2013 Fiscal Year Research-status Report
単調正規空間をファクターにもつ積空間の定常集合による集合論的考察
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24540147
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
矢島 幸信 神奈川大学, 工学部, 教授 (10142548)
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Keywords | 単調正規空間 / 積空間 / 正規 / コンパクト空間 / △-パラコンパクト / △-正規 |
Research Abstract |
積空間の正規性や被覆性の研究は始まりが1950年以前であるから、70年近くも研究され続けてきた歴史の長い研究分野である。ここでは単調正規空間をファクターにもつ積空間の正規性や被覆性を考察の対象としており、研究代表者が始めた積空間に関する新しい研究課題である。この研究が可能になったのは、BaloghとRudin(現在では両者とも故人)により1992年に発表された論文の中で、単調正規空間の位相構造が定常重合によって明らかにされたからである。彼らの定理を用いて、単調正規空間をファクターにもつ積空間の正規性や被覆性を研究することを思いついた。定常集合は集合論的に具体的な性質をもっており、積空間の正規性や被覆性という位相構造の研究は、必然的に集合論的な考察を必要とする。 今年度は単調正規空間の△-パラコンパクト性と△-正規性というそのスクウェア(2つの同じ空間による積空間)の分離性を研究対象にして研究を進めてきた。これらの分離性の性質は、スクウェアの対角線とそれと交わらない閉集合のある種の分離を意味しており、正規性(交わらない閉集合を交わらない開集合により分離することを意味する)との関連は自然な研究課題となる。また、何より興味があることは、一般順序空間が△-パラコンパクトとなることは2010年に証明されたが、もっと広範で具体的な空間で△-パラコンパクトや△-正規となるものが知られていないことである。 研究代表者は平田康氏との共同研究によって、これらの問題にかなりの解決を与えることができた。その意味で単調正規空間の△-パラコンパクト性と△-正規性は、我々の研究により大きく前進したと言っても過言ではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単調正規空間の単調正規空間の△-パラコンパクト性と△-正規性に関して「単調正規空間がcountable extentをもつならば、どんな△-分離性をもつか?」という問題が、2010年にBuzyakovaとBurkeによって提起された。我々(代表者と平田康史氏)は、「単調正規空間がcountable extentをもつならば、それは△-正規である」ということを証明して、この問題に肯定的解決を与えた。さらに「「単調正規空間がcountable tightnessをもつならば、それは△-正規である」も証明した。これらの十分条件によって、△-正規性について広範かつ具体的なイメージを与えることに成功した。 次にBuzyakovaは2010年の論文で、△-パラコンパクト性をもつ例を与えているが、実はこの例は△-パラコンパクトでないことを示して、彼女の証明が誤りを指摘した。ついでにこの例を使った彼女の結果についても、我々は正しい証明を与えた。 さらに、単調正規空間とコンパクト空間による積空間についての△-パラコンパクト性と△-正規性を考察した。その結果、この積空間においては△-パラコンパクト性、△-正規性および正規性は同値であることを証明した。これには単調正規空間におけるある種の近傍による性質を使うのであるが、この概念は我々が開発したものであり、その有効性をここで示すことができた。いずれにしても、当初からは考えられないくらい豊饒な結果を得ることができ、この分離性の研究は大きく進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究課題については、平田康史氏がさらに研究を進展させており、その研究結果は彼の単著論文として投稿予定である。従って、共同研究としてこの研究課題をこれ以上進める予定はない。寧ろ、研究代表者としては単調正規空間に関する別の研究課題を模索していく予定である。 例えば、D-空間に関する問題は集合論的位相幾何学の中でも最もホットな話題の一つであり、それだけに最も競争の激しい研究分野である。実際、海外のほとんどの一流数学者達が、この方面で研究論文を発表している。その意味では、研究代表者は完全にレイトカマーである。一般順序空間においては、パラコンパクト性とD-空間性は同値である。しかし「単調正規空間がパラコンパクトならば、D-空間か?」という問題は未解決である。一般に一般順序空間は距離空間にならないから、これを単調正規空間に拡張できれば、それは大きな進展といえる。この問題が今までの研究に一番近い問題のように思える。またD-空間という性質は積空間において保存されない。どのような条件においてそれが保存されるのかを考察することも興味深い研究課題である。これを考察する手段としてはDC-likeという位相ゲームによる性質が大きな役割を演じるように思える。日本ではD-空間に関する論文を書いた研究者はこれまで皆無である。是非とも研究代表者により、D-空間について何らかの研究結果を得て、この研究に一石を投じたいと考えている。
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Research Products
(5 results)