2012 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児の漢字の読み書き能力および障害メカニズムに関する認知神経心理学的研究
Project/Area Number |
24531263
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
柴 玲子 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70406908)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 勝夫 北里大学, 医学部, 講師 (10439119)
石坂 郁代 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70333515)
秦 若菜 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (50448958)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 読み書き障害 / 漢字 / 語属性 / タイプ分類 / 発達障害 |
Research Abstract |
1.発達障害児(LD、SLI、PDD、ADH)に総合的な読み書き検査を実施し、発達障害児の読み書き能力について調査し、読み書き障害の重症度やタイプ分類が可能か検討する。 (1)発達障害児へのデータ収集:平成24年4月~平成25年3月の期間に、北里大学病院精神神経科を受診した被験児25名に研究を実施した。研究実施後に児童および保護者からの研究協力同意の撤回の申し出はなかった。(2)読み書き障害の重症度、およびタイプ分類について:順次分析中だが、傾向として、音読に比して書字に遅れを示す児童が多くみられた。ヒント(視覚的、音声的)が有効なタイプ、ヒントを加えても困難なタイプに分かれた。音読は、漢字では、語属性を統制した検査を実施(小学4年生以上)したところ、非典型語に比して非語の成績が低下するタイプが1名確認できた。 2.読み書き障害の要因(予測因子) の検討:書字に遅れを示す児童は、視覚性分析力、視覚性記憶力の低下がみられており、これらの影響が考えられる(宇野ら1995、1999)。また、視力の影響が考えられたため、次年度より視力検査を導入する予定である。 3.すでに収集した健常児データ(柴、伏見、石田2008)との共通点や相違点、医学的診断との関連性について 検討する。障害機序について認知神経心理学モデルを用いて分析する。(1)decoding検査(SALA)の標準化:読みの困難さの背景要因の1つと言われている「decoding」力(宇野2009、稲垣2010、原2011など)の標準データを得るため、小学生144名に対してdecoding検査を実施した。実施にあたっては、北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会に申請し承認を受けている。結果は、正答率、音読速度、誤り傾向の3点において、学年による差がみられるか順次分析中である。(2)医学的診断との関連について:現在分析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)データ収集:予定対象数55名に対して、研究同意を得ている被験児30名、そのうち検査実施済は25名となり、おおむね順調である。対象内訳は、PDD、ADHDが多いため、今後調整を検討していく。 (2)読み書き障害の重症度、およびタイプ分類:データ分析は順次行い、データベース化している。重症度判定として、標準化検査結果およびヒント後正答数を参考にしている。タイプ分類は、音読は語属性を統制した検査結果によって分類しており順調に進んでいるが、書字は背景要因が複数あるため、データを蓄積していくことで分類が可能かどうか検討しているところであるため遅れがみられている。研究分担者と相談しながら分類基準を検討していく予定である。 (3)読み書き障害の要因(予測因子)の検討:得られた結果はデータベース化しており、おおむね順調である。視力検査の結果を追加し、影響を検討する。 (4)すでに収集した健常児データとの共通点や相違点、医学的診断との関連性:読み障害の背景因子の1つであるdecoding力を測る検査の健常データ(144名)の収集、データベース化は終わっており、おおむね順調である。誤り分析を行うことにより、定型発達の過程で起こる誤りなのか、質的に異なる誤りなのか検討することが可能になるため、新たに分析を加える。 (5)医学的診断との関連について:医学的診断(PDD、ADHDなど)をデータベース化しており、おおむね順調である。詳細に検討するため症状分類(ADHD:不注意優勢型など)が可能か検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.前年度に引き続き発達障害児へのデータ収集を行う:対象数については、平成24年度の対象内訳より、今年度の対象数の検討、および学年(1年~6年生)、精神医学的診断(特異的発達障害、学習障害、広汎性発達障害、多動性障害)のバランスを再検討し、特異的発達障害、学習障害の割合を増やす予定(柴、井上、藤原、和田)。 2.得られたデータを順次分析し、データベース化した上で統計的分析(分散分析など)を行う(柴、データ入力協力者)。 3.発達障害の先行研究を分析し、本研究で得たデータと比較し、さらに健常児との相違、精神医学的診断間との相違を検討する(柴、井上、藤原、和田、榊原)。 4.後天性失読の先行研究を分析し、本研究で得たデータと比較し、成人失読者との相違を検討する(柴)。 5.結果のまとめを行い、発達性ディスレクシア研究会などで学会発表を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.データ収集:検査記録用紙(ReadingTest、STRAW、SCTAWなど)および記録メディア媒体(外付けハードディスク、DVDなど)費用 2.データ入力および分析:データ入力協力者への謝礼費、統計ソフト費 3.発達障害および後天性失読の先行研究の分析:専門図書費、文献費用、および専門家から指導を得るための、調査研究旅費、専門的知識の提供費 5.結果の発表:学会発表費
|
Research Products
(7 results)