2012 Fiscal Year Research-status Report
保型超関数に付随するゼータ関数と4次形式の解析数論
Project/Area Number |
24540029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 文広 立教大学, 理学部, 教授 (20120884)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 保型超関数 / 概均質ベクトル空間 / 関数等式 / ゼータ関数 |
Research Abstract |
1 初年度である24年度は、もっとも単純な概均質ベクトル空間である1次元の場合に、保型超関数と2次特殊線形群の主系列表現との関係を調べた。この場合には、概均質ベクトル空間上の保型対と2次特殊線形群の普遍被覆群の主系列表現に属す擬保型的ベクトルが完全に対応していることが分かった。これは、関数等式を持つディリクレ級数と保型形式の対応の拡張とみることができ、この立場からMaass波動形式に対するWeil型逆定理を定式化した。 2 直交群のベクトル表現から得られる概均質ベクトル空間上の保型対に対する逆定理を、球関数つきゼータ関数を用いて与えた。 3 Clliford代数の表現から構成される二次写像を用いて、二次写像に対する局所密度のすべての素数を渡る積をフーリエ係数として、直交群のベクトル表現から得られる概均質ベクトル空間上の保型対を構成した。これにより、すでに構築されているゼータ関数の一般論から、概均質ベクトル空間の相対不変式とはならない4次形式(Clliford 4次形式)に対して関数等式を満たすゼータ関数が得られた。これは、Siegelによる二次形式の種ゼータ関数の類似物である。 4 関連する研究として、分解可能グラフから得られる穴あき対称行列空間の小行列式のシステムに対し、実数体上の局所ゼータ関数を定義し、その局所関数等式を証明した。本研究課題は関数等式を満たすゼータ関数を構成する原理を拡張することをその意義の一つとしているが、この結果は、また別種の原理の存在を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画以上に進展した部分としては、研究実績の 1 および 4 がある。1 では、特に、2次特殊線形群の普遍被覆群の表現と1次元概均質ベクトル空間の保型対との完全な対応関係は予想を超えて明快な結果であった。4 は実数体上の局所関数等式を問題としたものであり、本研究課題の枠組みの外にある結果であるが、この結果の示すものをくみ取るならば、新しい視点をもたらす可能性がある。一方、多変数保型形式の境界値の計算の面ではまだ十分な進展があるとは言えないため、全体としてみたときには、おおむね順調な進展と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は現在のところ、おおむね順調に進展しているので、研究計画調書に記載した当初計画に基本的に沿って、テーマ別の3つのワーキンググループの体制で引き続き研究を進める。ただし、24年度の進展を踏まえて、2次特殊線形群の主系列に属す(擬)保型的ベクトルの構成、Clifford4次形式のゼータ関数の特異部の決定など、一般論に示唆を与えると考えられる具体的計算を重視して研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、引き続き図書など資料収集、研究協力者との研究打ち合わせのための旅費、を中心に支出する。24年度は、海外共同研究者のうちの1名が長期に日本滞在中であったこともあり、外国旅費の支出がなかったが、25年度は海外共同研究者との研究打ち合わせのための支出も予定している。
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