2013 Fiscal Year Research-status Report
量子ビームの相補利用による非調和振動がもたらす新奇物性の解明
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24540336
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
金子 耕士 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (30370381)
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Keywords | 強相関電子系 / ラットリング / 粒子線 / ナノ材料 / 物性実験 / 国際研究者交流(フランス) / 国際研究者交流(アメリカ) |
Research Abstract |
本年度もカゴ状化合物において実現する多彩な物性について、中性子及びX線の相補利用による研究を進めた。この内、研究実施の軸である中性子では、主たる実験施設と想定していた研究炉JRR-3がいまだ停止中のため、海外施設の利用を中心に実施した。 本年度新たに、巨大な非調和振動と熱電性能の強い相関が示唆されるI型クラスレート化合物Ba8Ga16Sn30について実験を開始し、単結晶中性子による詳細な構造解析から、低温で非中心型の非調和振動をしていることを明確にした。またフォノン起源の量子臨界点と超伝導の可能性が示唆されるカゴ状化合物Sr3Ir4Sn13について、非弾性X線散乱実験を行い、構造相転移点に向けたソフトフォノンの探索を進めた。両者について、現在データ解析を進めている。 昨年度までに実施した実験の中で、非調和振動が重い電子状態の形成などに大きな影響を及ぼしている充填スクッテルダイトの中で、同じカゴのサイズを持ちながら非調和性の異なるPrOs4Sb12及びPrRu4Sb12について、詳細なフォノンの分散関係やその温度変化から、両者の低エネルギー非調和モードの振る舞いに顕著な違いがあること、OsとRuの混晶系の研究から、その変化が特定の組成で生じていることを見出した。またカゴ状構造を持つ極めて重い電子系化合物YbCo2Zn20については、中性子散乱実験から磁場誘起秩序相の秩序構造の定量的な解明に成功した。その結果、圧力と磁場で誘起される各秩序相、秩序変数が異なることを明らかにした。また非調和振動と超伝導の強い相関が指摘されているβ-パイロクロア化合物の一つ、CsOs2O6については、超伝導転移点近傍で、熱振動の振る舞いが顕著に変化している兆候を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の主たる施設として想定していた研究炉JRR-3が現在も未稼働のため、予定していた一部の実験については実施することが出来なかった。一方で、海外施設や放射光、J-PARC等を相補的に利用することで、クラスレート化合物や、β-パイロクロアにおけるデータの取得に成功し、順調に成果は上がっている。さらに、今後の効率的な研究遂行に向けた装置開発も着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も研究炉JRR-3の運転計画が未確定な点は、今後の方針を立てる上で大きな支障となっている。一方で、海外施設等に積極的に課題申請し、既に採択されているため、今年度も実験的な進展は担保されている。この内、本年度は、単結晶中性子回折を用いたラットリング振動の可視化を、β-パイロクロア化合物の内残るKOs2O6をフランスILLで実施し、ラットリング転移の解明を目指し、準備を進めている。またSr3Ir4Sn13のソフトフォノンと構造相転移の中性子散乱による研究について着手する他、非中心型ラットリングの存在を明らかにしたI型クラスレートに関して、非弾性中性子散乱から、動的構造の解明を目指し、研究を展開する。 解析等については、これまでに実験を行ったCsOs2O6のラットリングと超伝導の相関、重い電子系物質YbCo2Zn20の磁場誘起秩序相と動的な構造に関して、成果としてまとめることを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の主たる実施場所として想定していた、研究炉JRR-3が再稼働されず、必要な物品費等の支出が抑えられたため。 現在、JRR-3の再稼働状況が不明確なため、代替施設として海外中性子源での実験を予定しており、その旅費として使用する。
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[Journal Article] Instrument Design and Performance Evaluation of a New Single Crystal Neutron Diffractometer SENJU at J-PARC2014
Author(s)
K. Oikawa, T. Kawasaki, T. Ohhara, R. Kiyanagi, K. Kaneko, I. Tamura, T. Nakamura, M. Harada, A. Nakao, T. Hanashima, K. Munakata, H. Kimura, Y. Noda, M. Takahashi, and T. Kiyotani
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Journal Title
JPS Conf. Proc.
Volume: 1
Pages: 014013 1-4
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Development of low temperature 2-axes goniometer system for single crystal ToF Laue diffractometer SENJU2013
Author(s)
Koji Kaneko, Koji Munakata, Yuki Dohi, Yukio Noda, Takayasu Hanashima, Kaoru Sato, Takuro Kawasaki, Ryoji Kiyanagi, Akiko Nakao, Takashi Ohhara, Kenichi Oikawa, Itaru Tamura
Organizer
International Conference on Neutron Scattering 2013
Place of Presentation
Edinburgh (UK)
Year and Date
20130708-20130712