2013 Fiscal Year Research-status Report
経路の形を緩和した車両配送問題の多項式時間で解けるクラス
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24540140
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小田 芳彰 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (90325043)
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Keywords | 組合せ論 / 離散数学 / 経路問題 |
Research Abstract |
まず,順列の均等分割に関する結果を論文にまとめ,雑誌に投稿した.この結果は,集合{1,2,...,n}上の順列と自然数kが与えられたとき,必要なら2要素を交換することで,一方の部分列の和がkになるように2分割可能というものである.この系として,順列を和がほぼ均等になるように2分割可能であることが保証される.この定理を使って離散幾何学に関する結果も得ているが,これは投稿準備中である.現在,この一般化の均等多分割について取り組んでいる. また,巡回セールスマン問題については,2目的問題について大学院生の大芝氏とともに取り組んだ.2目的巡回セールスマン問題とは各都市間に距離,コストのように2種類の値が割り振られているとき,「悪くはない」解を全列挙する問題である.巡回セールスマン問題自身がNP困難であるため,2目的巡回セールスマン問題はそれ以上に難しいが,Demidenko条件のように巡回セールスマン問題が多項式時間で解ける条件を課すことで,頂点数によっては2目的巡回セールスマン問題の全列挙を行うことが可能である.Ozpeynirci, Koksalan (2010)は,2つの目的関数がいずれもtour improvement techniqueで巡回セールスマン問題が多項式時間で解けることが示されている条件であれば,各辺の値の最大値に依存する多項式時間で2目的巡回セールスマン問題が解けるアルゴリズムを考案している.我々はこれに対し,既存の多目的最適化問題でよく知られているk番目に小さい解を求める手法に注目し,k番目に小さいピラミッド型巡回路を求めるアルゴリズムを考案することで,Ozpeynirciらとは異なるアルゴリズムを作り,計算機実験で比較検討を行った.また,2目的関数がそれぞれSupnick条件,Kalmanson条件のときの,解集合がみたすいくつかの性質を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テーマ1(経路問題(車両配送問題とその一般化問題)の多項式時間で解けるクラス)については,2目的巡回セールスマン問題で2つの目的関数がそれぞれSupnick条件,Kalmanson条件をみたすとき,いくつかの性質が成り立つことを示した.これらはDemidenko条件より強い条件であるが,条件の特殊性により,異なる条件を課した場合でもいろいろな性質が成り立つことがわかったことは興味深いと考えている.これらを当初の目標である車両配送問題に適用した場合にどのような性質が保存されるか等について考える必要があると思っている. テーマ2(経路問題のアルゴリズムによる近似解法への適用)については,巡回セールスマン問題や2目的巡回セールスマン問題における重みの和が最小のピラミッド型巡回路を求めるプログラムができているものの,近似解法についてはまだできていない.これについては急いで行う必要があると考えている. テーマ3(フリップによる交差の解消)については,均等分割の場合はほぼ完全に解決したと考えている.一方,均等多分割や平面上の凸状n点配置に関する問題については未解決のままである.集合分割や順列の均等分割に関する結果を精査することで,継続して均等多分割や平面上の凸状n点配置に関するフリップの問題に取り組む必要性を感じている.
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Strategy for Future Research Activity |
1.多項式時間で解けるクラス:今年度までに得た結果,知見をもとに,車両配送問題やその一般化問題の多項式時間で解けるクラスについて取り組む.特に,2目的最適化問題を考えた場合,巡回セールスマン問題に比べてどの程度同様の性質が保存されるかについて考えることも興味深いと考えている. 2.計算機実験:昨年度サーバ型コンピュータを購入した.重みの和最小のピラミッド型巡回路を求めるプログラムはできているので,種々の問題に対し近似解を得るプログラムの実装に取り組む.また余力があれば,GPUなどを用いたより効率のよいプログラムの実装についても取り組んでみたい. 3.フリップによる交差の解消:まず,均等多分割,特に,均等3分割について取り組む.これまでの結果から(必要なら)2要素により1つめの部分列(分割)が得られる.しかし,ここを貪欲アルゴリズムで行うと,残りの数列を集合として捉えても2分割できないことが一般に生じる.均等3分割を考えるにあたり,均等分割をより強い形で証明し直す必要があるかもしれないと考えている.また,これらの知見を元に,平面上の凸状n点配置に対するフリップの問題についても継続して取り組む. 最終年度にあたり,最終的には経路問題の多項式時間で解けるクラスと近似解法の融合を試み,より実社会に汎用性のある新しいクラスを考案したいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた海外出張のうちの1つができなかったことおよび,サーバ型コンピュータが当初想定していたよりも安価に購入できたこと. 次年度,海外出張を行う予定である.また,国内外での研究打合せの必要性から,積極的に行うことを考えている.
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Research Products
(3 results)