2012 Fiscal Year Research-status Report
ICTを活用した障害の極めて重い児童生徒の弁別・コミュニケーション学習の研究
Project/Area Number |
24531255
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大杉 成喜 熊本大学, 教育学部, 講師 (10332173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅谷 忠勇 明星大学, 教育学部, 教授 (60009719)
肥後 祥治 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (90251008)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / アシスティブ・テクノロジー / 重度・重複障害教育 |
Research Abstract |
課題1「障害の極めて重い児童生徒のスイッチ入力環境・教材の開発」では特別支援学校中学部に在籍し訪問教育を受けている濃厚医療・濃厚介護を常時かつ長期に必要とする障害の極めて重い生徒の家庭と契約し、週1回の個別のセッションを実施してきた。これまで授業で使用されてきた空圧センサースイッチから、より入力が確実な自作の握りスイッチが使用できるようになった。視覚障害も併せ持つ生徒の個別のニーズに応じ、組み込みコンピュータと振動モーターによるフィードバック装置を開発し、指導に活用してきた。 課題2「障害の極めて重い児童生徒の弁別学習の分析」では障害が重度でほとんど身体を動かすことができない生徒の実態の分析し、その障害や認知に応じた機器や教材利用計画を策定した。設定した課題に応じて開発した音楽選択教材を使用することにより、生徒がスイッチを使って好きな音楽を選択できることを明らかにした。 これらの学習をより詳細に分析するためには,操作(ボタン入力や選択の様子)を克明に記録する必要があった。これまでビデオや用紙による記録に加え、スイッチトイとスイッチの間に接続する機器およびソフトウェアを開発し、時系列による詳細な記録を行った。 機器使用計画策定においてこれまでに開発した障害に応じた機器利用計画の策定(アシスティブ・テクノロジー・コンシダレーション)システムを発展させ,本人・保護者・指導者(特別支援学校担任)・専門家等の合意形成に基づく個別の学習環境を模索してきた。ここで得た知見は、中間発表として、日本教育情報学会年会(8月26日27日)で口頭発表を行ったほか、日本特殊教育学会大会(9月28日~30日)の自主シンポジウム、国立特別支援教育総合研究所の「特別支援学校(肢体不自由)のAT・ICT活用の促進に関する研究-小・中学校等への支援を目指して-」の協議会で報告し、広く実践者の意見を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
8月26日27日の日本教育情報学会年会、9月28日~30日日本特殊教育学会大会において本研究の問題意識、内外の研究の到達点、本研究で明らかにすることを整理し、一般研究者と議論を行った。12月1日2日、熊本大学において研究協議会を行い、ここまでの達成度と課題について協議した。 濃厚医療・濃厚介護を常時かつ長期に必要とする障害の極めて重い生徒の弁別学習について、検討を行った。本児は明暗は判別できるが、これまで暗時にスイッチを押し、教材を操作する学習を進めてきたため、弁別逆転を理解するには時間がかかるものと考えた。一方、音楽刺激(本児が好む音楽とそうでない音楽)を弁別してスイッチ操作で「送る」教材は有効であると考えられた。12月2日には家庭訪問教育セッションを実施し、保護者、在籍校担任を加えて研究協議を実施した。障害に応じた機器利用計画の策定(アシスティブ・テクノロジー・コンシダレーション)システムにより、在籍校の個別の教育計画と連動した機器開発、授業実践を進めた。ここで開発したスイッチインタフェース(スイッチ入力により、出力信号と振動モータ動作を設定した時間持続させる)は特別支援学校に付与し、授業での活用を支援した。 また、全国の特別支援学校に在籍する重度・重複障害のある児童生徒へのICT機器の詳細な使用実態、担当者の意識を調査するため、これまで熊本県内でのみ実施した調査をもとに、全国の特別支援学校に対して調査を実施することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1「障害の極めて重い児童生徒のスイッチ入力環境・教材の開発」では,障害に合わせたスイッチ等学習環境の再検討、障害・学習ニーズに合わせた教材の検討・開発に取り組む。平成24年度の試作では、組み込みコンピュータArduinoが入出力装置の制作に適していた。特に、光や振動の刺激、時系列の入力記録機能を有する教材はは有効であった。平成25年度もこれらの機能をもった教材制作を行っていく。 課題2「障害の極めて重い児童生徒の弁別学習の分析」では,児童生徒の形成的評価をもとにATコンシダレーションを実施し,その対応を検討する。振動スイッチ、光る教材は、在籍校担任との協議の中で生み出されたものであり、ATコンシダレーションの良い実施事例と考えられる。平成25年度は新たな弁別課題と実験計画を設定して実施していく。 課題3「障害の極めて重い児童生徒のコミュニケーション手段の学習と般化」では,ここまでの研究で得られた知見を元に,他の児童生徒についてもとりあげ,実態の分析とそれに合わせたコミュニケーション方法の検討・実施を行う。専門の研究者を招聘した研究協議会を実施し、その評価を行う。 ここまでに得られた知見を元に、全国の特別支援学校の知的障害教育課程、重度・重複障害教育課程、訪問教育課程のICT教育担当者に対して、調査を実施する。(送付済み、平成25年度に回収、集計、速報によるフィードバックを行う。) これらのATコンシダレーションについての研究成果を発表する。日本教育情報学会、日本特殊教育学学会での口頭発表,ポスター発表を行い,広く意見を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
課題1「障害の極めて重い児童生徒のスイッチ入力環境・教材の開発」では、障害に応じた入力装置の制作のための材料・ソフトウェア購入費として使用する。 課題2「障害の極めて重い児童生徒の弁別学習の分析」では継続して訪問教育セッションを実施する。また、専門の研究者を招聘した研究協議会を実施し、その評価を行う。そのための講師招聘費、謝金として支出する。 課題3「障害の極めて重い児童生徒のコミュニケーション手段の学習と般化」では全国の特別支援学校の知的障害教育課程、重度・重複障害教育課程、訪問教育課程のICT教育担当者調査結果を分析する。 研究成果の発表として、日本特殊教育学会、日本教育情報学会等の学会参加費として支出する。
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Research Products
(5 results)