2013 Fiscal Year Research-status Report
平均化の手法による実及び複素フィンスラー幾何学の大域的研究
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24540086
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
愛甲 正 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (00192831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小櫃 邦夫 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (00325763)
宮嶋 公夫 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (40107850)
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Keywords | フィンスラー接続 / フィンスラー計量 / Rizza-Kahler多様体 / averaged metrics / averaged connection / l. c. Rizza-Kahler多様体 / Finsler-Weyl接続 / Wagner接続 |
Research Abstract |
平成25年度は,フィンスラー幾何学において重要な計量と接続の平均化の手法を用いて複素フィンスラー多様体の研究を主に行った.複素フィンスラー多様体の研究の歴史は新しく,目覚ましい成果は得られておらず,未だに手探りの状態と言ってもよい.本年度の研究では,これまで行われてきたフィンスラー・ケーラー多様体の研究を見直すことを第一の目的にした.その結果,得られた重要な成果は,これまでに多くの研究者が用いてきた非線形接続( Ehresmann 接続)は条件が強すぎるものであって,これを用いれば直ちにリーマンの場合に帰着されることがわかった.そこで,今年度の研究では,複素フィンスラー幾何学をケーラー・ファイブレーションの幾何学の特殊な場合と見なし,各ファイバーでのファイバー積分(平均化)を用いて種々のテンソル等から底空間のテンソルを構成することを第一の目標に研究を遂行した.これにより,実及び複素フィンスラー計量に付随するリーマン計量及びエルミート計量を構成でき,付随するリーマン幾何学やエルミート幾何学との関係を考察できるようになった. 平均化の手法で得られた結果の中で,特に意外な結果として,多様体の各接空間内の単位球の体積は定数であることを証明できた.このことはリーマン幾何学では当然のことではあるが,フィンスラー幾何学では,研究代表者の知る限りだれも証明していないことであり,このことからよく知られたSzaboの定理も初等的に証明される.ただし,この平均化の手法が長年の未解決問題である,非Berwald空間であるLandsberg空間が存在するかという問に有効な研究手法を与えるかは,今後の研究課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題にある「平均化の手法」を用いて得られた結果をフィンスラー幾何学の共形理論に応用することができ,未だに満足のいく結果の少ないこの分野にある程度の結果を得ることができた.その結果を,ハンガリーで開催された国際会議 " Colloquium on Differential Geometry and its Applications "で講演し,また論文 " Some remarks on Rizza-Kahler manifolds, Publ. Math. Debrecen, Vol. 84(2014). 105-122 " として発表した. また,共形的平坦性の特徴付けに,リーマン幾何学に現れるWeyl接続をフィンスラー幾何学に拡張したFinsler-Weyl接続を導入し,Wagner接続との違いを明確にすることができた.これらの接続から平均化により得られる接続は,いわゆるWeyl接続とLyra接続である.これらの接続の平坦性が与えられたフィンスラー計量や平均化して得られるリーマン計量の共形t期平坦性を特徴付ける.特に,この両者に共通な(曲率)テンソルを定義し,その消滅によりフィンスラー計量の共形的平坦性を特徴付けることができた.この2つの接続は,いわゆる片側射影変換の関係にあり,この共通な曲率テンソルの消滅が共形的平坦性を特徴付けることがわかる.この事実を証明するにあたり,Wely構造が閉であることと,そのWeyl接続のリッチテンソルが対称であることの同値性が重要な役割を果たしている.多様体の次元が3以上の場合,共形的平坦なリーマン計量の存在と多様体が共形的平坦な構造を許容することは同値であるが,フィンスラー幾何学の場合も,共形的平坦な構造を持つ3次元以上の多様体上に,共形的平坦なフィンスラー構造を構成できることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究を継続し,平均化(ファイバー積分)の手法をさらに押し進めて,実及び複素フィンスラー幾何学への応用について研究を推進させる.実フィンスラー幾何学はヘッセ多様体のファイブレーションの幾何学である.この観点から,平均化の手法を用いて,実フィンスラー幾何学での未解決問題である非BerwaldなLandsberg計量の構成について,今年度も引き続き研究を継続する予定である.また,今年度の研究の結果,フィンスラー多様体には平均化の手法により自然なリーマン幾何学の意味での統計構造が導入されることがわかった.この統計構造の幾何学とフィンスラー幾何学との関連が新たな課題として,研究を遂行する予定である. また,複素フィンスラー幾何学はケーラー多様体のファイブレーションの幾何学と解釈できることから,ファイブレーションの幾何学の一般論と比較しながらフィンスラー幾何学を研究する予定である.特に,Weil-Petersson計量を定義するのと全く同様に,底空間にエルミート計量を定義できる.このエルミート計量のケーラー性がどういう仮定のもとで導出されるのか,興味のある課題であることから,研究分担者の協力を得て研究を進める予定である.コンパクト・リーマン面から複素フィンスラー多様体への調和写像の研究は,未だに手探りの状態であり,先行する研究結果を見直すことから始める予定である. また,これまでに得られた成果と今後得られる結果については,第49回フィンスラー幾何学研究集会(長崎市,12月)と,Meeting of Ramanujan Mathematical Society (インド,Pune市,6月)のフィンスラー幾何学の分科会で発表の予定であり,参加者との意見交換や研究討議を参考に今後の研究を進める予定である.
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Research Products
(8 results)