遠隔地支援の実践に取り組んでいるPEPNet-Japan連携大学の運営委員やコーディネーターとの情報交換を密接に行いつつ,今後も継続的な情報共有を図っていくことを確認した。 (2)については,ほぼ予定していた実践を行っただけでなく,特に音声認識による字幕表示については,母語話者による英語の授業における直接認識方式による運用という新たな可能性を見いだしたこと,そして試験的運用を経て2名体制による通常運用を実現し得たことは,高校まで「リスニング」を経験したことがない聴覚障害学生を新たな世界に導くことに繋がる,大きな成果であった。 (3)については,適宜,聴覚障害学生と面談をし,その学生の障害認識に寄り添いつつ,次の段階への促進を行ってきた。これについては残りの2年間での変化と合わせて成果を示していく予定となっている。 以上を踏まえると,それぞれの研究内容により多少の違いはあるものの,総合的にはほぼ予定通りに進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,(1)平成24年度に十分に行い得なかった,他大学における情報保障の実態調査の不足分を進めていくとともに,(2)障害認識の各段階における情報保障のあり方についての仮説モデルを構築し,それに沿った運用を進めていく。また,(3)個々の聴覚障害学生への障害認識の変化に関するインタビュー調査および分析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
他大学の実態調査と,共同研究者との打合せのために国内旅費を充当する。字幕運用および記録,分析作業のために人件費を充当する。また,小型表示端末等の追加購入等のために、今年度の残額を併せ、物品費を充当する。
|