2015 Fiscal Year Research-status Report
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24540231
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
伊藤 洋一 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (70332757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光学赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は「すばる望遠鏡を用いた前主系列星が伴うジェットの高分散分光観測」について結果をまとめることに注力した。平成23年度にデータを取得した、おうし座分子雲に付随する前主系列星の可視光高分散スペクトルについて、様々な検討を行い議論を深めた。その結果、前主系列星の進化が進むにつれ、ジェットによる質量放出量が減少することがわかった。以前のジェットの研究では、禁制線から視線速度を求め議論を展開することが多かった。一方で、一本または二本の禁制線の等価幅からは、ジェットの温度と密度を一意に決定することができなかった。そこで我々は4069オングストロームにある[SII]の輝線に着目した。この禁制線の等価幅を、従来よく使用されてきた[OI]の二本の禁制線の等価幅と比を取ることにより、ジェットの温度と密度を決定することに、世界で初めて成功した。そして、これらの値からジェットの質量放出率を正確に求めた。ジェットは物質を放出することにより角運動量を宇宙空間に捨てる役目を果たす。角運動量が失われることにより原始惑星系円盤から中心星への質量降着が促進されるなど、ジェットは前主系列星のシステム全体での進化に大きな役割を果たす。この結果についてはIguchi and Itohとして論文を執筆し、Research in Astronomy and Astrophysics誌に発表した。 前主系列連星の高空間分解能観測は、すばる望遠鏡の戦略枠観測が終了したため、新たにデータを取得することはなかった。以前に取得した、おうし座GG星の偏光データについて、ダストの光散乱モデルとの比較を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前主系列星に付随するジェットの可視光高分散分光観測について結果をまとめ、論文として成果を公表した。さらに、西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」の主鏡を7年ぶりに再蒸着するなど、望遠鏡本体や観測装置の整備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から開始した「不規則変光に基づく前主系列の探査」について、研究を進めたい。孤立した星形成やポストTタウリ型星などの発見が期待できる。また研究期間の最終年度として、今後の研究の方針を検討したい。年齢を経た前主系列星の年齢の決定方法の確立、前主系列星の金属量の測定など、基本的かつ重要なテーマについて研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
大学内の競争的資金などが確保できたため、2015年度は科学研究費の支出を抑制できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今までの研究成果をまとめ、海外で開催される研究会で発表を行う。そのため、研究会参加費用や旅費などを科研費から支出する。また、論文の出版にかかわる費用などにも充てる。
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