2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540308
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
星 善元 東北学院大学, 工学部, 教授 (80146117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 晃 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (60004470)
成田 晋也 岩手大学, 工学部, 准教授 (80322965)
根市 一志 東北学院大学, 経営学部, 教授 (90296012)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | GEM / Avalanche / 放射線検出器 |
Research Abstract |
高エネルギー物理実験用位置検出器として、以前は多線式比例計数管やドリフト・チェンバーのような細い芯線を用いた検出器が用いられてきた。しかし、電子の増幅作用のため空間電荷が生じ、これにより電子による雪崩が抑制される。このような空間電荷の効果のため高い検出効率や高い精度での実験が不可能になっている。このような問題点を克服するため半導体微細加工技術を応用したマイクロパターンガス検出器(GEM)の開発がおこなわれている。この検出器はカプトンのフレキシブル両面基板に多数の細孔をあけ,その両面に金属を蒸着し,この両面に高電圧を印加して細孔内の高電場を利用してガス増幅を得るものである。この一個,一個の細孔がガス増幅器として動作するので,芯線を利用した検出器と比べると正イオンによる空間電荷効果が少ない分高計数効率を有している。またGEMは平面上に多数の細孔があるため2次元の位置情報を得ることができる。このGEMの最適化をシミュレーションで求め、55Feによる電荷分布と電子増幅率を中心に実験を行った。実験に用いたGEMの大きさは10cm×10cm,厚さが50μm,100μmの2種類のカプトン上下に銅を蒸着して電極として用い,細孔の径は70μm,間隔は140μmとした。実験はAr(70)+CO2(30)の混合ガスを用いて2種類のGEMをシングルとタンデムにしたときの各印加電圧における増幅度の変化を求めた。始めにタンデムでのドリフト領域、転送領域、信号誘起領域の適正な電場を求めた。その条件下で厚さ50μmではシングルで700V、3000倍、タンデムで560V、25000倍となり、厚さ100μmでは520Vで400倍、460Vで3000倍の増幅率を得る事が出来た。これらの実験による知見からGEMを用いた場合の最適な電圧条件を見いだす事が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画のもとにタンデム構造の最適化を放射線源による電荷分布を中心に実験を行った。始めにGEMの細孔とその形状、細孔の間隔による電場のシミュレーションを行ない、最適な細孔形状と細孔間隔を求めた。GEMの大きさは10cm×10cm,厚さは50μm,100μmの2種類である。このカプトンの上下に銅を蒸着して電極として用い,細孔の径は70μm,間隔は140μmである。実験は2種類のGEMをシングルとタンデムにしたときのドリフト領域、転送領域、信号誘起領域の適正な電場を求め、各GEMへの印加電圧における増幅度の変化を55FeのX線を用いて行なった。実験に用いた混合ガスはAr(70)+CO2(30)である。厚さ50μmのシングルGEMでは印加電圧700Vで増幅率3000倍、タンデムで560V、25000倍となり、厚さ100μmのシングルGEMでは520Vで増幅率400倍、タンデムで460V,3000倍の増幅率を得る事が出来た。また低温でのGEMの低圧,高圧下での混合ガスにおけるGEMの性能評価をする目的で圧力容器の設計を行った。現在実験準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から引き続き、様々な使用条件におけるタンデム構造GEMの特性評価を行う。GEMは、使用混合ガスのガス混合比により検出器の性能が変化するため、検出効率や信号雑音比改善のための混合ガスの最適化を進める。GEMでは、ガス混合比と細孔の高電場により電子がアバランチェへ移行することが分かっているが、早い読み出しや高い計数効率を考えた場合はアバランチェを使用することが望ましい。そこで、GEMによるアバランチェ信号の時間測定を行うため、低雑音・高速応答の前置増幅器回路を設計・製作し、それにより時間応答性・分解能の評価を行う。さらに、液体アルゴンTPCにおけるGEMの使用可能性について検討する。実験では、圧力容器に液体アルゴンを注入し、液体-気体アルゴンが混在した二相状態を作り、液相中で発生した電離電子を気相に引き出し、タンデム構造GEMによって信号を増幅し、その信号電荷特性や時間応答性を評価する。また、極低温環境下でのGEM材料の性質を調べる。以上の研究により、TPC用測定器としてのタンデム構造GEMの可能性を明らかにする。これらの知見によって液体アルゴンを用いたTPCでのGEMの実用化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
タンデム構造GEMの特性評価において、様々な混合ガス比での実験が必要なことから、各種ガスを購入する。また、液体アルゴンTPCでの使用を想定した試験では、液体酸素および液体アルゴンが必要となるため、それらを購入する。さらに、GEMからの信号の時間応答性評価では、早い立ち上がりのパルスを処理できる低雑音・高速応答前置増幅器が必要であり、そのための電子部品を購入する。 一方、共同研究者との研究打合せおよび研究会における研究成果報告のために旅費を使用する。
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