2013 Fiscal Year Research-status Report
保型超関数に付随するゼータ関数と4次形式の解析数論
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24540029
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 文広 立教大学, 理学部, 教授 (20120884)
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Keywords | 概均質ベクトル空間 / ゼータ関数 / 保型超関数 / 関数等式 |
Research Abstract |
1.1次元概均質ベクトル空間上の超関数の保型対に対応する主系列表現の保型ベクトルが合同部分群不変な場合には、付随するディリクレ型L関数が関数等式を持つ。逆にこのL関数の関数等式から、合同部分群不変な保型ベクトルの存在を示すことができ、さらにPoisson変換によってMaass波動形式を構成できる(24年度の成果)。この構成法を、偶数変数二次形式の直交群のベクトル表現を極大放物型部分群に制限して得られる概均質ベクトル空間に付随する2変数ゼータ関数に適用し、それがMaass波動形式のMellin変換として得られることが示した。この結果の奇数変数の二次形式への拡張には、SL(2,R)の2重被覆の主系列表現が必要であり、それは26年度の研究課題である。 2.直交群のベクトル表現から得られる概均質ベクトル空間上の超関数の保型対に対する逆定理の応用として、4次形式を相対不変式とする5系列の概均質ベクトル空間のゼータ関数に対しSO(1,n)上の保型形式に付随するL関数としての解釈を与えた。ここで扱った概均質ベクトル空間のゼータ関数は、従来、SL(2), Sp(2)などの群上の保型形式との関連で解釈されてきたのであるが、今回のSO(1,n) 上の保型形式との結びつきにはその枠におさまらない部分があり、これは保型形式の新しいタイプの持ち上げとして解釈されるべき現象の可能性を示していて、興味深いものである。 3.24年度には、分解可能グラフから得られる穴あき対称行列空間の小行列式のシステムに付随する局所ゼータ関数の関数等式を示したが、それを一般化し、2つの局所関数等式の貼り合せという新しい局所関数等式の構成を得た。これにより、等質錐に付随するゼータ関数の関数等式の明示的計算の処方箋が得られるとともに、概均質ベクトル空間の理論の枠内に収まらない多変数の局所関数等式を豊富に見出せるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Maass波動形式に対する逆定理、概均質ベクトル空間のゼータ関数に対する新しい保型形式との結び付きなど、当初想定していた以上に、概均質ベクトル空間上の超関数の保型対の理論に豊富な内容があることが見えてきている。 また、保型対の理論とは外れるが、局所関数等式の貼り合せ定理のように、新しい関数等式構成原理も発見された。 以上のような点では、当初の計画以上の進展を見せている。また、これらの成果を得る上でワーキンググループにおける研究協力もよく機能している。 しかし、これらの新しい結果に集中したことから、4次形式のゼータ関数の特異部の計算など、25年度までに完了予定であった計算に遅れを見せている部分もあるため、全体としては、おおむね順調な進展と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、現在のところ、おおむね順調に進展しているため、研究計画調書に記載した当初計画に基本的に沿って、テーマ別のワーキンググループという体制で進める。ただし、26年度は本研究の最終年度であるため、成果発表に向けての準備を年度前半に集中的に行う。また、9月には、概均質ベクトル空間と関連する話題について国際研究集会が予定されており、海外共同研究者も招聘し、成果の発表と同時に本研究の総括的議論、および、次年度以降の新しい研究の方針についても議論をすすめることとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、海外共同研究者を招聘し研究打ち合わせを行う予定であり、そのための外国旅費に多くの予算を支出する計画であった。しかし、26年度に本研究の研究グループの枠を越えて広く関連研究者を招聘して国際研究集会を開催する計画があり、海外共同研究者の来日予定もそれに合わせて行う方向に変更されたため、次年度使用額が生ずることとなった。 次年度使用額を含め、(1) 海外から共同研究者、および、研究協力者を招聘すること、 (2) 海外での研究成果発表を中心に、今年度の研究費を使用する計画である。
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