2013 Fiscal Year Research-status Report
海洋シアノバクテリア由来環状デプシペプチドグラッシィペプトリド類の全合成研究
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24550064
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
中村 豊 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (20267652)
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Keywords | 合成有機化学 / 天然物化学 / フェイズタグ法 / 迅速合成 |
Research Abstract |
グラッシィペプトリド類の迅速かつ効率的な合成を行うために、昨年度に保護基として機能することを明らかにした疎水性のトリチル(Trt)基を用いて、グラッシィペプトリド類を構成する2つのチアゾリン環を含むテトラペプチドの合成ついて検討を行った。ただし、オクタデシルシリル(ODS)シリカゲルを用いた固相抽出(ODS-SPE)もしくは極性溶媒を添加することにより結晶として析出させて保護体と非保護体の分離を行う際の効率を高めるためにトリチル基に長鎖アルキル基としてドコシルオキシを2本導入することにした。 まず、保護化剤となる4,4’-ジドコシルオキシトリチルアルコールは、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンをブロモドコサンでジアルキル化後、臭化フェニルマグネシウムで処理することにより収率よく得ることができた。ついで、N-Fmoc-システインアリルエステルにジクロロメタンとジクロロメタン中で、保護化剤と反応させると対応するS-疎水性Trt保護体が高収率で得られた。さらにFmocストラテジーでN末端側にFmoc-D-アミノブタン酸、Fmoc-S-Trt-システイン、Fmoc-D-N-メチルフェニルアラニンを順次縮合し、テトラペプチドを合成した(6工程収率83%)。この際、疎水性Trt保護合成中間体はODS-SPEにより簡便に分離することができた。最後にテテオラペプチドをジクロロメタン中、Hendrickson試薬で処理することによりチアゾリン化を行うと、目的化合物であるグラッシィペプトリド類共通ビスチアゾリン体を57%で得ることに成功した。このように新規に開発した疎水性トリチル基がチオール基の保護基として利用できるばかりでなく疎水性タグとして機能することを明らかにし、グラッシィペプトリド類の迅速合成に向けて、共通骨格となるビスチアゾリンテトラペプチドの迅速な合成法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書における平成25年度の研究実施計画では、開発した疎水性保護基を用いてグラッシィペプトリドFとGの迅速合成の検討を行う予定であった。また、当初は、アミノ基の保護基として汎用されている保護基の他、ヒドロキシ基の保護基4つ疎水性版を考えており、さらに様々な鎖長のアルキル基を1~3本導入したものの合成し、疎水性保護基としても評価を行う予定であった。しかしながら、これまでに検討を行った疎水性保護化剤はBoc基、Fmoc基およびTrt基の3つであり、かつフェイズタグとなる炭化水素鎖は保護体の分離のしやすさを考慮してオクタデシル基よりも長いものに限定されていた。今年度は、フェイズタグとしてアルコキシ型で2本のドコシル基を導入したトリチル保護基を用いてグラッシィペプトリド類の共通骨格となるビスチアゾリンテトラペプチドの合成について検討を行い、疎水性保護基の特性を利用して簡便・迅速に合成中間体を分離でき、効率的に標的分子を合成できることを示すことができた。しかしながら、グラッシィペプトリドFとGの全合成までには至っていない。 以上のことから、当初の研究目的の達成度という点では若干の遅れは認めざるを得ない。この遅延は以下のことに起因するものと考えている。第一に、保護体の分離条件等を精査しながらの検討であること、第二に、疎水性保護生成物を如何にして純度よく合成するかが鍵であり、反応条件等も詳細な検討が必要であることである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、最終年に当るので、まずはグラッシィペプトリドFとGの全合成の達成を目標に研究を行う。まずは、25年度に疎水トリチル保護基を利用して、グラッシィペプトリドFとGの共通骨格の合成を達成したので、全合成に向け、このユニットのグラムスケールの合成を行う。その際、反応混合物に極性溶媒を加えて疎水性保護体を析出させることによって分離を行う。また、グラッシィペプトリドFとGの合成計画は当初の予定通り2つのチアゾリン環は最終段階で構築することとし、まず、その前駆体となる環状デプシチオペプチドを合成する。環状デプシチオペプチドは、2つのフラグメント(AとB)に分割して合成し、これら連結後、両末端の保護基を除去し、マクロ環化することで得られる。フラグメントAはプロリンアリルエステルから疎水性Fmoc基を用いたN端伸長法で、フラグメントBは25年度に合成したテトラペプチドユニットにジペプチドユニットをフラグメント縮合で連結することで調製できるものと考えられる。各段階の疎水性保護体は反応混合物に極性溶媒を加えて疎水性保護体を析出させることによって分離を行うようにし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことなく反応を進める。この検討によって、有機合成で多くの時間と労力を費やしている分離・精製段階を大幅に省略することによって迅速に標的化合物を入手できるかを明らかにする。 さらに、非天然型のグラッシィペプトリド類のコンビナトリアル合成を目指して鎖長の異なる疎水性保護基を用いたミックスチャー合成への展開の可否についても基礎的知見の集積を行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は前年度に引き続き、疎水性保護化剤の合成と保護基として利用できるかの可否ならびに疎水性保護基としての機能の確認を標的化合物の合成を兼ねて小スケールで検討を行った。結果的に試薬類など消耗品の購入量が少なかったために次年度に繰り越されることになった。 平成26年度はグラッシィペプトリド類の合成を目指してグラムスケールでの合成に着手するために大量の試薬類・溶媒などの消耗品を購入する必要がある。また、グラッシィペプトリド類には高価な非タンパク構成アミノ酸が含まれていることから、これらの購入費用に充てることになる。
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Research Products
(1 results)