2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線リビンググラフト重合によるブロックグラフト鎖の合成と燃料電池膜への応用
Project/Area Number |
24550263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
長谷川 伸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (60354940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 康成 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, グループリーダー (30354939)
澤田 真一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (70414571)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線グラフト重合 / リビンググラフト重合 |
Research Abstract |
高分子基材の固相内に原子移動ラジカル重合(ATRP)の開始剤を均一に導入するため、基材として、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合(ETFE)膜を用い、ATRPの開始剤であるクロロメチルスチレン(CMS)を放射線グラフト重合で導入した。モノマーの希釈溶媒にジオキサンを用いることで、スチレンとCMSの共グラフト率60%の試料について、元素分析の結果によりグラフト鎖中のCMSの比率が1%であるにも関わらず、膜厚方向に塩素原子が均一に導入できることをSEM-EDSにより確認した。ETFEへCMSを導入した試料を用い、スチレンスルホン酸エチルエステル(ETSS)のATRPを行った。ATRPの開始剤である臭化銅(CuBr)と、配位子であるN, N, N', N'', N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)のモノマー濃度をそれぞれ0.04, 0.08 Mにしたところ、反応温度50℃にも関わらず、リビンググラフト重合は進行し、反応時間7時間においてグラフト率116%に達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において、24年度は、『ATRP 開始剤となるハロゲン含有モノマーを高分子膜内に均一に導入する放射線グラフト重合条件を検討する。更に、開始剤を起点としたリビンググラフト重合で合成したグラフト鎖を単離・同定することで、「上記グラフト重合のリビング性を実証」する。』とした。ハロゲン含有モノマーを高分子膜内に均一に導入する放射線グラフト重合条件及び、開始剤を起点としたリビンググラフト重合の進行までは確認でき、且つ、固相内でのリビンググラフト重合が50℃という低温で進行することを新たに見出した。しかしながら、グラフト鎖を単離・同定までは至っていないため、リビング性を実証できてはいない。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子基材膜の開始剤を利用したATRP により導入した種々のグラフト鎖について、その化学的安定性を考慮することで、グラフト鎖の分解無しに高分子基材膜から脱離するための温度、圧力、浸漬溶媒、浸漬時間などの条件を最適化する。ATRP の反応条件を変えてグラフト鎖を作製後、単離・精製したグラフト鎖の化学構造をNMR で、分子量、分子量分布をGPC で分析することで、高分子固相内でのグラフト重合のリビング重合性及び固相リビンググラフト重合機構の特異性の解明を図る。また、高分子膜固相中へのリビンググラフト重合の最適条件を利用して、燃料電池に適したナノレベルのイオンチャンル構造ができたブロックグラフト鎖からなる高分子電解質膜を合成する。また、6-Bromo-1-hexene など、単独重合性を持たないモノマーを放射線で導入することで、高分子基材膜内に、少量の開始剤を均一に導入する。高分子基材に共有結合した開始剤から、グラフト重合の進行が確認されているイオン導電性モノマー及び疎水性モノマーの種類や導入順序を変えてブロックグラフト重合することで、多様な組成を有する直鎖状のブロックグラフト鎖を合成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、グラフト重合用の試薬であるスルホニルフッ素モノマー及びスチレンスルホン酸誘導体、合成用試薬、グラフト重合用ガラス容器である照射用ガラス管等を購入する予定である。
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