2013 Fiscal Year Research-status Report
狭ギャップ化合物半導体の基礎電子物性とスピン物性の探求
Project/Area Number |
24560034
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
眞砂 卓史 福岡大学, 理学部, 准教授 (50358058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴崎 一郎 公益財団法人野口研究所, 顧問 (10557250)
石田 修一 山口東京理科大学, 工学部, 嘱託教授 (70127182)
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Keywords | InSb / InAsSb / 分子線エピタキシー / 量子井戸 / バンドダイアグラム / ホールセンサ / スピン軌道相互作用 / スピンポンピング |
Research Abstract |
InSb量子井戸とInAsSb量子井戸について、バンド計算を用いた解析をさらに進めた。バンド計算から得られた井戸構造を用いて、4 K、77 K、300 Kの各温度におけるキャリア密度の井戸幅依存性を見積もったとところ、InAsSb量子井戸に関しては、キャリア密度の絶対値は少し小さめであるが、実験で得られた井戸幅依存性をよく再現し、低温においても多くのキャリアが十分存在していることを確認できた。InSb量子井戸に関しては、室温においてはInAsSb量子井戸と同様、絶対値は少し小さめであるが、実験で得られた井戸幅依存性をよく再現した。しかし、77Kでは実験では比較的多くのキャリアが残っているものの、バンド計算ではかなり少なく見積もられた。4 Kにおいては、ほぼキャリアが存在しないという計算結果が得られ、これは実験においてキャリア密度測定不能であることに一致する。これらの実験とバンド計算の比較から、極低温以外ではバックグラウンドに1x10^11/cm2程度ののキャリアが存在すると考えると、実験結果を非常に合理的に解釈可能である。このバックグラウンドキャリアの起源としては、バリア層とGaAs基板界面の欠陥などから供給されていると考えられる。 スピン注入技術に関しては、スピンポンピングと非局所測定を組み合わせたスピン注入の実験を引き続き行った。しかし、スピン注入素子の最適化が進んでおらず、まだ確定的な結果が得られていない。また、スピン流の伝搬に関して、スピン波の励起・検出を行った。時間領域および周波数領域におけるスピン波伝搬について測定し、両者の結果がコンシステントであることを確認した。また、スピン波の減衰長を見積もったところ、パーマロイでは約10 um程度であることが分かった。スピン波を用いたスピン注入についても検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バンド計算の解析の進展から、バンド構造のキャリア密度への影響まで明らかになったが、キャリア密度を制御して電子物性を測定するゲート電極付き試料作製の最適化がまだ完了していない。リークがなく大きな電場の印可可能なゲート絶縁膜の作製条件、および低温においてもオーミック電極が実現する電極作製などまだ解決すべき点が残っている。 また、スピン注入試料においても、今年度は試料作製における歩留まりが悪く、注入したスピンシグナルのばらつきが大きかった。このため、昨年度以上の結果が得られる試料を作製することができず、スピンポンピング実験における信頼できるデータは取得できていない。 このように試料作製の点で、予定より遅延が生じているが、次年度は、新たな微細加工装置および薄膜作製装置が導入されるため、試料作製効率の大幅な向上が見込まれる。このため、試料作製条件の最適化を早急に進め、予定している物性測定まで進めることが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにInSb量子井戸とInAsSb量子井戸の特性の違いがバンドダイアグラムに大きく起因し、これがキャリア密度に大きな影響を与えていることが分かってきた。次年度はキャリア密度の影響をさらに調べるため、ゲート制御試料の電子物性を詳しく調べる予定である。これまでゲート電極の作製によってのみにおいても、移動度の向上がみられるなど予備的結果が得られている。しかしながら、再現性も含めて物理的な特性変化の要因を検討し、高移動度実現のための指針を得る。そして、ゲートによるスピン軌道相互作用の制御について評価につなげる。また、ホール素子へのパッケージングに関連して、微弱磁場検出の感度評価を行う予定である。 スピン注入に関しては、金属を用いたスピンポンピング・非局所測定について、引き続き試料の最適化を進め、スピン注入・検出技術を確実なものとし、InSb系へのスピンポンピングに適用する。また、スピン波の性質について、非相反性や伝搬媒体の層厚依存性などの基礎データをまとめ、スピン波を利用した半導体のスピン物性の相互作用の可能性の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ホール素子の弱磁場感度評価測定用冶具であるフェライトコアを購入する予定であったが、設計の遅延および予算不足により、次年度に改めて発注を行う予定である。 フェライトコアを購入予定
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