2013 Fiscal Year Research-status Report
ICTを活用した障害の極めて重い児童生徒の弁別・コミュニケーション学習の研究
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24531255
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大杉 成喜 熊本大学, 教育学部, 准教授 (10332173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅谷 忠勇 明星大学, 教育学部, 教授 (60009719)
肥後 祥治 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (90251008)
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Keywords | 特別支援教育 / アシスティブ・テクノロジー / 重度・重複障害教育 / 教材開発 |
Research Abstract |
課題1「障害の極めて重い児童生徒のスイッチ入力環境・教材の開発」では、視覚障害を併せ持つ重度・重複障害児の個別のニーズに応じた教材開発を行った。前年度作成した教材を発展させ、振動するスイッチを手探りで見つけて作動させる教材、振動フィードバッグスイッチにより音楽を再生する教材を開発した。学習をより詳細に分析するためには,操作(ボタン入力や選択の様子)を克明に記録する必要がある。時系列による詳細なスイッチ入力記録ができる教材に発展させた。中間発表として、日本特殊教育学会大会で報告し、広く実践者の意見を求めた。 課題2「障害の極めて重い児童生徒の弁別学習の分析」では、昨年度より特別支援学校中学部に在籍し訪問教育を受けている濃厚医療・濃厚介護を常時かつ長期に必要とする障害の極めて重い生徒の家庭と契約し、週1回の個別のセッションを実施してきた。TAC2による視機能の測定では、明暗が判別できる程度と診断されたため、聴覚・振動を利用した学習を進めてきた。課題1で開発した教材システムを利用した訪問教育セッションを実施した。また、専門の研究者を招聘した研究協議会を実施し、その中間評価を行った。 課題3「障害の極めて重い児童生徒のコミュニケーション手段の学習と般化」では全国の特別支援学校の知的障害教育課程、重度・重複障害教育課程、訪問教育課程のICT教育担当者調査を行い、その一部を日本育療学会で発表した。また、九州圏内の重度・重複障害教育を実施する特別支援学校の担当者に対して課題1で開発した教材を提供し、その中間評価を行った。機器使用計画策定においてこれまでに開発した障害に応じた機器利用計画の策定(アシスティブ・テクノロジー・コンシダレーション)システムを発展させ,本人・保護者・指導者(特別支援学校担任)・専門家等の合意形成に基づく個別の学習環境を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
8月30日9月1日に明星大学開催された日本特殊教育学会大会において本研究の問題意識、内外の研究の到達点、明らかにすることを整理し、一般研究者と議論を行った。8月25日26日、熊本大学において研究協議会を行い、ここまでの達成度と課題について協議した。 濃厚医療・濃厚介護を常時かつ長期に必要とする障害の極めて重い生徒の弁別学習について、検討を行った。前年度の研究協議会では、音楽刺激を弁別してスイッチ操作で「送る」教材は有効であると考えられた。これを受け、引き続き障害に応じた機器利用計画の策定(アシスティブ・テクノロジー・コンシダレーション)システムを用い、在籍校の個別の教育計画と連動した機器開発、授業実践を進めた。ここで開発した教材機器(スイッチ入力により、音楽を再生する装置。必要に応じてタッチスイッチと振動フィードバックが可能。)は熊本県内の特別支援学校にも付与し、授業での活用を支援した。 また、全国の特別支援学校に在籍する重度・重複障害のある児童生徒へのICT機器の詳細な使用実態について調査を実施した。 これらの成果は、日本特殊教育学会、日本育療学会で中間報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1「障害の極めて重い児童生徒のスイッチ入力環境・教材の開発」では,引き続き障害に合わせたスイッチ等学習環境の再検討、障害・学習ニーズに合わせた教材の検討・開発に取り組む。平成25年度の試作では、組み込みコンピュータArduinoを活用した音や振動の出力、時系列の入力記録機能を有する教材が有効であった。平成26年度は実験校以外の学校においてもこれらの機能の検証と普及を図る。 課題2「障害の極めて重い児童生徒の弁別学習の分析」では,児童生徒の形成的評価をもとにATコンシダレーションを実施し,その対応を検討した。これまで学校で使用してきたスイッチのうち、主に使用してきた手で引っ張るスイッチより、足で操作するスイッチの方が本人の操作性が高いことが判明した。また、振動をてがかりとした音楽再生教材機器について、視覚障害のある重度重複障害児の単独での可能となった。平成26年度は継続して実践を進めるとともに、SDメモリに溜められた操作記録を分析していく。 課題3「障害の極めて重い児童生徒のコミュニケーション手段の学習と般化」では,ここまでの研究で得られた知見を元に,他の児童生徒についてもとりあげ,実態の分析とそれに合わせたコミュニケーション方法の検討・実施を行う。専門の研究者を招聘した研究協 議会を実施し、その評価を行う。 前年度実施した、全国の特別支援学校の知的障害教育課程、重度・重複障害教育課程、訪問教育課程のICT教育担当者に対する調査を分析し、学会報告を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
梅谷教授においては、勤務先の明星大学が日本特殊教育学会大会実施校となり、大会準備のため今年度の科研協議会に参加ができなかったため、出張旅費等が必要とならなかった。そのため、科研協議会参加のための出張旅費に未使用金112,420円が生じた。 研究については、日本特殊教育学会大会会場で協議を行い、その進捗を確認した。 課題1「障害の極めて重い児童生徒のスイッチ入力環境・教材の開発」では、これまで作成した障害に応じた入力装置を改良し、10数台作成したものを九州圏内の特別支援学校に配布し、利用者による評価を行う。 課題3「障害の極めて重い児童生徒のコミュニケーション手段の学習と般化」では全国の特別支援学校の知的障害教育課程、重度・重複障害教育課程、訪問教育課程のICT教育担当者調査結果を分析する。研究成果の発表として、日本育療学会、日本特殊教育学会、日本教育情報学会等の学会参加費として支出する。
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Research Products
(3 results)