2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560339
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
鍋島 隆 大分大学, 工学部, 教授 (00117201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 輝被 大分大学, 工学部, 准教授 (10187213)
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Keywords | Hブリッジ形コンバータ / ディジタル制御 / エネルギー回生 |
Research Abstract |
本研究は,バッテリーを搭載する車載電子機器用電源の入力及び負荷急変に対する過渡特性改善と,双方向電力変換器の高性能化を目的としており,当該年度は大容量の電気2重層キャパシタに回生された車の減速時のエネルギーを有効に取り出し,車載電子機器に供給するためのスイッチング電源について研究を行った。 1.電力変換回路に関して: ここでは一般的に用いられている降圧形コンバータとは異なり,Hブリッジ形コンバータを変換回路として採用した。本回路はそれぞれ1個のLとCに加え,スイッチが2組必要となるが,制御の方法により電圧変換が降圧から昇圧まで可能となる。また入力部と出力部が対称となるため双方向の電力変換も容易となる利点を有している。特に入力となる電気2重層キャパシタの電圧は放電と共に大きく降下するので,蓄えられた回生エネルギーを有効利用するためには,負荷との間に用いられるコンバータの電圧変換も降圧から昇圧まで必要となる。実験と解析の結果,2組のスイッチ(降圧ブロックと昇圧ブロック)の時比率を適切に設定することにより,高い電力効率で広い入力電圧に対応できることがわかった。 2.制御法に関して: 本年度は電力効率に注目して高効率動作を検討した。また制御法のフレキシビリティを優先させるため,今回は第1段階としてヒステリシス制御に代わりディジタル制御を導入した。更に,コンバータ回路と入力電圧からのフィードフォワード信号を含めた定常解析を行い,定量的に得られた関係式をルールとして,2組のスイッチを個別に制御する方法を試みた。その結果,出力電圧の2倍から1/2の入力電圧範囲において,シームレスかつ高効率に電圧変換が行えることが明らかにされ,減速エネルギーの90%以上が活用できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状,比較的低価格の大電流用MOSFETのスイッチング速度には限界があるため,敢えてヒステリシスPWM制御回路方式の高周波化は行わず,当該年度は,燃料消費の抑制を目的とする速度減速時に回生したエネルギーの有効利用に着目し,最近注目されている大容量の電気2重層キャパシタを用いたエネルギー回生システム用コンバータの開発を行った。 今回は電力変換器であるコンバータに双方向の電力変換が容易に行えるHブリッジ形コンバータを採用し,放電時に大きな電圧変化を伴う電気2重層キャパシタから,効率よくできるだけ多くのエネルギーを取り出す手法を損失解析と基礎実験により明らかにした。基本的にはHブリッジ形コンバータ回路の2組のスイッチをあるルールで個別に動作させることにより,入力電圧の降圧,昇圧機能を有しながら電力損失も低く抑えることが可能となる。この手法を部品点数を増やすことなくフレキシブルに実現するため,解析結果をディジタル制御に反映し,広い入力電圧範囲においてその効果を実験により確認することができた。またディジタル制御を用いることにより個別の細かい回路パラメータの調整が不要となるため,環境変換の影響を受けにくく生産効率も上がるというメリットもでてくる。 一方,効率を重視した入力電圧フィードフォワード制御は反面,負荷変動に対する応答性に制限を与える場合があるので,この点は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究計画はほぼ予定どおりに進んでおり,基本的なディジタル制御に関する問題についても,メリット,デメリット共におよそ明らかにされている。今後はこれまで提案された手法に加えて,問題点を改善しつつ実用化を前提として,ディジタル制御とアナログ制御の棲み分け,および併用の問題について検討を行う。具体的には以下のとおりである。 (1) 2重フィードフォワード制御の導入:今回着目したHブリッジ形コンバータ回路は2組の半導体スイッチを有しており,入力からのフィードフォワード制御は主として高効率を実現するための手段とした。一方,この制御では入力電圧が低下した場合,負荷変動に対する過渡応答,特に,軽負荷から重負荷に急変した場合に大きな制限を与えるという問題が残されている。これを電源システムの安定性を損なうことなく改善するには,負荷電流からのフィードフォワード制御が有効となるので,その有用性について検討を行う。 (2) ディジタル制御とアナログ制御:複雑な制御が要求される場合,制御ルールのフレキシビリティを考えるとディジタル制御の方優れているが,速応性を要求される処理が必要な制御においてはアナログ制御が有利である。この2つの制御法について,目的に応じたディジタル・アナログ複合制御を取り入れる手法について実験的な検討を行い,その実用性について検討を行う。
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