2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
鍋島 隆 大分大学, 工学部, 教授 (00117201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 輝被 大分大学, 工学部, 准教授 (10187213)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒステリシスPWM制御 / フィードフォワード制御 / 双方向電力制御 |
Research Abstract |
本研究は,バッテリーを搭載する車載電子機器用電源の入力及び負荷急変に対する過渡特性改善と,双方向電力変換器の高性能化を目的としており,当該年度は車載用スイッチング電源の制御方式について研究を行った。 1.ヒステリシス制御及び複合制御に関して: ヒステリシスPWM制御を用いたスイッチング電源は基本的に安定で,瞬時応答可能な制御方式の1つであるが,この方式は本来自励動作であるため,ある決められた一定周波数で動作させることは難しい。このスイッチング周波数を固定するためにPLL回路を用いた手法などが提案されているが,回路方式が複雑でコストの増加を招く問題もある。本研究ではOR回路のみを用いて外部クロックと同期する簡単な方式を提案し,スイッチング周波数を固定化を図った。これにより低コストでヒステリシス制御の利点を有する固定周波数動作のスイッチング電源が実現され,その有用性も実験により確認された。なお,この方式は入力電圧からも容量結合で容易にフィードフォワード信号を注入できるため,急峻な入力電圧の変動に対しても良好な過渡特性をもつことが明らかにされた。 2.双方向電力制御に関して: 低燃費化を実現する1つの手法として,発電機をブレーキ動作に活用するエネルギー回生法が実用化されつつあり,この場合,バッテリーと電源系統との間に双方向の電力変換器が必要となる。本研究ではシームレスな双方向電力変換を行うため,第1段階として通常の同期整流方式コンバータを用いて電力の流れが切り替わる際に生じる過渡的な突入電流の要因を実験により明らかにした。この突入電流を抑制するためには,動作条件に応じて時比率を一時的に外部から制御する必要があり,今年度はディジタル制御を用いて効果的な対策を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における当該年度の研究計画は,(1)固定周波数ヒステリシスPWM制御回路方式の開発,(2)フィードフォワード制御を導入した複合制御法の確立,(3)HブリッジDC-DCコンバータの双方向電力制御,である。このうち, (1)については簡単なOR回路を用いた回路で部品点数の少ない制御方式が開発できたため,その実用性と低コスト化も含めて当初の目的を達成できた。 (2)については,PWM変換回路のCR積分回路に入力電圧からCR直列回路を通して容易にフィードフォワード信号を注入できるため,極めて少ない部品点数で複合制御が行えることが確認された。 (3)については,今年度は通常のコンバータを用いて電力の流れが切り替わる際の問題点とその原因を究明し,問題点を解決する手段を確認するため,ディジタル制御で実験的に解明を試みた。なお,当初の計画であったHブリッジDC-DCコンバータの双方向電力制御については,その有用性を再度検討する必要もあり,この点は今後の課題と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究計画はほぼ予定どおりに進んでおり,基本的な問題についてもおよそ明らかにされている。今後はこれまで提案された手法の実用化とその拡張性,および残された課題についての検討を行う。具体的には以下のとおりである。 (1)固定周波数ヒステリシスPWM制御回路方式の高周波化:主要な回路素子であるL, Cの小形化にはスイッチング周波数の高周波化が必要となる。現時点ではまだ十分な高周波化は実現できていないため,今後は更なる高周波化を図るための工夫が必要となる。 (2)フィードフォワード制御を導入した複合制御法確立:フィードフォワード制御はフィードバック制御と異なり一方向の制御となるため,適切な設計を行わないと効果的な特性改善は図れない。そのためには制御特性の解析が鍵となるので,最適な設計を目的とした理論的な設計法の確立を目指す。 (3)双方向電力制御:この問題については電力変換回路の制御特性が大きく係わってくる。特に一時的なエネルギー蓄積用素子として注目されている電気2重層コンデンサは,バッテリーと電解コンデンサの中間に位置する特性をもっているが耐電圧が低いため,用途によっては大きな電圧変換比を有するコンバータが必要となる。今後はこの点も視野に入れた双方向電力制御についての検討が必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度,当該研究に必要不可欠な実験装置が導入されたため,次年度は新たに高額な設備の導入は必要としない。なお,今後の研究の推進方策の(3)で,当初は研究内容に考慮されていなかった電気2重層コンデンサは次年度から研究内容に含まれることになるが,この素子は当該研究にも協力頂いている日本ケミコン社から無償で供与されることになっているため,次年度は半導体およびその他の電子部品として15万円程度の物品費を予定している。 また,今年度の研究成果の1つがヨーロッパのパワーエレクトロニクス会議としては最大のEPE2013で発表されることになったため,この海外出張旅費と国内学会等の参加旅費も含め65万円程度を旅費として充てる。
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