2012 Fiscal Year Research-status Report
アスベスト分解生成物中の硫黄の酸化状態同時分析法の研究
Project/Area Number |
24550103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
田端 正明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40039285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 潤 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (80253582)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アスベスト / アスベスト常温分解 / 多硫化カルシウム / 硫黄化合物 / 硫黄の酸化状態分析 / X線吸収端近傍構造分光 / XANES spectroscopy |
Research Abstract |
①硫黄、水酸化カルシウムを水に懸濁し、上澄み液より多硫化カルシウム溶液を調製した。 ②小型ボールミルポットに標準アスベスト(クリソタイル、クロシドライト、アモサイト)を取り、多硫化カルシウム溶液を加え、密封状態で磁球または鋼球と一緒に10時間から125時間回転攪拌(直径280mm、回転数 45回/min)した。反応物を5時間間隔で取出し、風乾後アスベスト分解生成物を同定した。 ③粉末X線回折の結果、アスベスト由来のピークは消失し代わりに炭酸カルシウム(カルサイト)、硫黄、硫酸カルシウムが生成した。残留するアスベスト含有量は10時間以上の処理によって0.1%以下(環境基準)であることを位相差偏光顕微鏡分散染色法によって確認した。走査型電子顕微鏡(SEM)によりアスベスト繊維は見られず、かたまりとなっていた。更に、大きな束状繊維には小さな結晶が観察された。 ④九州シンクロトロン光施設(BL-11)で処理後の標準硫黄化合物の吸収端近傍構造(XANES)スペクトルを測定した。硫黄は次の3種の酸化状態で混在していることが明らかになった。単体の硫黄、亜硫酸イオン、硫酸イオンである。アスベスト処理によって、硫黄は酸化数が0,4,6と増大していることが分かった。長時間処理するとほとんどNa2SO4となった。 ⑤多硫化カルシウム溶液によるアスベストの分解の要因は、アスベスト繊維に浸透した硫黄含有溶液がアスベスト結晶内で酸化されイオン半径の大きな硫酸イオンが生成し、岩石の風化と同じでアスベスト結晶の破壊であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の結果より、アスベストの分解と硫黄の酸化状態の変化を明らかにすることができた。 ①標準アスベストを用いた結果であるが、多硫化カルシウム溶液との撹拌により常温でアスベストを分解することができた。分解の程度は、偏光顕微鏡分散染色法で環境基準(0.1%以下)を達成することができた。分解生成物には粉末X線回折からアスベスト由来の構造は消失していた。代わりに硫黄酸化物と炭酸カルシウムが生成した。 ②アスベスト分解過程で硫黄は徐々に空気酸化され、生成した硫酸ナトリウムがアスベストの結晶を破壊していることが明らかになった。 ③アスベストの常温分解反応において、硫黄が徐々に酸化されていることを知ることができたことは、硫黄の新しい状態分析の発展に寄与すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
標準アスベストの結果を参考にして、アスベスト含有建材(吹き付けアスベストとスレート)を対象に、多硫化カルシウムによるアスベストの分解の可能性を調べる。 更に、反応過程における硫黄の酸化状態をXANES法で決定する。 アスベスト含有建材では、アスベスト以外の物質がアスベスト繊維分解反応及び硫黄の酸化状態に影響を及ぼすと考えられるので、分解反応遅延効果と硫黄の酸化状態との関係を明確にする。 処理条件によって分解生成物が乾燥されにくくペースト状になったり、液体のままであったりする。そのような試料はホールダーに塗付できないので、硫黄の汚染の少ない袋に入れて、液体状態や流動固形状態でもXANESスペクトルが測定できるようにする。これにより、アスベスト処理液(多硫化カルシウム溶液)中の硫黄の酸化状態も知ることができる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アスベスト分解剤、アスベスト分解ボールミル、アスベスト含有標準建材の購入 アスベスト分解生成物の同定(X線粉末回折、走査型顕微鏡(SEM)による観察) 分解処理後の残留アスベストの定量(偏光顕微鏡分散染色法によるアスベストの定量、委託分析)。 シンクロトロン光研究センター(佐賀県、鳥栖市)でのXANES測定。 研究成果の国内外での成果の口頭および論文による発表。
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