2012 Fiscal Year Research-status Report
西南日本の白亜紀弧火成活動とプレートの沈み込み・付加との関連
Project/Area Number |
24540490
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
今岡 照喜 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30193668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
君波 和雄 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (20127757)
永嶌 真理子 山口大学, 理工学研究科, 講師 (80580274)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 白亜紀 / ランプロファイアー / アダカイト / アジア大陸 / Sr-Nd同位体 / K-Ar年代 / 高MG安山岩 |
Research Abstract |
近畿地方に分布する約100Maのエピソディックなマグマ活動で形成された篠山層群中のアダカイトとそれに伴う高Nb玄武岩,京都・宇治市周辺の丹波花崗岩質岩,Nbに富む角閃石スペッサルタイト岩脈およびアダカイト質丹波花崗岩質岩のK-Ar年代と地球化学的特性について検討が終了した.その結果,篠山アダカイトは,①初生的なスラブメルトよりもMg,Cr,Ni含有量が高いこと,②高SiO2アダカイトに区分されること,③単斜輝石の組成から,マントルとのNa交代作用を経たスラブメルトに由来すると考えられる.③角閃石のK‐Ar年代測定結果は,篠山アダカイト質安山岩で99‐104 Ma,角閃石スペッサルタイト岩脈で100-109 Ma,丹波花崗岩質岩で102-107 Maであった. 篠山のアダカイトの化学組成変化は,分別結晶作用よりもむしろ起源物質の部分溶融度の違いを反映していると考えられ,篠山アダカイトを生成した起源物質の溶け残り岩にはザクロ石が存在することが示唆される.さらに篠山アダカイト中のNa, Tiに富む単斜輝石ゼノクリストはNa交代作用の産物と考えられる. Na交代作用は若くて熱い海洋プレートが沈み込む時に起こるとされており(Kepezhinskas, 1995),日本列島各地で報告されている100 Ma頃のアダカイトやHMAが,非常にホットな環境で生じたと推定されていることと調和的である.しかし,南部秩父帯や四万十帯の海洋プレート層序を考慮すると,100Ma頃の海洋プレートはスラブ溶融を起こすほどには若くなかったと推定される.近年,東アジアにおいてジュラ紀の低角沈み込みと白亜紀初期におけるスラブのロールバックが推定されている.近畿・中国地域における100Maの火成活動開始は,スラブのロールバックとそれにともなうアセノスフェアの上昇に起因する可能性があることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画は,100 Ma火成岩およびマントルゼノリスの岩石学・年代・同位体・テクトニクスの検討であった。そのための試料採集と岩石記載,全岩および鉱物の化学分析,K-Ar年代測定,Sr-Nd同位体測定,岩石成因論の検討,アジア大陸東縁の年代コンパイル,リソスフェアマントルの特性の検討,および100Ma頃に沈み込むスラブの年代の推定に関する検討は終了した。とくにアジア大陸東縁の年代コンパイルは白亜紀アダカイトやHMAの成因を明らかにする上で前弧から背弧における熱構造の理解が不可欠なことから重要であるが,君波と今岡は今年度得られた年代を整理するとともに2011年以降に掲載されたアジア大陸東縁地域の論文に注目し,年代ヒストグラムを改訂した.この成果については,平成24年7月25日にTeraNova誌上に論文を投稿し,一度コメントが戻り,返却したが,その後の出版社の対応が遅れている。また京都・宇治地域の亜紀アダカイト,高Nb玄武岩(HNB),スペッサルタイトの岩石学,年代学,同位体データ,さらにスペッサルタイト中にマントルゼノリスの検討も終了し,現在論文原稿を著者間で検討中である。その成果は上述したとおりである。まとまり次第,国際誌に投稿の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究を進める過程で,奄美大島や福岡県平尾台地域に産するランプロファイアーは日本列島の前期白亜紀火成活動を考える上で,重要であることが分かった。とくに前者は103.8 MaのK-Ar年代が遅沢ほか(1983)によって報告されていることから,筆者らの進めてきた京都・宇治地域や山口地域の角閃石スペッサルタイト岩脈との関連は重要である。そこで,年度末に試料採取を行った。これらについても,今後岩石記載,全岩および鉱物の化学分析,K-Ar年代測定,Sr-Nd同位体測定,岩石成因論の検討を行う。さらに,平成24年度までの研究で前期白亜紀の火成活動やテクトニクス,さらにはアジア大陸との関連の概要が把握できたので,当初の計画に沿って今後は後期白亜紀の研究にシフトしていく予定である。具体的には,後期白亜紀には前期白亜紀とはちがって日本列島,とくに西南日本では大規模珪長質火成活動が行われたので,そのテクトニクスを明らかにするためのケーススタディーとして中国地方の代表的な大規模珪長質岩体である匹見コールドロンの地球化学的特性,Rb-Sr同位体比とアイソクロン年代について検討する.白亜紀火成活動のテクトニックな背景を考察する上で,マグマフロントの移動を明らかにすることは重要である.さらに今岡は中国・四国地方の火成岩について多数の年代測定結果を公表してきているが,精密なマグマフロントのシフトを明らかにするためには,一部のデータを補完する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品購入計画はなく,化学分析用の白金坩堝の改鋳費用,EPMA分析試料作製のための天然ダイヤモンドペースト,論文執筆のためのプリンタートナーを消耗品として計画している。研究成果を日本地質学会と日本鉱物学会で発表するための旅費のほか,中国地方,九州地方の調査旅費や岡山理科大学での年代測定のための旅費を申請している。そのほか,薄片作成のための実験補助やカナダのActlabsへの微量元素分析依頼費用と論文別刷代金を申請している。
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Research Products
(7 results)