2013 Fiscal Year Research-status Report
2重荷電交換反応を用いた中性子ドリップライン近傍のラムダハイパー核研究
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24540305
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阪口 篤志 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70205730)
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Keywords | 中性子過剰ラムダ・ハイパー核 / 2重荷電交換反応 / 中性子ドリップライン / 大強度中間子ビーム |
Research Abstract |
本研究の目的は高強度の中間子二次ビームを活用し、まだ成功例のない中性子ドリップライン近傍のラムダ・ハイパー核を多数生成し、その核構造を解明することである。 大強度陽子加速器施設 (J-PARC) 50GeV 陽子シンクロトロン実験施設の原子核素粒子実験施設にて昨年後実施した、J-PARC E10 Phase-1実験の初期データ解析を遂行した。データ解析は高エネルギー加速器研究機構の解析センター (KEKCC) および大阪大学に整備済みの計算機資源を用いることで、効率的に実施出来た。初期データ解析で得られた結果を、国際会議、学会講演で公表するとともに、学術論文および大学院生の博士論文としてまとめた。 また、トリガーシステムと各測定器の性能評価を行い、今後実施予定のJ-PARC E10 Phase-2実験に向けた改善策の検討を行った。実験前に行ったトリガー検出器の最適化により、トリガーシステム全体の効率が従来に比べ向上したことが確認出来た。また、トリガーシステムのハードウェアの問題点の理解が進み、その改良により更に効率が改善できる目処がついた。 新たに導入したシンチレーション・ファイバとマルチピクセル光子検出器 (MPPC) を組み合わせた高計数率対応の飛跡検出器について、実験データを用いた解析により時間分解能と位置分解能が評価出来た。また位置分解能を更に向上する解析手法を確立した。実験標的近傍に新たに導入した高計数率対応の半導体飛跡検出器 (SSD) を用い、バックグラウンド事象を大幅に減らす手法が確立出来た。以上の解析結果はPhase-2実験実施の際に、実験デザインに積極的に反映する。 これと並行して、更に高計数率対応のGEMを用いた飛跡検出器の開発を引き続き行った。Thick GEMと呼ばれる検出器要素について測定と解析を行い、動作条件の最適化を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の前倒しでJ-PARC E10 Phase-1実験が昨年度実施出来たため、本年度初めから本格的な実験データ解析が開始出来た。このPhase-1実験では、これまでにない高強度中間子二次ビームを使用したため、従来の実験では見えなかった複数の解析上の問題点が明らかになって来たが、京都大学および東北大学の共同研究者と協力し、これらの問題点の克服に努めることで解決策を考案した。初めて得られた、中性子過剰ハイパー核水素6ラムダ(6ΛH)の探索実験結果を、国際会議、学会発表等で公表し、また学術論文および実験に参加した大学院生の博士論文としてまとめた。 論文公表後は、新たに導入したシンチレーション・ファイバを用いた高計数率対応の飛跡検出器について、更に詳細解析を行った。その結果、この飛跡検出器の位置分解能を更に向上する解析手法が確立出来た。この手法を活用したデータ解析を今後実施する予定である。また、トリガーシステムの性能の詳細解析により、現在のトリガーシステムを高計数率の実験環境で使用する際に、改善が必用な点が明らかになった。また、その原因を特定し、今後の実験に反映する目処がついた。 今回の実験を発展させたJ-PARC E10 Phase-2実験に向けた、Thick GEMを使用した、更に高計数率対応の検出器の開発が順調に進んだ。実験で実際に使用する規格のThick GEM 基板の製作を完了し、その試験を遂行した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度初期データ解析を終了し学術論文にまとめた実験結果と、理論計算との比較を行う。すでに理論研究者との予備的な検討を進めているが、本年度中に実験データと直接比較できる理論計算結果を得て、初期データ解析結果の物理的意味について詳細な検討を行う。また昨年度の研究で改善された解析手法を用いて、更に詳細な実験データ解析を実施する。これにより、中性子ドリップライン近傍の水素6ラムダ (6ΛH) の生成事象を、より高い感度で探索出来る。これらの解析結果を学術論文にまとめる。また、2重荷電交換 (pi-,K+) 反応の反応機構に関連する研究も実施する。反応機構をより深く理解することにより、水素6ラムダの構造の理解も進むと期待する。 トリガーシステム、シンチレーション・ファイバを用いた飛跡検出器および半導体飛跡検出器の問題点は、データ解析でもある程度改善出来ることが分かったが、ハードウェア部分の改良を更に行う。この改良により、より高効率で精度の良い測定が可能となる。またこれと並行して、高計数率環境に強いGEMを用いた検出器の開発を進め、Phase-2実験で使用する飛跡検出器を製作する。 本研究に関連する実験を実施する予定のJ-PARC 50GeV 陽子シンクロトロン実験施設の原子核素粒子実験施設では、昨年度初めに放射線事故が発生した。そのため、今年度は実験開始可能となる時期が例年より遅くなると予想される。実験準備と実験スケジュールに関して不透明な部分があるが、実験施設側や他の実験グループとの協力と調整を行ない、中性子ドリップライン近傍のヘリウム9ラムダ (9ΛHe) を生成するJ-PARC E10 Phase-2を実施し、その結果を学術論文にまとめる。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Search for a bound kaon and pion state2013
Author(s)
T. Kishimoto, F. Khanam, T. Hayakawa, S. Ajimura, T. Itabashi, K. Matsuoka, S. Minami, Y. Mitoma, A. Sakaguchi, Y. Shimizu, K. Terai, T. Sato, H. Noumi, M. Sekimoto, H. Takahashi, T. Fukuda, W. Imoto, Y. Mizoi
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Journal Title
Progress of Theoretical and Experimental Physics
Volume: 2013
Pages: 041C01-1, 6
DOI
Peer Reviewed
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