2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
滑川 裕介 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (00377946)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 計算物理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、格子量子色力学(QCD)に基づく数値計算により、未発見ハドロンの性質を定量的に決定する事である。世界初となる物理点直上の極めて現実に近いシミュレーションによるチャームクォークを含むバリオンの検証及び実験への予言を目指す。 研究目的達成のため、今年度は、まず、チャームクォーク1つを含むバリオン質量を計算した。得られた結果を実験値と比較し、本計算の正当性を確認した。本計算手法の確立は、格子QCDによる検証及び予言の基礎付けを与えるものであり、重要である。本研究により得られたチャームクォーク1つを含むバリオン質量スペクトル値は、実験値と2シグマの範囲で一致した。これにより、計算結果の正当性が確定できた。また、計算精度は2%に達しており、本計算手法の有効性が確認できた。 この結果を踏まえ、次にチャームクォークを2つ含むバリオン質量計算を実行した。チャームクォークを2つ含むバリオンは、Ξcc(3520)のみが実験的発見を報告されている。ただし、この発見を報告している実験グループは1つのみであり、他の実験グループからは否定的な結果が報告されている。Ξccの存在は未だ確定していない。本研究により、Ξccの質量値として 3603(15)(16) MeV を得た。この値は、報告されている実験値 3520 MeV とは有意に異なる。本計算により、既存の実験値 3520 MeV は誤りであり、真の値は 100 MeV 程度高い事を示した。また、Ξccに加え、チャームクォークを2つ及び3つ含む他の未発見バリオンに対する質量予言値を2%の精度で決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チャームバリオン質量スペクトルに関して、研究目的を2%の精度で達成できた。チャームクォーク1つを含むバリオン質量スペクトル及びチャームクォークを2つ含むΞcc(3520)の検証は順調に実行された。加えて、チャームクォークを2つ及び3つ含む他の未発見バリオンに対する質量予言値も決定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる精度向上に努める。現在の計算精度は2%である。既存のチャームクォーク1つを含むバリオン質量実験値は、より高精度に求められている。格子QCDシミュレーションをさらに進め、実験精度に迫りたい。 また、研究対象をチャームバリオン1体系から2体系への拡張を試みる。多体系になると計算精度が落ちるため、有意なシグナルが得られるかどうかは自明ではない。試行錯誤し、多体系の性質解明に挑む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成24年度に導入できなかったストレージを購入し、格子QCDシミュレーションを進める。本来、ストレージ機器は平成24年度に導入予定であった。しかし、タイ洪水の影響でストレージ機器が高騰し、当初計画通りの導入が困難になった。そこで、平成24年度は大規模計算機付属の一時領域にシミュレーションデータを保持した。このデータをストレージに移し、データ保持を確定する。その上で、チャームバリオン計算の精密化を進める。
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