2013 Fiscal Year Research-status Report
北太平洋海洋表層貯熱量の十年規模変動:東方伝播の強制起源と大気への影響
Project/Area Number |
24540476
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
田口 文明 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (80435841)
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Keywords | 北太平洋十年規模変動 / 海洋表層貯熱量 / 亜寒帯前線帯 / 大気海洋結合モデル / 海洋ロスビー波 / spiciness / 塩分偏差 / 国際研究者交流(米国) |
Research Abstract |
海洋表層貯熱量は、気候シグナルを長期にわたって記憶することから、年々~十年規模変動の予測可能性の鍵を与えると考えられる。北太平洋の十年規模変動に着目すると、良く知られた西方伝播する海面高度偏差とは対照的に、貯熱量偏差はしばしば東方伝播することが報告されている。本研究の目的は、このような伝播特性の違いに着目し、これまで十分に調べられてこなかった海盆の西岸から東岸に向かって東方伝播する貯熱量シグナルの力学とその強制機構及び大気影響を明らかにすることである。平成24年度は、大気海洋結合モデルの長期積分の中で自発的に発生する大気海洋変動の解析から、風系変動によって励起され西方伝播するロスビー波が亜寒帯前線帯の南北シフトを引き起こすことにより、塩分場と密度補償する海洋貯熱量シグナルを生成するという新しい北太平洋十年規模変動メカニズムの仮説を提案した (Taguchi and Schneider, submitted to Journal of Climate, under revision)。平成25年度は、この仮説を検証するための数値実験を大気海洋結合モデルCFESを用いて行った。この実験では、北太平洋中央部における典型的な風系変動を模した理想的な風応力偏差の強制を与えることにより、結合モデルで表現される海洋前線(亜寒帯前線)帯を人為的に南北に変位させた。変位させた前線帯に沿って大きな海洋貯熱量偏差が生成されることが確認され、海洋から大気へ熱放出が促進されることにより局所的な降水が増えることも分かった。これらの結果は、大気から海洋への熱強制だけでなく、海洋循環/海洋前線の変動によっても、顕著な海洋貯熱量偏差が生成・伝播し、さらに熱を海洋から大気に放出し得ることを示唆している点で、北太平洋の十年規模変動のメカニズム理解と予測にとって有益である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」では、大気・海洋再解析データと高解像度海洋大循環・中解像度全球大気海洋結合・モデルの長期積分結果を相補的に活用することにより、以下の4つの課題を掲げた。 課題1: 北太平洋における海洋表層貯熱量の十年規模偏差の伝播メカニズムの解明 課題2: 海洋表層貯熱量の十年規模偏差の強制メカニズムの解明 課題3: 海洋表層貯熱量の十年規模偏差の大気への影響の解明 課題4: 海洋表層貯熱量の十年規模偏差の気候系への影響の解明 平成25年度の研究実施計画では、上記の課題1の成果を国際誌に投稿するとともに、課題2を実施することを目標とした。「研究実績の概要」に記載したように、実際には昨年度のうちに課題1と課題2を実施し論文を投稿した。今年度は、査読コメントに沿った改訂を行った。さらに、来年度実施予定の課題3と課題4の準備となる大気海洋結合モデルを用いた数値実験を行い、その結果を3件の国際学会(Frontal Scale Air-Sea Interaction Workshop、6th OFES International Workshop, Ocean Sciences Meeting 2014)と2件の国内学会(日本海洋学会 2014 年春季大会他)で発表した。また 、研究の目的に掲げた「十年規模変動」に関連した4編の共著論文(Chiba et al. 2014, Di Lorenzo et al. 2014, Qiu et al. 2014, Miyasaka et al. 2014)と海洋前線の大気への影響に関する2編の共著論文(Sasaki et al. 2013, Kuwano-Yoshida et al. 2014))を出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 研究計画の課題1と課題2について提唱した仮説の観測データによる検証 大気海洋結合モデルの結果をもとに提唱した北太平洋海洋表層貯熱量十年規模偏差の伝播及び強制メカニズムに関する仮説を、Argo フロートによる海洋観測データを用いて検証してゆく。Argoフロートは、海面から深さ2000mまでの間を自動的に浮き沈みしながら水温・塩分を観測しており過去10年以上にわたってデータが蓄積されている。研究代表者が所属する海洋研究開発機構を始め複数の研究機関で公開されている格子化再解析データを用い、亜寒帯前線帯の南北変位に伴う密度補償した水温・塩分偏差の生成、及びその東方への伝播が捉えられているかを確認する。 2. 研究計画の課題3「 海洋表層貯熱量の十年規模偏差の大気への影響の解明」の継続 今年度実施した大気海洋結合モデル(CFES)を用いた感度実験の結果を解析し、海洋前線変動に対する太平洋大気海洋結合系の応答を詳細に解析し、成果を論文にまとめ国際誌に投稿する。 3. 研究計画の課題4:「海洋表層貯熱量の十年規模偏差の気候系への影響の解明 」の実施 大気海洋結合モデル(CFES)の長期積分、感度実験、Argoフロートデータを用いて、海洋貯熱量変動と海洋モード水変動の関連について調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、出版を予定していた投稿論文の査読プロセスが長引き、論文投稿料(~400,000円)と別刷料(~100,000円)の支払いを行わなかった。また出張旅費の一部を招待講演により先方負担となったために、研究費の次年度使用額が発生した。 平成26年度中には、当該論文が受理される見込みであり、論文投稿料と別刷料(~500,000円)の支払いを予定している。また、平成25年度に実施した数値実験のデータを格納するために、データ記憶装置(~450,000円)の購入を予定している。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Synthesis of Pacific Ocean climate and ecosystem dynamics2013
Author(s)
Di Lorenzo, E., V. Combes, J.E. Keister, P.T. Strub, A.C. Thomas, P.J.S. Franks, M.D. Ohman, J.C. Furtado, A. Bracco, S.J. Bograd, W.T. Peterson, F.B. Schwing, S. Chiba, B. Taguchi, S. Hormazabal, and C. Parada
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Journal Title
Oceanography
Volume: 26
Pages: 68-81
DOI
Peer Reviewed
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