2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540188
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
松本 和子 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60239093)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 複素解析 / 多変数関数論 / レビ形式 / 擬凸領域 / 多重劣調和関数 / レビ平坦曲面 / 曲率 |
Research Abstract |
ケーラー多様体上の擬凸領域と複素および実超曲面について, 関数論的立場からの研究を行った. 主要な手段は, 計量から決まる距離関数のレビ形式の表示を用いた詳細な解析である. まず, n 次元複素ユークリッド空間の実超曲面 M の定義関数として, n 個の変数によらない表示を用いて, M までの距離のレビ形式の表示を行った. これは, 今後, 結果を n 次元複素射影空間のフビニ・ストゥディー計量から決まる距離や, 一般のケーラー多様体のケーラー計量から決まる距離のレビ形式の表示を求める際に, 必要となることである. 次に, 曲率がゼロでない多様体の擬凸領域の研究の第一歩として, 2 次元複素射影空間の複素超曲面までの距離のレビ形式の表示に成功した. また, 2 次元複素射影空間の実超曲面までの距離のレビ形式の表示の研究も進展中である. 最大の応用としては, 「n≧2 のとき, n 次元複素射影空間には, 滑らかなレビ平坦実超曲面は存在しないであろう」という問題に対するアプローチに使える可能性がある. このことに関して, フビニ・ストゥディー計量から決まる, 2 次元複素射影空間の実超曲面 M までの距離を d としたとき, d のルートのマイナスという関数 f が M 以外で強多重劣調和になれば, 予想は正しいであろうということが, 国内外の研究者により確かめられつつある. したがって, 最近は, フビニ・ストゥディー計量による実超曲面までの距離関数 (特に, 先に述べた関数 f の性質) の研究に集中的に取り組んでいる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
n 次元複素ユークリッド空間の実超曲面 M について, n 個の変数によらない定義関数を用いて, M までの距離のレビ形式の表示を行うことには成功した. また, n 次元複素射影空間のフビニ・ストゥディー計量による距離の解析方法を見出し, 結果を出し始めることができた. また, 「n≧2 のとき, n 次元複素射影空間には, 滑らかなレビ平坦実超曲面は存在しないであろう」という予想に対しては, 距離関数 d のルートの解析が有効であることが分かってきた.
|
Strategy for Future Research Activity |
ケーラー多様体上の擬凸領域と複素および実超曲面について, 関数論的立場からの研究, 具体的には, 計量から決まる距離関数のレビ形式の表示を用いた詳細な解析を引き続き行う. 一般のケーラー多様体の場合の研究が, 本研究の主テーマではあるが, 特別な場合の複素射影空間のレビ平坦超曲面の非存在予想の問題の解決に向けてのアプローチが, 最近, 国内外で急速に進展しつつある. その中で, フビニ・ストゥディー計量による距離関数の解析は, 最も注目されている. したがって, 今年度は, 特に複素射影空間の距離の解析の研究を優先して行い, 一般のケーラー計量の場合への拡張の準備も進める.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の推進のためには, 国内外の研究者との直接の研究・情報交換が重要である. 研究費の多くは旅費(シンポジウム参加・成果発表・共同研究等)に使用する. また, 今年は, ヨーロッパの研究者を日本に招待し, 国内外の多くの多変数関数論・複素幾何の研究者の集まる国際シンポジウム(葉山にて開催)で講演を行ってもらい, 同時に, 共同研究を行う予定である. 研究に必要な書籍(洋書・和書)の収集のためにも, 研究費を利用する.
|