2013 Fiscal Year Research-status Report
地震波干渉法を用いた地震波速度時間変化の検出の高度化と物理的解釈
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24540449
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中原 恒 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20302078)
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Keywords | 地震波速度変化 / 年周変化 / 地震波干渉法 / 地震波減衰 |
Research Abstract |
常時微動やコーダ波を用いた地震波干渉法により,地下の地震波速度の時間変化の検出を行った.防災科学技術研究所のKiK-net,K-NETの地表観測点で記録された近地地震のコーダ波の自己相関関数を計算し,東日本の太平洋側で浅部地盤の地震波速度が東北地方太平洋沖地震の本震に伴って最大50%近く低下したことを発見した.この要因としては,地下数10mまでの地震波速度変化と考えられた.この成果をアメリカ地球物理学連合秋季大会で発表するとともに,国際学術誌Pure and Applied Geophysicsに投稿して受理された(平成26年4月14日付). 次に,防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)のうち東北地方中央部のデータ解析に着手した.現在のところ,2007年から2010年までの期間で,脈動帯域において観測点間の相互相関を計算したが,2008年岩手宮城内陸地震に伴う変化に加えて,年周成分を含む周期的な変化も見えている.これら周期的変化の原因については引き続き検討を進めていく必要がある. 理論的研究としては,減衰性媒質において地震波干渉法に関する検討を行った.地震波干渉法が厳密に成り立つためにはノイズが空間一様に分布する必要があり,もしそうでなければゴーストが生じる.本研究では,2次元減衰性無限媒質中の非一様なノイズ分布に対する地震波干渉法の具体的表現を求め,いくつかの分布に対しては解析的な表現を得た.これらは,ノイズ源の非一様性の影響を定量的に理解する上で有益である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,常時微動の相互相関関数や自己相関関数を計算し,観測点間のグリーン関数を抽出し,その走時変化を計算することで,地震波速度変化を検出する.そして,地震や火山噴火に伴うステップ関数的な変化に加えて,年周変化成分,トレンド成分などの分離を行い,そのメカニズムについて検討することを目的とする.平成25年度は,2011年東北地方太平洋沖地震に伴う地震波速度変化の検出を行ったが,その成果を国際学会や国際学術誌に投稿できるレベルにまでまとめる作業に予定より少し時間がかかってしまった. 一方,地震波干渉法の理論的考察について,本研究では明確な計画を立てていなかったが,減衰性媒質のおける検討をさらに進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
データ解析を着実に進め,計画どおり研究を進めていく予定である.地震波速度の年周変化成分については,当初の予定通り気象観測データとの比較を進めるとともに,可能であれば地下水位のデータの収集についても検討する.また,この分野の研究は,現在世界各地で活発に行われているため,日本だけでなく海外での研究の状況にも目を配り,必要であれば積極的に国外に赴き,情報収集を行うことも考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
想定と同程度のスペックであるが価格が安いハードディスクアレイを購入したことが主な原因である. 次年度は,消耗品として,アメダス年報のCD-ROMを過去10年分購入し,その中に含まれるアメダス観測点での気温,降水量,積雪の深さの情報と,得られた地震波速度変化とを比較検討する. 旅費は,データ収集と成果発表ならびに情報収集に伴うものである.データ収集は,防災科学技術研究所に依頼する.ハードディスクの受け取りは,データの安全性確保のため,筑波にある同所まで出張する.海外出張として,12月にサンフランシスコで開催されるアメリカ地球物理学連合の秋季大会で成果発表と情報収集を行う予定である.さらに,謝金により,地震観測データの整理を大学院生に依頼する.毎週2時間程度の作業を考えている.また国際学術誌に成果を発表するために論文投稿料を計上する.
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