2013 Fiscal Year Research-status Report
フイブリノゲン非構造領域とN結合糖鎖によるフイブリンゲル形成の制御機構の解明
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24550245
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
窪田 健二 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (40153332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
行木 信一 群馬大学, 理工学研究院, 准教授 (80302959)
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Keywords | フィブリノゲン / Bβ鎖N末端領域 / NDSK / Fragment-D / SPR / ラテラル凝集 / フィブリン重合 |
Research Abstract |
本年度は、①Fbg断片試料間の相互作用解析と②変異体試料の調製、を当初計画としていたが、前者に集中して研究を行った。後者については調製プロトコルの最終的確立に向け研究を進めている。 Fibrin重合におけるBβ鎖N末端領域の役割を解明するため、遺伝子工学的にBβ鎖N末端領域Fragment(BβN)を作製し、SPRによるBβNの相互作用の検討、ならびに濁度測定を用いたBβNの添加によるFibrin重合過程の特性解析を行った。 SPR測定の結果、BβNおよびFragment NDSKとFragment D(Frag-D)が濃度依存的に相互作用すること、E領域の中でも特にβNとFrag-Dとの相互作用が認められ、Fibrin重合におけるBβNとD領域の相互作用の関与が確かめられた。 濁度測定の結果、B:b相互作用とは別に、D領域に対するBβNの相互作用がラテラル凝集に関与していることが示された。BβNおよびBβNからFpBを切除したβNの添加により同様の阻害効果が見られ、BβNの中でも特にB knob以外の部位での相互作用が明らかとなった。また、BβNの二量体の(BβN)2、(βN)2の添加効果の解析から、BβNがD領域と直接相互作用していることが示された。 以上より、ラテラル凝集におけるBβ鎖N末端領域の相互作用の重要性、ならびにβ鎖N末端領域とD領域との相互作用がFibrin重合に大きく寄与していること、この相互作用がFibrin線維形成の実質的な因子となっていることが示唆された。また、Bβ鎖N末端領域のD領域との相互作用が実現されるためには、Protofibrilの生成によるD領域のコンフォメーション変化が必要であることから、Fibrin重合がProtofibrilの生成・成長とそれに引き続くラテラル凝集という2段階のプロセスで進行することが裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の①に関しては、前年度のSPRによる前実験を再現するだけでなく、より明確な結果が得られたと同時に、その結果と整合する濁度測定の結果も得られ、ラテラル凝集におけるBβ鎖N末端領域の相互作用の重要性、Bβ鎖N末端領域とD領域との相互作用がFibrin重合に大きく寄与していること、そしてこの相互作用がFibrin線維形成の実質的な因子となっていることが分かった。また、Bβ鎖N末端領域とインタクトのFibrinogen分子との混合系では凝集が認められず、Bβ鎖N末端領域のD領域との相互作用が実現されるためには、Protofibrilの生成によりD領域のコンフォメーション変化が惹起される必要があることが示唆された。この結果、Fibrin重合がProtofibrilの生成・成長とそれに引き続くラテラル凝集という2段階のプロセスで進行することが示され、Fibrin重合メカニズムの解明にとって極めて重要な知見が得られ、①の計画は十分に目的を達成できたと考えられる。 一方、当初計画の②については、リシルエンドペプチダーゼを用いたN結合糖鎖の単離調製を進めFbg断片試料とのSPRを用いた相互作用解析を行う段階となっており、Fbg重合に果たす糖鎖の役割の解明につながると期待できる。この糖ペプチドフラグメントが非常に吸着しやすいため、精製純度を高め、SPR測定の改良を現在進めている。全長型のFbg試料の調製については、25年度の研究で①のテーマに注力したため少し足踏みしているが、Mimic SF9細胞系での26年度での完了を目指している。 以上のことから、当初の計画に対して、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①単離調製したN結合糖鎖のFbg断片試料との相互作用解析: リシルエンドペプチダーゼを用いることにより、リジン残基の部位で特異的にFbgのペプチド鎖を限定分解し、N-結合糖鎖を含むペプチド断片を得ている。N-結合糖鎖を含むペプチド断片はモル質量が小さいため、アナライトとしてSPR測定に用いるのは検出感度の点で好ましくない。そこで、このペプチド断片を精製・純化したものをリガンドとするSPR測定により、Fbg断片のどの部分と相互作用するのかを確かめる。アナライトとしては、Bβ鎖N末端領域、Frag-Dのほか、別個に作成しているαC鎖、NDSK、Frag-XおよびインタクトのFbgを計画している。 ②変異体試料の調製と凝集特性解析: 変異体試料の調製として、25年度の研究により得られた成果であるBβ鎖N末端領域のD領域との相互作用の存在、ならびにBノブ以外の部分での相互作用部位の存在を基に、変異をBβ鎖N末端部(具体的には、N末端部から20残基目以降)の3か所(程度)のアミノ酸をアラニンに置換したもの3種類を作製し、それらのFrag-Dとの相互作用解析から、フィブリン重合における重要部位の特定を進める。さらに、その結果を基に全長型のフィブリノゲンを昆虫細胞を用いて作製し、断片間の相互作用、ならびにN結合糖鎖が全長型の場合にどのように発現するかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越しを生じた理由は、全長型変異体Fbg試料の調製にバキュロウイルス-昆虫細胞(Mimic SF9細胞)を用いるために、大量培養のための試薬類、また精製のためのモノクローナル抗体の購入が必要でそれらが比較的高価なため、これらの使用を予定している26年度の研究の遂行に相応する予算を保持していくためである。当研究室ではMimic SF9細胞系での実験の経験がまだ少ないため、途中での実験条件の調整を何回か行う必要があると予想でき、研究費に余裕が必要である。 26年度に行う全長型変異体Fbg試料の調製において、バキュロウイルス-昆虫細胞(Mimic SF9細胞)、大量培養のための試薬類、また精製のためのモノクローナル抗体などの購入を行う。
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