2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540392
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
林 正彦 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (60301040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保木 一浩 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50231296)
海老澤 丕道 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90005439)
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Keywords | トポロジカル結晶 / グラフェン / 電荷密度波 |
Research Abstract |
平成24年度はグラフェンなどからなるナノ構造結晶における弾性的な性質および電気的な性質を解析するための基礎理論の構築を行った。1)ナノ結晶中の歪みに関する数値的研究:本年度は弾性理論に基づいて、形状効果が結晶内の歪みにどのような影響を及ぼすかを数値的に調べるための理論構築を行った。具体的には、近年より重要度を増してきているグラフェンの微細な結晶に対して周辺から引っ張りなどの応力が加えられたときに、結晶内部に生じる歪みを等方弾性体のモデルの範囲内で調べた。この問題は、形状に対応する境界条件の下でストレス関数に関する重調和方程式を解く事によって解が求まる事を見出した。実際にいくつかの境界条件の下で方程式を解き、グラフェンの架橋構造における歪みの分布を見出した。本研究は、今後のグラフェン・ナノ構造を用いたデバイス開発のために役立つ事が期待できる。2)微細構造中の電気伝導に関する基礎研究:グラフェンやリングCDWなど、微細結晶中の電気伝導の研究は、基礎物性の探求の観点からも重要性が高い。本年度はグラフェン・ナノ構造中の電気伝導を計算する理論的枠組みについて研究を行った。具体的には、カーブや分岐といった様々な形状を持つグラフェンにおいて、より自由度の高い数値解法を開拓するために、特異値分解という行列操作に基づく新規解析法の開発を行った。この解法によれば、格子系全体をいくつかのブロックに分ける事によってシュレーディンガー方程式を効率的に解く事ができ、従来の方法よりも様々な形状を扱いやすい事が分かった。本年度はこの方法を用いて、穴の開いた、または曲がった形状のグラフェンリボンについて、電気伝導度をランダウアー公式に基づいて計算した。以上の結果に関しては、投稿準備中であるが、物理学会や研究会においては既に発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初は遷移金属トリカルコゲナイドを中心とした物性の研究を予定していたが、共同研究などの進行に伴い、よりグラフェンに関連する研究の重みが増してきた。グラフェンにおいてもナノ結晶の物性は重要な位置を占めており、本研究に不可欠なテーマであるといえる。その結果として、申請の段階で予定していたリング結晶やメビウス結晶などにおける位相欠陥に関する研究、および劈開(フラクチャー)に関する研究は後回しになってきている。しかしながら、ナノ結晶中の物性という枠組みの中での基礎理論の構築という意味での成果は上がっており、研究計画全体の進行度合いとしては昨年度よりも上がっているといえる。また、後回しになっているテーマについても最終年度内には目処がつけられる段階には来ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には電荷密度波・超伝導・グラフェンという3つの柱を中心としたナノ結晶物理の構築を行い、本研究のまとめとしたい。具体的には、これまでに行ってきた基礎理論に基づき、研究のまとめとしてトポロジカルな形状を持つグラフェンや電荷密度波状態、高温超伝導体における電子物性の研究を中心的に行う。これらに関してはすでに計算のためのプログラムの開発は終わっており、順調に成果が出せると思っている。また、位相欠陥の研究など、後回しにした課題についても、いくつかのアイデアに基づく予備的な研究は行っており、今後の研究に繋げられるだけの成果を挙げたいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文投稿のために掲載料として予定していた金額があったが、投稿が年度をまたいでずれてしまったので、その分が繰り越しになってしまった。また、研究のための相互訪問を予定していたが、研究の遂行上の理由により一部延期した分があるので、その分も繰り越されている。 次年度は最終年度にあたるので、論文投稿を計画的に進める事により、その分の予算を執行したい。これに関しては、すでに準備段階にあり、順調に運ぶと考えている。また、研究のまとめのために、最終的な打ち合わせ及び議論を活発にする事で、旅費の分も執行したいと考えている。
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