2013 Fiscal Year Research-status Report
電子Cold Collisionによる分子極限量子効果の探索
Project/Area Number |
24540423
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北島 昌史 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20291065)
|
Keywords | 電子 Cold Collision / 超低エネルギー電子ビーム / 電子衝突断面積 / 放射光 |
Research Abstract |
低エネルギーの電子衝突過程では、電子のde Broglie波長が長くなるため、量子力学的効果による特有の現象が現れる。衝突エネルギーが 100 meV 程度以下ともなると電子のde Broglie 波長は数十Å以上となり、原子・分子のサイズよりもはるかに大きくなる。このような電子衝突は電子 Cold Collision(冷い衝突)と呼ばれ、量子効果が極めて明確に現れることにより、特異的な物理現象の発現が期待され大変興味深い。本研究は、種々の分子について衝突エネルギーが 100 meV 以下の超低エネルギー電子との衝突断面積の測定を行い、電子 Cold Collision の解明を目的とする。 本年度は H2 分子についての電子 Cold Collision 実験、すなわち、H2分子の回転の最低励起エネルギー近傍以下の超低エネルギー領域を含む電子衝突断面積の測定を行った。測定において、H2 分子の測定では、電子レンズ電極に吸着および吸蔵される分子の影響が大きく、精度の高い実験を行うためには対策が必要であることが判明した。特に、本研究では精密な衝突電子エネルギー校正法が必要であるが、この手法を新たに確立することに成功した。その結果、H2 分子の超低エネルギー電子衝突断面積の測定に成功した。また、10eV近傍に現れる Feshbach 共鳴による微細な断面積構造を、これまでよりも格段に高い精度で測定することに成功した。 これらの、成果については国内外の学会で報告し、また学術誌上で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、当初目標とした実験装置の高分解能化を達成し、既に計画以上の進展を見ている。また、分子標的の実験は、電子レンズ電極上に吸着・吸蔵する分子の影響が予想以上に大きいことが明らかになったが、その対策についても新しい手法を確立した。このため、本年度は平成26年度に実験予定であったH2分子についての電子Cold Collision実験を前倒しで行うことが出来た。 一方、当初予定していた 、直線三原子分子のCO2, COS, CS2, N2Oについての測定については、平成26年度で行うこととした。これは、これらの分子の測定を精密に行うためには、実験装置の改良が必要であることが判明したためである。この装置改良については、真空排気系の増強と電子レンズ系の変更によって問題が解決出来ることまで分かった。本年度は、真空排気系の増強まで達成出来ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の結果、実験装置の高分解能化が大きく進展したため、平成26年度に計画していたH2についての研究が本年度に可能となった。平成26年度では、主に直線三原子分子についての測定を行う。これらの分子の測定を精密に行うためには、実験装置の改良が必要である。これは、非常に小さな散乱角で散乱された電子の影響を排除する必要があるためである。これは、本研究で扱う超低エネルギー領域においては、技術的に難度が高い。本研究では、これまでも対策を施した装置を開発・使用して来たが、装置をさらに改良することが望ましいと考えられる。対策法の検討は、これまでのものをさらに拡張し、電子軌道シミュレーションの結果に基づいた電子レンズ系の再配置により行う。平成26年度前半に装置を改良した上で、放射光実験施設でいくつかの直線三原子分子について、超低エネルギー電子衝突断面積の測定を行い、振動の自由度により発現する量子効果の探索を行う。
|
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Total cross section for electron scattering from He, Ne, Ar, Kr, and Xe at ultra-low energy2013
Author(s)
K. Shigemura, M. Kitajima, T. Odagiri, A. Suga, H. Kato, M. Hoshino, H. Tanaka, and K. Ito
Organizer
The XVII International Workshop on Low-Energy Positron and Positronium Physics and the XVIII International Symposium on Electron-Molecule Collisions and Swarms
Place of Presentation
金沢文化ホール(石川県)
Year and Date
20130719-20130721
-