2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540478
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大山 伸一郎 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (20444424)
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Keywords | 国際研究者交流 / ノルウェー / EISCAT / 北極域 / 熱圏 / 電離圏 / オーロラ / リモートセンシング |
Research Abstract |
本研究目的は、脈動オーロラに伴い熱圏風速が激しく変動する現象の発生機構を解明することである。脈動オーロラとはサブストーム(「オーロラ爆発」とも呼ばれる真夜中付近で急にオーロラ光強度が増加し爆発的に広がる現象)発生後の夜中から明け方にかけて必ず発生する現象である。数秒間隔の明滅やパッチ形状を維持して移動する特徴がある。これまで脈動オーロラと磁気圏・電離圏現象との関係は広く研究されてきた。しかし、熱圏との関係に着目した研究は無く、2010年に発表された本科研費代表者の論文(以降、論文2010と表記)で紹介された2例が世界で最初の報告であった。論文2010はパッチ形状をした脈動オーロラで囲まれた暗い部分で風速変動が発生する特徴を紹介した。本科研費を用いた研究ではこの特徴の発生頻度の確認と発生機構の解明を目指している。 熱圏風速の測定にはノルウェーのトロムソにあるファブリペロー干渉計(FPI)を用いる。2009年1月から2013年3月までのFPIデータを検証し29例を抽出した。まだ全ての詳細解析を終えていないが、内7例について論文2010の結果と同じ特徴(暗い部分でのみ風速変動が発生)が見られた。2014年1-3月に欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダーとFPI等光学測器を用いたキャンペーン観測を実施した。特に2014年1月29-30日の実験では、過去の特徴と同じくパッチ状脈動オーロラの暗部で風速変動が発生している時の電離圏をEISCATレーダーで測定することに初めて成功した。 これまでの研究活動で(1)風速変動はパッチ状脈動オーロラの暗部に限定的、(2) 暗部には風速変動を引き起こす大きなエネルギーが注入されている、ということが分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H25年度は観測実験および過去のデータ解析を行い、「研究実績の概要」の章末に述べた知見を得た。これらの結果は事象が偶発的ではなく、サブストームという一般的な現象に恒常的に付随することを示唆した。サブストームの後に脈動オーロラが必出することと、風速変動を起こすにはかなりのエネルギー量が必要であること、この現象が認知されてこなかったことを考えあわせると、オーロラ活動で地球超高層大気に注入されるエネルギー量をこれまで低く見積もってきた可能性がある。もしそうならエネルギー量の過小評価は磁気圏-電離圏-熱圏結合研究の全体に影響を与え得る事であり、新しい研究課題を提案する結果と言える。この点を理由に評価を(1)とした。 発生頻度を調べる解析で29例の事象を選出した。これまでに7例の詳細解析を行い、論文2010で報告された風速変動と脈動オーロラの特徴がどの事象にも存在することが分かった(残りの詳細解析はH26年度中に完了可能と考えている)。 2014年1-3月にキャンペーン観測を実施し、オーロラ・電離圏・熱圏の総合観測データを取得した。この中には脈動オーロラ発生時の測定値も含まれている。電離圏と熱圏パラメータがパッチ状脈動オーロラの明部と暗部でどのように異なるのか調べることが可能になった。中でも電離圏温度はエネルギー注入量の指標となる可能性があり、風速変動を引き起こす物理機構の解明にとって大きなヒントになる。 サブストーム発生から脈動オーロラ出現に渡る電離圏の発達過程について、EISCATレーダー測定値の統計解析を行い、J. Geophysical Research誌に投稿した(現在査読中)。これは電離圏の高度による発達過程を示した最初の結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で述べた29例の内、詳細解析が済んでいない22例の事例を解析して事象の発生頻度を調べる。特に「パッチ状脈動オーロラの暗部で風速変動が発生する」という特徴の再現性を調べる。この結果を論文誌に投稿する。2014年1-3月のキャンペーン観測データを用いて電離圏と熱圏がパッチ状脈動オーロラの明部と暗部でどのように異なるか検証する。解析結果を、日本地球惑星科学連合2014年大会(04/28-05/02 神奈川県横浜市)、Asia Oceania Geosciences Society 2014 meeting(招待講演; 2014/07/28-08/01 札幌)、第136回SGEPSS総会(10/31-11/03 長野県松本市)、American Geophysical Union 2014 Fall meeting(12/15-19 米国サンフランシスコ)で発表する。査読中の論文の修正を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年12月に予定していた海外出張(国際学会と研究打ち合わせ)を行わなかったため、その旅費相当分の未使用が生じた。 旅費(海外:74万円、国内:23万円)に97万円、物品購入費に3万円、その他(論文投稿費)に20万円の支出を予定している。海外出張は、トロムソへの観測出張、米国でのAGU学会参加である。
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[Journal Article] Decrease in sodium density observed during auroral particle precipitation over Tromsoe, Norway2013
Author(s)
Tsuda, T., S. Nozawa, T. D. Kawahara, T. Kawabata, N. Saito, S. Wada, Y. Ogawa, S. Oyama, C. M. Hall, M. Tsutsumi, M. K. Ejiri, S. Suzuki, T. Takahashi, T. Nakamura
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Journal Title
Geophysical Research Letter
Volume: 40
Pages: 4486-4490
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Auroral fragmentation due to macroscopic pressure-driven instability2013
Author(s)
Shiokawa, K., A. Hashimoto, K. Sakaguchi, Y. Ogawa, E. Donovan, E. Spanswick, M. Connors, Y. Otsuka, S. Oyama, S. Nozawa
Organizer
American Geophysical Union Fall meeting 2013
Place of Presentation
San Francisco, USA
Year and Date
20131209-20131213
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[Presentation] Auroral fragmentation2013
Author(s)
Kazuo Shiokawa, Ayumi Hashimoto, Kaori Sakaguchi, Yasunobu Ogawa, Eric Donovan, Emma Spanswick, Martin Connors, Yuichi Otsuka, Shin-ichiro Oyama, Satonori Nozawa
Organizer
地球電磁気・地球惑星圏学会
Place of Presentation
高知
Year and Date
20131102-20131105
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