2012 Fiscal Year Research-status Report
クリック反応を用いたジョイント‐ロッド型ゲルの合成とフレキシブルナノ空間の応用
Project/Area Number |
24550261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
永 直文 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40314538)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高分子合成 |
Research Abstract |
有機溶媒中で架橋点となる多官能性分子と架橋点を繋ぐスペーサー分子との遷移金属錯体を用いた付加反応により、均質な網目構造を有する有機‐無機ハイブリッドゲルの合成と構造制御を検討してきた。本研究では、このゲルの合成法の汎用性の拡大を目指した簡便な合成法の開発、および同ゲルの高機能化を目的として、クリック反応を用いたジョイント‐ロッド型ゲルの合成と網目サイズの制御されたゲル中のフレキシブルナノ空間の応用を検討する。具体的には、クリック反応の一つである、ラジカルで反応が進行するチオール‐エン反応を用いて、種々の溶媒中でジョイント‐ロッド型ゲルを合成し、網目構造解析、ゲルの力学的特性解析を行う。この方法では、触媒を用いずに紫外線を照射するだけでゲルを合成することも可能である。また、触媒を用いないことから、様々な溶媒の使用が可能になり、チオール‐エン反応の反応部位である、チオール基、ビニル基を有する分子であれば、多様な構造のジョイント、ロッド分子を用いることが可能になる。また、同ゲルの網目構造は共有結合で形成されるいわゆる化学ゲルであるため、一般的な物理ゲルに比べて、力学的強度に優れることが期待される。ついで、同ゲルの網目構造により形成されるフレキシブルナノ空間に機能性低分子化合物を内包したゲル、高分子鎖が貫通した相互侵入網目ゲルを合成し、ゲル内の低分子、高分子化合物に由来する、光学的、電気化学的等の特性解析や反応性の解析を検討する。さらには、合成したゲルの光学的、電気化学的デバイスへの応用についても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って、平成24年度はクリック反応を用いた、ジョイント‐ロッド型ゲルの合成を検討した。具体的には、ジョイント分子に多官能(3~6官能)チオール化合物を、ロッド分子にジオレフィン、ジアクリレート化合物を用い、少量の光ラジカル開始剤の存在下でUV照射により反応を行なった。溶媒には、極性、溶解度パラメーター、沸点、粘性等の物理的ファクターを基準に種々のものを検討した。構成要素の組み合わせやジョイント、ロッド分子濃度について種々検討し、均質なゲルの合成条件を確立した。また、汎用溶媒以外にも、イオン液体、低分子液晶の機能性溶媒についても検討した。合成したゲルについて、走査型顕微光散乱によるゲルの網目サイズ、網目サイズ分布の側定を行った。ジョイント、ロッド分子の反応率については、赤外吸収スペクトル(IR)を用いて解析した。以上、ゲルの合成に関しては、ほぼ計画を達成できた。 合成したジョイント‐ロッドゲルについて、圧縮試験を用い、ヤング率、破断点、破断強度について力学的特性を評価した。これらの結果から、ゲルの構成要素(ジョイント分子,ロッド分子の構造、濃度、溶媒)、網目構造との相関について検討した。また、液晶を溶媒とするゲルの熱的性質については、示差走査熱量計(DSC)を用いて、転移温度の測定を行なった。検討事項については計画通りであるが、ゲルの構成要素と力学特性の関係については、明確な相関がみられず、今後のより詳細な考察が必要であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に検討したジョイント‐ロッド型ゲルについて、種々の低分子化合物の共存下で同様の反応を行い、網目構造で形成されるフレキシブルナノ空間に低分子化合物を内包したゲルを合成する。内包する低分子化合物としては、ナノ空間内での挙動を間接的に観察可能なもの、具体的には、ピレン等のエキシマー発光を示す蛍光物質、フェロセン等の酸化還元物質、アゾベンゼン等の光異性化物質、リチウム塩等の金属イオンを計画している。これらの低分子化合物が内包されたゲルについて、走査型顕微光散乱によりナノ空間サイズ、サイズ分布に及ぼす影響について定量的に調査する。また、固体NMR装置を用いて、ナノ空間および内包された低分子の化学的構造、分子運動性について直接的な構造解析を行う。さらには、内包した物質が光学的特性を有する場合は、IR、蛍光スペクトルを用いた解析を行う。光異性化物質を含有するゲルについては、フレキシブルナノ空間内での異性化を行い、その異性化速度について、ナノ空間のサイズや空間を形成するジョイント,ロッド分子の分子構造に由来する柔軟性(フレキシビィティ)、および溶媒との相互作用の影響について検討する。また、デバイスへの応用を目指した、ゲルの電気化学特性について基礎的な検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ジョイント分子、ロッド分子、内包用機能性分子、相互侵入網目ゲルのための機能性高分子、不活性ガス、種々の反応溶媒等の薬品・原料と、ジョイント‐ロッドゲルの合成の際に用いる反応容器、ジョイント‐ロッドゲルの素子材料の購入に使用する。 本課題で検討するジョイント‐ロッドゲルの網目構造解析に使用する走査型顕微光散乱装置について、本検討のゲルに適応した波長のレーザーが必要になっており、レーザーび購入に使用する。また、電解質特性を有するゲルについは、電気化学的解析のためのセル、測定冶具の購入を予定している。
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