2013 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害学生の成長過程に応じた情報保障のあり方に関する実践的研究
Project/Area Number |
24531233
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金澤 貴之 群馬大学, 教育学部, 教授 (50323324)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 聡子 広島大学, アクセシビリティセンター, 特任講師 (20359665)
|
Keywords | 障害認識 / 情報保障 / 小型表示端末 / エンパワーメント / 教育実習 / 聴覚障害 / 高等教育 / 障害学生支援 |
Research Abstract |
本研究の目的は,聴覚障害学生のエンパワーメントを促進する情報保障のあり方を提案すべく,聴覚障害学生の4年間の学生生活を通した障害認識の変化に注目し,卒業後の社会参加への移行を踏まえた種々の情報保障の使い分けを実践的に検討することである。そこで本研究二年次となる平成25年度は,主として以下の3つの実践的研究を遂行した。 1.他大学の実態調査:PEPNet-Japan連携大学を中心に,聴覚障害学生支援の体制が整備されている大学3校を訪問し,聴覚障害学生の障害認識に対応した支援の働きかけの工夫について聞き取り調査を行った。その結果,情報保障の利用への心理的抵抗への配慮など,関わり方の配慮の工夫は見られるものの,個々の聴覚障害学生の成長過程に応じて,用いる情報保障の方法について工夫している様子までは見られなかった。 2.G大学に在籍する個々の聴覚障害学生の障害認識の変化に関する実態調査:G大学教育学部における教育実習の特殊性に注目し,実習への取り組みを通した障害認識の変化と,情報保障についての意識の変化について分析を行った。大学での講義とは異なる,通常学校での教育実習への準備を進める中,能動的に情報を得ていこうとする心理面の変化が見られた。実習においては,聴覚障害学生自身の要望・選択によって,場面に応じて手話通訳と筆談を切り替える,授業を行う際の情報保障の手段をその都度変えていく,などの工夫が見られた。 3.上記の1,2を踏まえ,障害認識の変化に対応した情報保障のあり方についての仮説モデルの検討を行った。(1)情報保障の重要性への「気づき」の段階,(2)権利としての学習参加の充実の段階,(3)卒業後の環境に合わせて聴覚障害学生自らが必要な情報保障を要望・選択していく就労移行の段階,の各段階にあわせた適切な支援を工夫していく必要があると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は,主として(1)PEPNet-Japan連携大学を中心とした他大学の実態調査と,(2)障害認識の各段階における情報保障のあり方についての仮説モデルの構築(3)情報保障支援への学生自身の認識の変化の分析であった。いずれについても,ほぼ必要な内容を遂行できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究において,教育実習に注目することで,聴覚障害学生の情報保障に対する意識の変化が捉えやすくなることが見いだせた。そこで平成26年度は,(1)聴覚障害学生支援について先進的な取り組みをしている教員養成系大学,総合大学の教育学部を中心に,教育実習に関しての実態調査を実施,(2)筆談ボードやSNSのチャット機能など,聴覚障害学生自らが活用しやすいツールの併用,聴覚障害学生側がPCテイク講習を実施するなどの工夫を取り入れた仮説モデルの実践的検証,を行いつつ,(3)マニュアル作成を含め,これまでの研究成果発表を積極的に行っていく。 他大学の実態調査と、共同研究者との打ち合わせのために国内旅費を充当する。字幕運用および記録,分析作業のために人件費を充当する。成果発表のための学会参加費,及びマニュアル作成費等を充当する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究予算はほぼ予定通りに執行していたが、効率的な執行(同等品が有る場合、より安価なものを購入する等)を心がけたため、残金が発生した。 翌年度の予算と併せて計画的に執行する予定である。
|