2014 Fiscal Year Annual Research Report
X線トモグラフと地球化学指標に基づく新しい炭酸塩溶解指標の確立
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24540505
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
木元 克典 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任技術研究員 (40359162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 理 東北大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60222006)
入野 智久 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 助教 (70332476)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 浮遊性有孔虫 / 骨格密度 / MXCT法 / 海洋酸性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は北太平洋観測点K2に係留したセジメントトラップの中でもっとも深い水深に設置された浮遊性有孔虫グロビゲリナ・ブロイデスの骨格密度解析を終了した。これにより浅海(150m)から深海(5000m)まで4層全ての結果が出揃った。 本研究で得た結果を総括する。グロビゲリナ・ブロイデスの骨格密度変化は顕著な季節性をもち、低pH、高全炭酸環境下の冬季の12月~4月にもっとも溶解が進行した。逆に高pH、低全炭酸環境下である夏場の5~11月までは骨格密度の変化は小さく、高密度の殻を保存していた。年間を通した殻密度の変化は、海水の炭酸系の変化と一致し、また各水深の結果は整合的であることから、殻密度低下は浮遊性有孔虫の死後、沈降中に溶解したものではなく、殻を形成する際に密度の異なる殻を形成した可能性を強く示唆する。一方、冬季には殻の大きさが小さいが殻密度が高く、逆に夏季には殻の大きさは大きいが殻密度が低下するという明瞭な逆相関の関係も同時に認められた。つまり浮遊性有孔虫の殻密度には成長速度に関係する反応速度論的要素が介在することを示唆している。浮遊性有孔虫殻の切片を作成し、電子顕微鏡で観察を行った結果、骨格密度の違いをつくる主な原因は骨格の2層に分かれた結晶構造であることが判明した。内側層は細かい顆粒状の炭酸塩粒子であり、空隙が多くもろく壊れやすい。一方最外殻は自形結晶の菱状構造であった。つまり低pH、高全炭酸環境下で形成された内側層こそが骨格密度低下を示す直接的な原因であることが判明した。すなわち冬季には本来頑丈な殻が作られるはずが、周囲の炭酸系の変化により内側層の形成能力になんらかの変調をきたし、殻密度の低下を招いていることを示した。つまり海洋酸性化が本来の生物鉱物化作用を上回り、骨格形成に強く関与していることを示したことから、海洋酸性化が原生生物への明確な脅威となることを突き止めた。
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Remarks |
マイクロフォーカスX線CT(MXCT)にてスキャンした浮遊性有孔虫の画像を掲載した。さらに本研究で得た成果を今後加えて行く予定。
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Research Products
(10 results)