2013 Fiscal Year Research-status Report
腐食ひび割れによる鉄筋コンクリート部材中の圧縮耐荷機構の崩壊に関する研究
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24560593
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Research Institution | Railway Technical Research Institute |
Principal Investigator |
大屋戸 理明 公益財団法人鉄道総合技術研究所, その他部局等, 研究員 (10425910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金久保 利之 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (90261784)
八十島 章 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 助教 (80437574)
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Keywords | 腐食 / コンクリート構造 / 強度 |
Research Abstract |
本研究は、鉄筋の腐食によって圧縮耐荷機構が崩壊する現象を解明し、評価することを目的とする。平成25年度は、前年度実施した長期暴露RC梁を用いた載荷試験の3次元画像解析を行い、圧縮耐荷機構の崩壊過程を定量化した。また、電食によって圧縮鉄筋の断面欠損とコンクリート内部の腐食ひび割れを生じさせたRC梁を用いた載荷試験を行い、腐食に起因しない材料劣化の影響を排除した状態で、純粋に腐食により変形性能の低下が生じることを把握した。さらに、切削鉄筋単体の圧縮座屈試験およびRC単柱の中心圧縮試験を行い、鉄筋の腐食の影響のみによる圧縮耐荷機構への影響を把握した。 まず、長期暴露RC梁を用いた載荷試験について3次元画像解析を行った結果、観測値の取扱いに注意が必要なものの、同時多点の任意方向の計測が可能で、挙動の大まかな傾向を把握するのに有用であることが確認できた。また、今回用いた長期暴露RC梁は、圧縮側コンクリートが横方向に膨み出しており、これがコンクリートの圧縮耐荷機構の崩壊につながった可能性があることが推察された。 また、電食によって圧縮鉄筋に断面欠損を生じさせ、コンクリート内部に腐食ひび割れを生じさせたRC梁を用いた載荷試験を行った結果、腐食に起因しない材料劣化の影響を排除した状態で、部材の耐力低下とともに靭性の低下も生じ、脆性的に破壊する挙動を観察することができた。また、このRC梁について断面解析を行ったところ、コンクリートの終局歪を制御することで部材の耐荷特性の変化を表現できることが確認できた。 さらに、鉄筋単体の圧縮座屈実験およびRC部材の中心圧縮実験を行った結果、弾性座屈範囲内で切削位置において降伏が先行しなければ座屈モードに変化は生じないこと、RC部材の中心圧縮時の最大荷重は切削率が大きくなると減少すること等を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成24年度、長期暴露RC梁を用いた載荷試験を行い、当初の計画どおり、圧縮鉄筋が腐食したRC部材の圧縮耐荷機構の崩壊過程を把握している。平成25年度は、この試験画像を用いて3次元変位分析を行った。圧縮側コンクリートの崩壊過程を数値化することができ、前年度に達成した内容の深度化を図ることができた。 研究計画の2年目である平成25年度は、腐食RC部材を模擬した試験体を作成し、仮定した圧縮破壊モデルの検証を行って、長期暴露RC梁を用いた載荷試験の結果と照合を行うとしている。平成24年度に用いた長期暴露RC梁は、コンクリートの材料劣化が著しく、必ずしも腐食だけが耐荷性能に影響を与えたとは言えない点に課題があった。そこで、電食により鉄筋腐食だけをモデル化した試験体を用いた載荷試験を行った結果、腐食と腐食ひび割れによる影響だけを確認することができた。 また、研究計画では、平成25年度以降、RC単柱試験体を用いた中心圧縮試験を行う研究計画としており、その第一段階として、まず腐食によって断面欠損が生じた場合の鉄筋単体の座屈挙動を一軸圧縮試験により確認し、ついでかぶりコンクリートのない状態のRC単柱試験体を作成し同様に一軸圧縮試験を行った。この結果、腐食した鉄筋の座屈挙動とRC単柱の中心圧縮性状について、座屈モードや座屈荷重ならびに軟化勾配に関する基礎的な知見を得ることができた。 以上のように、平成25年度は、長期暴露RC梁の3次元変位分析、電食RC梁を用いた載荷試験、鉄筋単体の座屈試験ならびにRC単柱の中心圧縮試験を行った。前年度実施した長期暴露RC梁の座屈挙動の定量化を実現し、当初の計画どおり、腐食RC部材を模擬した試験体により圧縮破壊モデルの検証を実施できたので、総じて概ね順調に研究が進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25・26年度の研究計画は、腐食RC部材を模擬した試験体を作成し、仮定した圧縮破壊モデルの検証を行って、長期暴露RC梁を用いた載荷試験の結果と照合を行う予定としている。平成25年度は、まず、実部材の挙動把握を起点としたアプローチとして、平成24年度に行った長期暴露RC梁を用いた載荷試験の結果から腐食に起因しない材料劣化の影響を排除することを目的として、電食試験体を用いた載荷試験を行い、次いで要素モデルからのアプローチとして、断面が欠損した鉄筋単体の座屈挙動と、RC単柱の中心圧縮性状を確認する試験を行った。特にRC単柱試験体では、かぶりコンクリートが損傷したときに荷重低下と変形の増大を生じ、鉄筋の座屈による荷重低下との区別が困難となるため、かぶりのない状態にて一軸圧縮性状を確認している。 平成26年度は、研究計画の最終年度として、平成25年度までに行った実部材の挙動把握を起点としたアプローチと要素モデルの構築を起点としたアプローチの両者をつなぐ実験事実を収集し、腐食したRC部材の圧縮耐荷機構のモデル化を行う。腐食RC部材を模擬した試験体による研究の第2段階として、かぶりコンクリートの損傷との複合的な破壊性状に関する検討を加えるため、かぶりがある状態のRC単柱試験体を作成し、一軸圧縮試験を行う。さらに、RC梁内部の腐食した圧縮鉄筋の座屈挙動の解明を目標とし、RC梁部材の曲げ実験を実施して座屈挙動を観察する。 以上の3年間の成果により、腐食に起因しない材料劣化の影響をも含む実際の腐食状態から、電食により腐食による影響のみを考慮した状態や、鉄筋の欠損とコンクリートの損傷をそれぞれ考慮した状態に至るまでのすべての要因について、実験事実が揃うことになる。これらの結果から、コンクリートの圧縮耐荷機構のモデル化を行い、腐食したRC部材の圧縮耐荷機構の崩壊現象を解明し評価する。
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Research Products
(4 results)